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日立、北大と共同で動体追跡照射技術を適用した医療機器の製造販売承認を取得

2014-10-28

動体追跡照射技術を適用した「陽子線治療システム PROBEAT−RT」が
薬事法に基づく医療機器の製造販売承認を取得
世界で初めて動体追跡照射技術とスポットスキャニング照射技術の組み合わせによる陽子線治療を実現


 株式会社 日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、2010年に国家プロジェクト「最先端研究開発支援プログラム」の採択を受けて、国立大学法人 北海道大学(総長:山口 佳三/以下、北大)と共同開発を進めていた動体追跡照射技術を適用した「陽子線治療システム PROBEAT−RT」について、薬事法に基づく医療機器の製造販売承認を取得しました。
 2014年度中に、本技術を適用したシステムによる治療が北大で開始される予定です。今回の製造販売承認の取得により、世界で初めて動体追跡照射技術とスポットスキャニング照射技術の両方を搭載した陽子線治療システムによる治療が可能となります。

 陽子線がん治療は、放射線によるがん治療法のひとつであり、水素の原子核である陽子を加速器で高速に加速し、腫瘍に集中して照射することでがんを治療するものです。治療に伴う痛みがほとんどなく、身体の機能と形態を損なわないため、治療と社会生活の両立が可能であり、生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)を維持しつつ、がんを治療できる最先端の治療法として期待されています。一方で、脳の腫瘍のように動かない部位では、集中して照射するピンポイントの治療が可能ですが、肺や肝臓のような体幹部の腫瘍は呼吸等で位置が変動するため、腫瘍位置をリアルタイムで捉えて正確に陽子線を照射する技術が切望されています。

 日立が今回、薬事法に基づく医療機器の製造販売承認を取得した「陽子線治療システム PROBEAT−RT」は、北大の持つ動体追跡照射技術と日立の持つスポットスキャニング照射技術を組み合わせた陽子線治療システムです。2014年3月に承認を取得した、スポットスキャニング照射技術を搭載した陽子線治療システムに、動体追跡技術を組み合わせることにより、呼吸等で位置が変動する腫瘍に対しても高精度な陽子線の照射を実現し、正常部位への照射を大幅に減らすことが可能になります。

 「最先端研究開発支援プログラム」は、科学技術政策による大型の研究支援制度であり、2009年に公募が行われ、全国から565件の応募があった中から、2010年3月の総合科学技術会議で、日本の科学技術の将来を担う30件の「中心研究者及び研究課題」が決定されました。北大からは医学研究科白土博樹教授の「持続的発展を見据えた『分子追跡放射線治療装置』の開発」が採択されました(*1)。放射線医療分野として唯一の採択であり、今後の日本の放射線医療・がん治療技術の発展を牽引するプロジェクトとして国内外から注目を集めました。

 「持続的発展を見据えた『分子追跡放射線治療装置』の開発」におけるシステムの共同開発では、北大の持つ動体追跡照射技術と日立の持つスポットスキャニング照射技術を組み合わせ、呼吸等で位置が変動する腫瘍に対して精度よく陽子線を照射することができる治療システムの開発と、治療システム全体の小型化が重要な課題となっていました。

 北大と日立はこれまで、陽子線がん治療の世界的な普及をめざして、北大の放射線治療で培ってきた知見と、日立の持つ設計技術の融合により、コンパクトで低コストな陽子線がん治療システムを共同開発してきました。2014年3月からは、ガントリー・照射ノズル・加速器を小型化し、装置の機器配置を見直すことで全体をコンパクト化した、スポットスキャニング照射方式の治療システムによる治療を開始しています。今回の薬事法に基づく医療機器の製造販売承認を受け、コンパクト化したスポットスキャニング方式の治療システムに動体追跡技術を適用し、呼吸等で位置が変動する腫瘍に対して精度良く陽子線を照射することができるようになることで、「持続的発展を見据えた『分子追跡放射線治療装置』の開発」における重要な二つの課題を解決した、新しい治療システムによる治療が、実際の医療現場で開始されることになります。

 北大と日立は、医学・工学分野における両者の優れた技術・知識・経験を組み合わせ、今回の陽子線がん治療システム開発を通じて、QOLに優れた最先端の放射線医療・がん治療に貢献していきます。

 *1 本国家プロジェクト「持続的発展を見据えた『分子追跡放射線治療装置』の開発」では、陽子線がん治療システムの開発と並行して、共同提案者である京都大学平岡真寛教授が、X線治療の分野で、腫瘍を追いながら照射する追尾型画像誘導X線治療システムを開発しました。


<動体追跡照射技術の概要>
 動体追跡照射技術は、腫瘍近傍に2mmの金マーカーを刺入し、CT装置であらかじめ腫瘍中心との関係を把握しておき、2方向からのX線透視装置を利用し、透視画像上の金マーカーをパターン認識技術にて自動抽出し、空間上の位置を周期的に繰り返し計算します。そして、金マーカーが計画位置から数mmの範囲にある場合だけ照射します。これを高速で行うことで、呼吸等により体内で位置が変動するがんでも高精度で照射を行うことが可能になります。これにより、動いているがんの範囲をすべて照射する方法に比べて、照射体積を1/2〜1/4に減らし、正常部位への照射を大幅に減らすことが可能になります。


<スポットスキャニング照射技術の概要>
 スポットスキャニング照射技術とは、腫瘍を照射する陽子線のビームを従来の方式のように拡散させるのではなく、細い状態のまま用い、照射と一時停止を高速で繰り返しながら順次位置を変えて陽子線を照射する技術で、複雑な形状をした腫瘍でも、その形状に合わせて高い精度で陽子線を照射することができ、正常部位への影響を最小限に抑えることが可能です。


以上




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