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前駆細胞
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T細胞の運命を制御する分子機構を解明 −白血病発症メカニズムの解明に期待− ■要旨 理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センター 融合領域リーダー育成(YCI)プログラム[1]の伊川友活上級研究員、免疫器官形成研究グループの古関明彦グループディレクター、京都大学再生医科学研究所再生免疫学分野の河本宏教授らの共同研究チーム(※)は、マウスを用いて免疫細胞の1種であるT細胞が作られるときの運命維持に「ポリコーム複合体[2]」が重要であることを明らかにしました。 T細胞は他の免疫細胞と同様、血液のもととなる造血幹細胞[3]から作られます。造血幹細胞は骨髄中でT細胞へある程度運命付けられた...
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iPS細胞からみえる統合失調症の特徴 −神経細胞・グリア細胞の分化段階の異常を患者由来細胞で発見− ■要旨 理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター分子精神科学研究チームの豊島学研究員、吉川武男チームリーダーらの国際共同研究グループは、iPS細胞を用いて、統合失調症患者の神経幹細胞と神経前駆細胞の細胞塊(神経幹/前駆細胞)では、神経細胞やグリア細胞[1]への分化に異常がみられ、この異常には特定のマイクロRNA(miRNA)[2]が関わっていること発見しました。 統合失調症は生涯罹患率が人口の約1%と高く、国内の総患者数は71万3,000人と推定されています。病気の予防と治療には、病気の原因...
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東大など、複数のさい帯血ユニットを利用した新規移植法の開発へと結びつく成果を報告
複数のさい帯血ユニットを利用する新規移植法の開発へ 1.発表者: 大津 真(東京大学医科学研究所 幹細胞プロセシング分野/ステムセルバンク 准教授) 2.発表のポイント: ◆ひとつのユニットだけでは造血細胞数が不足する「さい帯血移植」の問題点を、複数ユニットの組み合わせ移植で克服し得る事を実験的に証明し、新たな移植法開発の可能性を示した。 ◆遺伝背景の異なる造血幹/前駆細胞であっても、組み合わせの移植により協調して早期の造血回復に寄与することから、移植の補助製剤としての使用が可能となることを初めて実証した。 ◆本成果を元に新規移植法が開発され、移植後早期の合併症リスクの軽...
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東大、感染から体を守るためには骨を作る細胞が重要など研究成果を発表
骨が免疫力を高める 〜感染から体を守るためには骨を作る細胞が重要〜 1.発表者: 寺島 明日香(研究当時:東京大学大学院医学系研究科 病因・病理学専攻 免疫学分野 研究員現所属:東京大学大学院医学系研究科 骨免疫学寄付講座 特任助教) 岡本 一男(研究当時:東京大学大学院医学系研究科 病因・病理学専攻 免疫学分野 助教 現所属:東京大学大学院医学系研究科 骨免疫学寄付講座 特任准教授) 高柳 広(東京大学大学院医学系研究科 病因・病理学専攻 免疫学分野 教授) 2.発表のポイント: ◆炎症によって骨髄内の骨芽細胞(注1)が障害を受けることが、敗血症後に生じる免疫細胞数減少...
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止血役にはストレスが必要 −巨核球細胞での小胞体ストレスが血小板を生む− <要旨> 理化学研究所(理研)小林脂質生物学研究室の森島信裕専任研究員(研究当時)と中西慶子協力研究員(研究当時)の研究チームは、血小板[1]の形成には、巨核球[2]細胞内の小胞体[3]が「小胞体ストレス[4]」状態となることが必要であることを発見しました。小胞体ストレスとは、立体構造がうまく形成されなかったり、構造が壊れたりしたタンパク質が小胞体内に蓄積した状態のことです。 血小板は、傷口の止血にとって欠かせない血液成分です。血小板は骨髄中に存在する前駆細胞の巨核球細胞がばらばらになり、核を含まない...
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神経細胞が特定のタイプにのみ分化するメカニズムを解明 脳には多くのタイプの神経細胞が存在し、それぞれが異なる役割を分担して、機能しています。しかし、その分化(注1)のメカニズムの詳細はわかっていませんでした。慶應義塾大学医学部解剖学教室の大石康二講師(非常勤)、仲嶋一範教授らの研究チームは、大脳皮質の神経細胞が、特定のタイプの神経細胞のみに分化するメカニズムを明らかにしました。 神経系における情報処理の司令塔である大脳皮質(注2)では、情報の入力、処理、出力が行われます。これらは、大脳皮質に存在するさまざまなタイプの神経細胞にその役割が担われています。今回の研究では、大脳...
