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理研、T細胞の運命を制御する分子機構を解明

2016-12-07

T細胞の運命を制御する分子機構を解明
白血病発症メカニズムの解明に期待−


■要旨
 理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センター 融合領域リーダー育成(YCI)プログラム[1]の伊川友活上級研究員、免疫器官形成研究グループの古関明彦グループディレクター、京都大学再生医科学研究所再生免疫学分野の河本宏教授らの共同研究チーム(※)は、マウスを用いて免疫細胞の1種であるT細胞が作られるときの運命維持に「ポリコーム複合体[2]」が重要であることを明らかにしました。

 T細胞は他の免疫細胞と同様、血液のもととなる造血幹細胞[3]から作られます。造血幹細胞は骨髄中でT細胞へある程度運命付けられた後、胸腺[4]に移動し分化・成熟します。2010年に伊川友活上級研究員らは、T細胞系列への運命決定に転写因子[5]「Bcl11b[6]」が必要であることを明らかにしましたが、運命決定された後のT前駆細胞を維持するメカニズムは分かっていませんでした。

 そこで共同研究チームは、さまざまな細胞の運命制御に関わるポリコーム複合体に注目しました。まず、T細胞特異的にポリコーム複合体遺伝子「Ring1A/B[7]」を欠損させたマウスを作製し、T細胞分化における役割を解析しました。その結果、Ring1A/B欠損マウスの胸腺ではT細胞が全く作られず、未分化な前駆細胞段階で分化が停滞しました。このRing1A/Bを欠損したT前駆細胞を調べたところ、同じリンパ球であるB細胞の特徴を示す遺伝子の発現が上昇していました。そこでB細胞への分化能を調べるために、Ring1A/Bを欠損したT前駆細胞放射線照射した免疫不全マウスに移植したところ、T細胞は全く生成されない代わりに、骨髄および脾臓[8]において抗体産生能を持つB細胞が生成されました。次に、B細胞分化に重要な遺伝子「Pax5[9]」を欠損させたところ、Ring1A/Bを欠損させてもT細胞は正常に分化し、B細胞へ運命転換しなくなりました。このことからRing1A/Bは胸腺において、主にPax5の発現を抑制することによりT細胞の運命を維持していると考えられます。

 ポリコーム複合体はこれまで、個体発生時の形態形成において重要であることは知られていましたが、今回、免疫細胞の生成・維持にも不可欠であることが示されました。ポリコーム複合体はT細胞急性リンパ性白血病[10]や急性骨髄性白血病[11]など、さまざまな白血病細胞で変異がみられるため、T細胞などの免疫細胞が作られるときのポリコーム複合体の機能をさらに解明することにより、白血病の発症機構の解明や新しい治療法の開発に繋がると期待できます。

 成果は、米国の科学雑誌『Genes & Development』オンライン版(12月2日付け)に掲載されます。

 *リリース詳細は添付の関連資料を参照




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