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NICT、プロドローンなどと共同でドローンの通信の安全性を強化する技術を開発

2015-09-30

ドローンの通信の安全性を強化する技術を開発
量子鍵配送ネットワークからドローンに暗号鍵を供給し、安全な飛行制御通信を実現〜

【ポイント】
 ■ドローンと地上局間の制御通信をパケットごとに暗号化、情報漏えい等を完全防御
 ■複数の地上局を量子鍵配送ネットワークで結び、ドローンを広域で飛行誘導する制御通信技術
 ■複数地上局間での鍵配送を手渡しで行う飛行誘導システムを2年後に商品化する予定


 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長:坂内 正夫)は、株式会社プロドローン(プロドローン、代表取締役:河野 雅一)及び株式会社サンエストレーディング(サンエストレーディング、代表取締役:坂野 良行)と共同で、ドローン(*1)の飛行制御通信の安全性を強化する技術を開発しました。真性乱数(*2)を共通の暗号鍵としてドローンと地上局間で安全に共有し、制御通信をパケットごとに暗号化することで、制御の乗っ取りや情報漏えいを完全に防御します。さらに、複数の暗号鍵をドローンに搭載し、対となる暗号鍵を複数の地上局に量子鍵配送ネットワーク(*3)で配送することにより、複数の地上局間で安全に飛行制御を引き継ぎながら、ドローンを広域で飛行誘導するセキュア制御通信技術を開発し、その実証実験に成功しました。
 上記技術の商品化については、乱数生成器を地上局に導入し、ユーザ・機器認証を経て暗号鍵をドローンに供給し、地上局間では手渡しで鍵配送を行う飛行誘導システムを2年後に予定しています。
 本成果は、9月28日(月)に一橋講堂にて開催される第4回 量子暗号・量子通信国際会議(UQCC 2015)にて発表します。同会議は、量子暗号・量子通信技術の応用開始の現状や今後の展望を分かりやすく紹介します。ご興味のある方はご来場いただけると幸いです。 http://2015.uqcc.org/

 ※本研究開発の一部は、総合科学技術会議イノベーション会議により制度設計された革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の支援を受けています。


【背景】
 回転翼を持つ小型無人航空機、いわゆるドローンの技術が急速に進歩し、空撮や測量、インフラ点検などの分野で利用が広がっています。一方で、飛行の安全性対策が喫緊の課題となっています。特に、ドローンの遠隔制御に使われる無線通信は、傍受や干渉、妨害の影響を受けやすく、通信の乗っ取りや情報漏えいなども懸念されています。
 しかし、現状、標準的な暗号化すら行われていないケースが多く、ドローンの制御通信における情報セキュリティ対策は十分ではありません。また、ドローンを無線通信で制御できるエリアにはまだ限界があるため、目視圏内で飛行させることが多く、広域での安全な飛行制御には、依然、多くの課題があります。特に、警備や国家安全保障関連分野では、ドローンと地上局間の制御通信の安全性とデータ通信の秘匿性を抜本的に高め、かつ、広域にわたって安全に飛行制御する技術が必須とされています。

 ・図1は添付の関連資料を参照


【今回の成果】
 ドローン制御通信において、制御の乗っ取りや情報漏えいを完全に防御するセキュア制御通信技術を開発しました。
 ドローンの制御は、同装置の無線通信の代表的な方式の一つであるシリアル通信(*4)の制御信号(周波数2.4GHzの電波信号)を、パケットごとに異なる真性乱数を用いて暗号化(ワンタイムパッド暗号化(*5))して行いました(図1参照)。この暗号化は、真性乱数と制御信号パケットの単なる足し算で行い、従来の暗号化で用いていた複雑な関数や膨大な計算を必要としません。これにより、処理遅延のないセキュア制御通信を、低速処理でも小型かつ安価なデバイスで実現できます。
 また、現在市販されている無線装置でのドローン制御距離は1km程度に制限されています。ドローンの運用範囲を拡大するためには、地上局間での制御の引継ぎが必要になります。今回開発したシステムでは、一度使った鍵は二度と使わないワンタイムパッド暗号化を用いていますので、複数の暗号鍵(真性乱数)をドローンに搭載し、対となる暗号鍵(真性乱数)をそれぞれの地上局に配送する必要があります。地上での暗号鍵の配送法には、(1)信頼できる宅配サービス等を利用した人手による配送(第一世代:図2a)、(2)量子鍵配送ネットワークによる自動配送(第二世代(*6):図2b)があります。

 ・図2は添付の関連資料を参照

 今回、2つの飛行制御エリアA、B間で安全に制御通信を引き継ぐ第一世代システムの実証実験に成功しました(図3参照)。さらに、NICTが管理運営する量子鍵配送(QKD)ネットワーク「東京QKD ネットワーク」で配送された暗号鍵を2つの地上局に供給し、飛行制御を引き継ぐ第二世代の実証実験にも成功しました。今回の第二世代の実験では、ドローンの制御範囲をNICT構内に限定していますが、将来の広域セキュア制御通信技術に必要な原理が実証されました。

 ・図3は添付の関連資料を参照

 ※今回の実験は、NICT内において安全管理に関する審査を事前に経た上、NICT敷地内テストフィールド及び研究棟屋上という場所に限定して、GPS機能を用いた飛行区域制限やロープ締結などの手法によって運用の安全性を確保した状態で実施しました。


【今後の展望】
 当開発チームは、地上での暗号鍵の配送に信頼できる宅配サービス等を利用し、通信を使わずに供給する第一世代システムを2年以内に商品化する予定です(図2参照)。
 また、NICT敷地内の東京量子鍵配送ネットワークにおいて第二世代システムの研究開発を継続していきます。
 量子鍵配送ネットワークをドローンの運用に活用することで、実装上の制約が多いドローン上でも、簡易な方式によって極めて高い安全性を実現できるようになります。加えて、この広域セキュア制御通信技術を用いれば、複数の地上局とドローンから成るネットワークシステム上で、乗っ取りや情報漏えいを防ぎながら、動的に飛行エリアや経路の選択と制御を行うことも可能になります。
 さらに、従来の電波による方式のほか、レーザー光を使った大容量かつ安全なデータ通信ネットワークを実現するための研究開発にも積極的に取り組んでいきます。


<本件に関する発表学会>
 第4回 量子暗号・量子通信国際会議
 The Fourth International Conference on Updating Quantum Cryptography and Communications(UQCC 2015)
  会期:2015年9月28日(月) 9:30−12:30
  会場:一橋大学 一橋講堂(〒101−8439 東京都千代田区一ツ橋2−1−2 学術総合センター内)
  URL:http://2015.uqcc.org/


◇各機関の役割分担
 ・NICT:基本方式を発案し、量子鍵配送ネットワークの技術とテストベッドを提供
 ・プロドローン:鍵インターフェースと鍵管理システムをドローンに実装し、セキュア制御通信技術を開発
 ・サンエストレーディング:応用市場を調査し、セキュア制御通信技術の仕様要件を抽出


◇実験の概要に関する動画
 https://youtu.be/KqOW6hqF9qU


 ・用語解説などは添付の関連資料を参照



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