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富士経済、医療用医薬品の国内市場調査結果を発表
がん関連用剤、栄養補助剤、麻酔・筋弛緩剤、免疫抑制剤など
第5回 国内医療用医薬品市場 調査結果
―2019年市場予測―
抗がん剤市場は、分子標的薬など新薬の相次ぐ発売と併用処方が進み10年比73%増の1兆1,771億円
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 阿部 界)は、医療用医薬品の国内市場を2010年1月から2年かけて6回に亘り調査を行っている。第5回目の調査を2011年1月から4月にかけて行い、その結果を報告書「2011 医療用医薬品データブック No.5」にまとめた。
この報告書では、がん関連用剤、栄養補助剤、麻酔・筋弛緩剤、免疫抑制剤、体内診断薬、消毒剤といった6薬効領域の市場を分析し、今後を予測した。
<調査結果の概要>
1.主な薬効領域別市場
【薬効領域/2010年/前年比/2019年予測/10年比】
*表は添付の関連資料を参照
■がん関連用剤
がん関連用剤は、抗がん剤、CSF(コロニー刺激因子)、制吐剤、がん疼痛治療剤を対象としている。治療患者の増加を背景に、市場は拡大している。特に市場の90%近くを占める抗がん剤の伸びが市場拡大に寄与している。抗がん剤では分子標的薬(がん細胞の分子を標的にして増殖、浸潤、転移などを阻害する薬剤)をはじめとした画期的な新薬の発売が相次いだ。これら新薬の発売でがん治療のガイドラインが大きく改訂され、また、エビデンスの蓄積と共に併用処方が進み、抗がん剤は伸びた。
一方、がん患者のQOL(Quality of Life:生活の質)向上を図るため緩和医療の普及が進んでいる。現在は、がん診療連携拠点病院の殆どで緩和ケア病棟や緩和ケアチームが設置されており、がん疼痛治療や嘔吐・悪心の抑制の重要性が以前に比べて高くなっていることから、がん疼痛治療剤や制吐剤の伸びも期待される。
■栄養補助剤
栄養補助剤は、輸液製剤、経腸栄養剤、ビタミン剤を対象としている。高齢化を背景に、栄養の経口摂取が難しい栄養補助剤の処方対象となる潜在患者は増加している。在宅も含めた経腸栄養剤投与患者は増加しているが、輸液製剤やビタミン剤の投与患者は横ばいで推移している。
経腸栄養剤は医薬品カテゴリーと食品カテゴリーがあり、食品カテゴリーでは新製品の開発や発売が活発で伸びている。
しかし、輸液製剤は経腸栄養剤による投与が困難な場合と処方が限定されていることや、ビタミン剤は補助的な位置付けで処方優先度が低いことなどから目立った新製品の開発や発売の動きがなく減少している。
■麻酔・筋弛緩剤
麻酔・筋弛緩剤は麻酔用剤、筋弛緩剤を対象としている。麻酔用剤は、麻酔の実施件数が横ばいであるが、新製品の発売もなく、薬価引き下げやジェネリック医薬品の影響により実績が減少している。一方、筋弛緩剤は、疼痛にも処方されることから処方件数が増加しており、「ボトックス」(グラクソ・スミスクライン)が2009年に「2歳以上の小児脳性麻痺における下肢痙縮に伴う尖足」、2010年には「上肢痙縮、下肢痙縮」に適応拡大し実績を伸ばしているが、麻酔用剤同様、薬価引き下げやジェネリック医薬品の影響により実績が減少している。
■免疫抑制剤
免疫抑制剤は、核酸合成阻害薬、細胞増殖阻害薬、リンパ球機能阻害薬、生物学的製剤を対象としている。2009年に改正された臓器移植に関する法律が2010年に施行され、国内での15歳未満の者からの脳死下での臓器提供が可能となり、また、脳死下での臓器提供者本人の意思が不明の場合でも家族の意思により臓器提供が可能となった。これにより脳死による臓器移植件数は増加しており市場拡大の一因となっている。