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難治性の白血病が発症するメカニズムの解明に成功 −新たな創薬に期待− <概要> 染色体転座という遺伝子異常によってMLL遺伝子が異なる遺伝子と融合するとMLLキメラと呼ばれる異常タンパク質が生じ、このタンパク質が働くと難治性の白血病を引き起こす。このタイプの白血病は乳児の急性リンパ性白血病の80%を占め、強い抗がん剤を用いた治療や骨髄移植をおこなっても再発しやすい。我々はMLLキメラタンパク質がSL1と呼ばれるタンパク質複合体を利用して白血病発症へと導いていることを見出した。 1.背景 様々な要因で染色体が傷つけられると、細胞はその損傷部位を修理しようと試みる。しかし、その損傷部位の修復時...
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東北大、Muse細胞を用いて脳梗塞動物モデルの失われた神経機能の回復に成功
Muse細胞がもたらす医療革新 ‐動物モデルにおいて脳梗塞で失われた機能の回復に成功‐ 【研究概要】 東北大学大学院医学系研究科の出澤真理(でざわまり)教授と冨永悌二(とみながていじ)教授らのグループは、ヒト皮膚由来多能性幹細胞(Muse細胞)を用いて脳梗塞動物モデルの失われた神経機能の回復に成功しました。Muse細胞は生体内に存在する自然の多能性幹細胞です。ヒト皮膚由来Muse細胞を脳梗塞のモデル動物(ラット)に移植したところ、梗塞部位に生着して自発的に神経に分化し、さらに大脳皮質から脊髄までの運動・知覚回路網を再構築しました。脳梗塞で失われた運動・知覚機能の回復は約3ヶ月後も維持され、腫瘍形...
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基礎生物学研究所、脳神経回路の髄鞘損傷からの再生を促す仕組みを発見
髄鞘再生に関わる分子機構の解明: 神経回路の絶縁シートが回復する仕組み 基礎生物学研究所 統合神経生物学研究部門の野田昌晴 教授の研究グループは,脳神経回路の髄鞘損傷からの再生を促す仕組みを発見しました。 神経細胞から伸びる軸索は,髄鞘(ミエリン鞘)と呼ばれる絶縁シートに覆われることで,高い信号伝達能を獲得しています。通常,この髄鞘は破損しても修復されますが,その回復を制御する仕組みはよくわかっていませんでした。今回,髄鞘を形成するオリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)という細胞を選択的に傷害するクプリゾンという物質をマウスに与えた後に,その回復過程を調べたところ,脱髄によっ...
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JST、脳神経細胞の特殊な移動様式を制御する仕組みの一端を解明
脳神経細胞の特殊な移動様式を制御する仕組みの一端を解明 <ポイント> ・ほ乳類の大脳皮質が作られる際に神経細胞は、「ロコモーション様式」と呼ばれる特徴的な移動様式で特定の位置まで移動し、大脳皮質の6層構造を形成する。 ・神経細胞の増殖を停止させる分子Cdk5、p27と、脳疾患の原因遺伝子Dcxとが「ロコモーション様式の移動」を制御していることが分かった。 ・神経細胞の「増殖しない」という特徴を決定づける分子が、増殖停止後に新たな機能を獲得し、これが脳の高度な組織化過程に重要であることが示された。 JST戦略的創造研究推進事業において、JSTの川内 健史 さきがけ研究者(兼・慶應義塾大学 医学...
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白血病細胞の異常を修復するRNAの発見 <ポイント> ・たんぱく質に翻訳されないRNA(非コードRNA)の新たな作用を発見 ・非コードRNAにより、急性白血病の原因である細胞の分化異常を回復させることに成功 ・細胞の分化異常が発症の引き金となる白血病の新しい治療法として期待 JST課題達成型基礎研究の一環として、東海大学医学部の幸谷愛(コウタニアイ)准教授は、奥山一生研究員とともに、急性白血病細胞の分化異常を修復するRNAを発見し、白血病細胞を正常化させる可能性を示しました。 白血病は、未熟な白血球が異常増殖してしまう「血液のがん」です。発症が急激な急性白血病では、遺伝子の働きを調節している転...
