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帝国データバンク、2016年上半期の「返済猶予後倒産」の動向調査結果を発表
特別企画:「返済猶予後倒産」の動向調査
2016年上半期の「返済猶予後倒産」、
3年ぶりの前年同期比増加
〜建設業、不動産業など内需型産業で増加目立つ〜
■はじめに
2009年12月に施行された中小企業金融円滑化法が2013年3月末に終了してから3年3カ月が経過した。円滑化法の終了後も、実質的には法施行時と同様に「金融機関は引き続き円滑な資金供給や貸付条件の変更等に努めるべき」との金融庁による方針のもと、二度、三度と条件変更等を受ける企業を含め、貸付条件変更等の実行が続いている。6月21日に公表された金融庁資料によれば、2015年10月〜2016年3月期の直近半年間で金融機関は約50.0万件の条件変更等の申し込みを受け付け、うち約48.7万件を実行、実行率は依然100%近い水準を維持している。
こうしたなか、返済猶予を経営改善に結び付けられずに倒産に至るケースも散見されている。帝国データバンクでは、金融機関から返済条件の変更等(リスケジュール)を受けていたと判明した企業(負債1000万円以上)の倒産を「返済猶予後倒産」と定義し、件数・負債推移、業種別、地域別などについて集計・分析を行った。
※上半期は1〜6月、下半期は7〜12月
■調査結果(要旨)
1.2016年上半期に判明した「返済猶予後倒産」の件数は194件と、前年同期比1.0%の微増となった。中小企業金融円滑化法の終了にともない、暫定的リスケジュールを受けた企業が返済猶予期限を迎えるなか、3年ぶりの前年同期比増加に転じた
2.業種別件数を見ると、「製造業」が46件(構成比23.7%)で最多となった。前年同期比の増加率では、「不動産業」(400.0%増)がトップ。次いで、「建設業」(43.5%増)、「運輸・通信業」(33.3%増)の順となり、売り上げ不振の内需型企業を中心に増加が目立つ
3.地域別件数を見ると、「関東」が49件(構成比25.3%)で最多となった
※グラフ資料は添付の関連資料を参照
※以下の資料は添付の関連資料「調査結果」を参照
・1.件数・負債推移
・2.業種別
・3.主な倒産事例
・4.地域別
・5.倒産態様別
6.まとめ
中小企業金融円滑化法の施行以降、借入金の返済条件変更等による返済猶予は、リーマン・ショックやその後の東日本大震災などに対して倒産件数の抑制に大きく効果を示した。一方、今回の調査で2016年上半期の「返済猶予後倒産」は194件判明し、微増ながらも3年ぶりの前年同期比増加となった。二度、三度と条件変更等を繰り返し、倒産を先延ばしした企業が増えた結果だともいえる。返済猶予を受けたすべての企業が抜本的な経営改善に結び付いているわけではなく、業界環境や企業規模などによってもその効果の差は大きい。
中小企業金融円滑化法の終了にともない、本格的な再生計画作成のための猶予期間となる暫定的リスケジュールを受けた経営不振企業は猶予期限を迎え始めている。条件変更等に際して、中小企業には実現可能性の高い抜本的な経営改善計画書(実抜計画)の策定が求められているものの、実際には未策定や、策定されていても金融機関主導により策定されているケースは多い。多くの中小企業にとって、実現性が高くかつ抜本的な経営改善を図ることはかなり難しく、返済猶予後も出口を迎えられない企業による倒産は、今後さらに増加することが懸念される。