難病に立ち向かう患者やその関係者等を取上げたTV番組などの影響もあり、臓器提供への認知度や理解度は向上しており、臓器提供を希望する人も増えている。
■体内診断薬
体内診断薬は、造影剤、放射性医薬品(体内診断用)、ヘリコバクター・ピロリ菌検査剤を対象としている。検査対象となる患者の増減に大きな変動が無いものの、DPC(診断群分類包括評価)導入病院の増加に伴って患者一人当たりの検査数が減少している。市場は、放射性医薬品とヘリコバクター・ピロリ菌検査剤が伸びているが、造影剤がX線造影用、MRI・超音波造影用ともに検査数の減少と薬価引き下げ、ジェネリック医薬品の影響により落ち込んでいることから縮小している。
放射性医薬品の伸びは、2010年4月の診療報酬改定でPET(Positron Emission Tomography)検査の適応範囲が早期胃がんを除く全てのがんに拡大し、検査数が増加したことが主因となっている。
造影剤市場が縮小する中、細胞外液性造影剤と肝特異性造影剤の両方の特徴を有するMRI用肝臓造影剤「EOB・プリモビスト」(バイエル薬品)が1回の投与で肝腫瘍の血流評価と肝細胞機能の評価が可能であることから実績を伸ばしている。
<注目市場>
1.抗がん剤
抗がん剤には分子標的薬や抗がんホルモン剤、代謝拮抗剤、微小管阻害剤、白金製剤、抗がん抗生物質などがある。実績は分子標的薬、抗がんホルモン剤、代謝拮抗剤の順に大きい。
分子標的薬は、新薬発売が相次いでおり、既存の分子標的薬も適応拡大申請が積極的に行われていることから、その実績は2010年に前年比25.6%増の2,372億円となった。抗がん剤市場の34.8%を占める。現状では適応範囲が限られている薬剤が多いが、有効性が高いため対象疾患においては第一選択となる薬剤が多く、薬価も非常に高いこともあり、抗がん剤市場の牽引役となっている。
代謝拮抗剤は、がん治療において処方頻度が高く、術後の処方や分子標的薬等のとの併用処方など、実績は堅調に推移している。
2.経腸栄養剤
経腸栄養剤は、医薬品カテゴリーと食品カテゴリーを対象としている。高齢化に伴い、栄養の経口摂取が難しい患者が様々な疾患で増加している。経腸栄養剤の処方対象となる患者の増加に伴い実績が拡大しているのは食品カテゴリーである。この食品カテゴリーの伸びにより、経腸栄養剤市場は拡大している。
食品カテゴリーでは味やパッケージ(容量)など様々な新製品が開発・発売されており、市場が活性化している。各メーカーによる医療機関へのアプローチが積極的に行われていることも活性化に繋がっている。また、DPC導入病院の増加に伴い薬価と関係のない食品カテゴリーに対する注目度が高まっていることも成長要因である。一方、医薬品カテゴリーでは、特定疾患向け製品は堅調であるが、薬価引き下げの影響を受けた製品や食品カテゴリーと競合する製品は苦戦している。
以上
<調査対象>
がん関連用剤(抗がん剤、CSF、制吐剤、がん疼痛治療剤)、栄養補助剤(輸液製剤、経腸栄養剤、ビタミン剤)、麻酔・筋弛緩剤(麻酔用剤、筋弛緩剤)、免疫抑制剤、体内診断薬、消毒剤
<調査方法>
富士経済専門調査員による調査対象企業及び関連企業・団体等へのヒアリング調査及び関連文献を併用
<調査期間>
2011年1月〜4月
資料タイトル:「2011 医療用医薬品データブック No.5」
体裁:A4判 351頁
価格:160,000円(税込み168,000円)
調査・編集:富士経済 東京マーケティング本部 第ニ事業部
発行所:株式会社 富士経済
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