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理研、iPS細胞からみえる統合失調症の特徴を発見

2016-11-08

iPS細胞からみえる統合失調症の特徴
神経細胞グリア細胞の分化段階の異常を患者由来細胞で発見−


■要旨
 理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター分子精神科学研究チームの豊島学研究員、吉川武男チームリーダーらの国際共同研究グループは、iPS細胞を用いて、統合失調症患者の神経幹細胞と神経前駆細胞の細胞塊(神経幹/前駆細胞)では、神経細胞グリア細胞[1]への分化に異常がみられ、この異常には特定のマイクロRNA(miRNA)[2]が関わっていること発見しました。

 統合失調症は生涯罹患率が人口の約1%と高く、国内の総患者数は71万3,000人と推定されています。病気の予防と治療には、病気の原因(病因)の解明が必要です。しかし、統合失調症はこれだけ患者数の多い病気であるにも関わらず、その病因は十分には解明されていません。統合失調症の発症しやすさの要因の一つとして、胎生期から生後早期にかけての脳の微細な発達障害が考えられています(神経発達障害仮説[3])。しかし、これまでは神経発達初期の異常やその後の分化過程の異常を、ヒトの脳を直接使って調べることは不可能であったため、神経発達障害の具体像は分かっていませんでした。

 今回、国際共同研究グループは、分化誘導によってiPS細胞から神経幹/前駆細胞神経細胞グリア細胞を作製できることに着目しました。統合失調症患者の中でも、発症率を大きく上昇させる、22番染色体の長腕11.2領域の微細欠失を持つ22q11.2欠失症候群[4]の患者からiPS細胞を作製し、神経幹/前駆細胞から神経細胞グリア細胞への分化について解析しました。その結果、統合失調症患者由来の神経幹/前駆細胞では、健常者の場合と比べて神経細胞への分化効率が低く、アストロサイト[1](グリア細胞の一種)への分化効率が高いことが分かりました。また、分化した神経細胞では神経突起が短い、移動能が低いといった異常がみられました。これらの原因には特定のmiRNAの発現低下が関わっていることが分かりました。さらに、統合失調症の死後脳を用いた解析でも、健常者の死後脳と比べて神経細胞とアストロサイトの量比に異常がみられることが分かりました。

 本研究により、神経幹/前駆細胞から神経細胞グリア細胞への分化効率が、統合失調症の病因に関わっている可能性が示されました。今後、miRNAが標的とする遺伝子を詳細に解析することで、新たな創薬ターゲットの発見に役立つと期待できます。

 本研究は、英国の科学雑誌『Translational Psychiatry』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(11月1日付け:日本時間11月2日)に掲載されます。

 ※リリース詳細は添付の関連資料を参照



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