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野村総研、「ユーザー企業のIT活用実態調査(2015年)」結果を発表

2016-03-22

「ユーザー企業のIT活用実態調査(2015年)」を実施
〜国内企業の「デジタル化」における課題は「組織の壁」〜


 株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長:嶋本 正、以下「NRI」)は、2015年12月に、国内企業におけるIT活用の実態を把握するためのアンケート調査を大手企業のCIO(最高情報責任者)またはそれに準じる役職者を対象に実施し、全業種にわたって501社から回答を得ました。NRIでは2003年から本調査を毎年行っており、今回で13回目となります。
 今回の調査では、これまでのIT投資などの定点観測項目に、企業の「デジタル化(*1)」についての項目を新たに加えました。調査結果からは、国内企業が「デジタル化」を推進する上で必要としていることは、全社的な活用方針・活用戦略の策定、情報システム部門と事業部門とのコミュニケーションや協業の促進など、「組織の壁」を越える施策であることが明らかとなりました。
 主な調査結果は次のとおりです。


■企業のIT投資は増加傾向だが、その目的別の配分は変化せず
 国内企業のIT投資は、2008年の金融危機(リーマンショック)での低下から次第に回復し、2011年度以降は「前年度比で増加」と回答する企業が増えています。2016年度についても、「増加する」と予想した企業の合計(39.7%)が「減少する」の合計(13.9%)を大きく上回っています(図1)。
 しかし、支出の内訳は2008年以来ほぼ変化がなく、IT基盤関連費用(センター設備・ネットワーク維持費、システム運用など)とアプリケーション関連費用は、約半々の比率で推移しています(図2)。さらに、アプリケーション関連費用を目的別で見ると、「業務効率化目的」の支出が約半分を占め、事業創造や競争力強化に必要な「戦略的な目的」の支出はアプリケーション関連費用の5分の1で、IT投資支出全体では10%弱に過ぎません。
 この結果から、企業のIT投資は増加傾向にあるにも関わらず、支出目的は2008年から変わらず維持・運用や業務効率化が中心であることがわかります。


■「デジタル化」に関わる新技術の採用はいまだ少数
 新技術への関心と取り組み状況についての設問からは、「デジタル化を推進する新しい技術」の採用はまだ少数であることがわかりました。「データマイニング(*2)」を「導入済み」の企業は10.1%でしたが、「ウェアラブル・デバイス/ウェアラブル・コンピュータ」「人工知能・機械学習」「IoT(Internet of Things)」「非構造化データベース」はいずれも5%未満といまだ少数です(図3)。しかし、3〜4割の企業がこれらの技術を「導入を検討中」「今後検討したい」と回答しており、注目度の高さとともに今後の進展も予想されます。


■「デジタル化」は事業部門のマーケティング施策での活用が中心
 企業の「デジタル化」に相当する新たなIT活用やデータ活用の取り組みの9分野について実施・検討状況を尋ねたところ、実施企業が多かったのは「営業・販売データ(Web以外)に基づく顧客のニーズや行動の分析」(「積極実施」「実施」の合計32.5%)と「営業・販売現場での新技術導入による顧客への提案力の向上」(同27.4%)でした(図4)。
 また、各取り組み分野の推進主体となる部門については、全分野で「事業部門」と回答する企業が最も多い結果となりました(図5)。実施企業が多い前述の2分野では、事業部門が推進主体である比率がそれぞれ57.6%、57.1%と特に高いこともわかりました。このように、企業の「デジタル化」は、事業部門が自部門のマーケティングに活用する形で進んでいると言えます。


■新たなIT活用のステージに向け「組織の壁」を越える施策が必要
 「デジタル化」を推進する11の施策について、優先度を「高い」から「低い」まで5段階でたずねたところ、優先度が高い施策は上位から「全社的な活用方針・活用戦略の策定」、「情報システム部門と事業部門とのコミュニケーションや協業の促進」(ともに平均4.0)、「営業・販売データや顧客データの標準化・統合化」(平均3.7)でした(図6)。
  日本では企業が「デジタル化」をする上で、新技術やデータ分析などのスキルを持つ人材の確保が急務であると言われてきました。しかし、今回の調査結果からは、全社的な方針策定や組織間の協調、さらに現場ごとに作られたデータをいかに統合するかなど、「組織の壁」を越えるための施策の優先度が高いことが明らかになりました。
 これまでIT活用の主要な目的であったオフィス業務の効率化や、個々の事業部門のマーケティングに閉じた「デジタル化」ではなく、企業全体で戦略的に「デジタル化」を進める上で、「組織の壁を超える施策」を積極的に推進していくことが求められます。

 ※1デジタル化:
  Webやモバイルを使った顧客行動の分析や、センサーデータに基づく機器・設備保守の高度化など、従来のようなオフィス業務のシステム化とは異なる、新しいIT活用やデータ活用のあり方
 ※2データマイニング
  統計学的・数理的な技法によって、大量のデータから有用な知識を取り出す技術


■ご参考
・調査概要
 調査名:ユーザー企業のIT活用実態調査 2015年
 調査目的:日本企業のIT活用状況に関する定点観測
 実施時期:2015年12月
 調査方法:調査票を郵送し郵便にて回収
 調査対象:日本国内に本社を持つ、売上高上位企業約3,000社の情報システム担当役員またはそれに準ずる役職者
 回答企業数:501件(回収率約17%)
 主な調査項目:
  第一部 企業の情報システムの概要
  第二部 企業の変革とIT活用
  第三部 ITマネジメントの実施状況
  第四部 手法や新技術の活用
 調査担当:
  研究理事 淀川
  戦略IT研究室 譲原、有賀、藤渡、三谷


 図1:IT投資予算の増減(2008〜2015年度:支出ベース、前年度と比較した増減率)
 図2:IT関連費用の内訳(2008〜2015年度)費用支出の目的別割合
 図3:新技術への関心と取り組み(2015年度)
 図4:新たなIT活用、データ活用の実施(2015年度)
 図5:新たなIT活用、データ活用の推進組織(2015年度)
 図6:新たなIT活用、データ活用を進めるための施策(2015年度)

 ・図1〜6は添付の関連資料を参照



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