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アステラス製薬と京大、ヒトiPS/ES細胞からネフロン前駆細胞を効率よく作製する方法を発見
アステラス製薬と京都大学iPS細胞研究所: ヒトiPS/ES細胞からネフロン前駆細胞を効率よく作製する方法を発見 〜国際幹細胞学会第11回年次総会で発表〜 アステラス製薬株式会社(本社:東京、社長:畑中 好彦、以下「アステラス製薬」)と京都大学iPS細胞研究所(所在地:京都、所長:山中 伸弥、英名:Center for iPS Cell Research and Application(CiRA))は、腎臓の再生医療に関する両者の共同研究において、ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)およびヒト胚性幹細胞(ES細胞)から腎臓を再生する過程の一つの段階を効率よく進める方法を発見しました。このたび、この結果を国際幹細胞学会(英名:International Society for Stem Cell...
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東大と明大など、すい臓のないブタに健常ブタ由来のすい臓を再生することに成功
すい臓のないブタに健常ブタ由来のすい臓を再生することに成功 <ポイント> >臓器を欠損している動物に異なる動物由来の臓器を作らせることは、小型実験動物では成功しているが、大型動物ではできるのかがこれまでの課題。 >体細胞クローニング技術を用いて、すい臓欠損クローンブタを作製、胚盤胞補完技術を用いて、正常ブタ由来のすい臓を持つキメラブタの作製に成功。 >将来の再生医療にも大きく期待。 JST 課題達成型基礎研究の一環として、東京大学 医科学研究所の中内 啓光 教授とJST 戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究「中内幹細胞制御プロジェクト」の松成 ひとみ 研究員、同プロジェクトチームの...
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肝臓の再生を促す新たなメカニズムを発見 ― 重篤な肝障害を自らの力で修復する肝前駆細胞の活性化について ― 1.発表者: 宮島 篤(東京大学 分子細胞生物学研究所 教授) 伊藤 暢(東京大学 分子細胞生物学研究所 助教) 高瀬 比菜子(日本学術振興会 特別研究員PD[現所属:スタンフォード大学医学部 博士研究員]) 2.発表のポイント: ◆どのような成果を出したのか 障害を受けた肝臓ではFGF7というタンパク質が発現して、これが肝細胞を生み出す元となる肝前駆細胞を活性化し増幅させることで再生を担うことを、初めて明らかにした。 ◆新規性(何が新しいのか) これまで不明であった...
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JSTなど、正常な成体マウスの大脳皮質で神経細胞を新生させることに成功
正常な成体マウスの大脳皮質で、神経細胞を新生させることに成功 <ポイント> >正常な状態の成体の大脳皮質では神経細胞が新たに生まれてこないと考えられていた。 >薬の投与によって、正常な大脳皮質でも神経細胞を増やすことに成功。 >大脳皮質の保護・再生、うつ病などの精神疾患の新しい予防・治療法の開発に期待。 JST課題達成型基礎研究の一環として、藤田保健衛生大学総合医科学研究所の宮川剛教授と大平耕司講師らは、抗うつ薬の投与によって正常な成体マウスの大脳皮質(注1)の神経細胞を増やすことに成功しました。 これまでに本研究グループは、成体大脳皮質には神経細胞を産生できる神経前駆細胞...
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理化学研究所、「第二の脳」と呼ばれる腸管神経系が形成される機構をマウスで解明
「第二の脳」と呼ばれる腸管神経系が形成される機構をマウスで解明 −腸管神経系の発生と病気の概念を覆す、腸管神経前駆細胞の近道移動を発見− ◇ポイント◇ ・腸管神経系の発生過程を、蛍光タンパク質を利用したライブセルイメージングで解析 ・近道移動する腸管神経前駆細胞が大腸の腸管神経系の大部分を形成 ・腸管神経系を欠損するヒルシュスプルング病の発症メカニズム解明に新たな知見 理化学研究所(野依良治理事長)は、大腸の腸管神経系(※1)のもととなる細胞集団を同定し、この集団がどのように小腸から大腸へ移動して腸管神経系を形成するかを突き止めました。先天的に腸管神経系が形成されないヒル...