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JSTなど、1万分の1度ほどのX線の屈折を利用した革新的なX線撮影装置を開発

2011-02-21

1万分の1度ほどのX線の屈折を利用した革新的X線撮影装置を開発
−乳がんやリウマチの早期診断を可能に−


 JST 産学イノベーション加速事業【先端計測分析技術・機器開発】の一環として、東京大学 大学院新領域創成科学研究科の百生(モモセ) 敦 准教授と、コニカミノルタエムジー株式会社(本社:東京都日野市、社長:児玉 篤)、兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所の服部 正 教授らの開発チームは、病院などで使用されている通常のX線源を用い、撮影対象を通過したX線の位相(注1)の違いから画像の濃淡(コントラスト)を生成する革新的なX線撮影装置を開発しました。

 従来から病院などで一般的に用いられているX線撮影装置では、撮影対象を透過したX線の強弱をそのまま記録することでコントラストを得ています。例えば、人体を撮影する際、骨のようにX線を吸収しやすい組織の画像は容易に得ることができますが、がん化した組織や軟骨などはX線をあまり吸収しないため、撮影が困難でした。一方で、X線があまり吸収を受けない組織を透過する場合であっても、X線の位相には変化が生じ、透過したX線はわずかながら屈折されます。しかし、従来のX線撮影装置ではこの効果をほとんど検出することができませんでした。百生准教授らは今回、タルボ・ロー干渉計と呼ばれる原理に基づき、1万分の1度ほど曲がったX線を検出することによってコントラストを生成する装置を開発しました。この成果により、今までの技術では得られなかった軟骨など体内の柔らかい組織についてもX線画像を撮影することに成功しました。

 名古屋医療センターの遠藤 登喜子 放射線科部長は、この装置を用いて乳がん切除標本の撮影を行い、従来のX線画像では確認できなかった乳がん部位の撮影に成功しました。

 この結果は本装置の乳がん早期診断への有効性を示唆するもので、2011年2月18日・19日(日本時間)に東京ステーションコンファレンスで開催される「第30回 日本画像医学会年会」で発表されます。また、埼玉医科大学の田中 淳司 教授もこの装置を用いて、従来法では難しかった軟骨の撮影に成功しました。この成果で示唆された早期リウマチ診断への可能性については、2011年3月3日から7日(オーストリア時間)までオーストリアのウィーンで開催される「欧州放射線学会(ECR2011)」で発表されます。

 これらの成果は、本装置が医療用画像診断装置としての高い有用性を持つことを期待させるものです。また、日本発の革新的X線撮影装置として、製品検査やセキュリティのためのX線非破壊検査などにも広く役立てられる可能性も期待されます。


 本開発成果は、以下の事業・開発課題によって得られました。

 事業名:産学イノベーション加速事業【先端計測分析技術・機器開発】機器開発プログラム
 担当開発総括:澤田 嗣郎(東京大学 名誉教授)
 開発課題名:「高アスペクト比X線格子を用いた位相型高感度X線医用診断機器の開発」
 チームリーダー:百生 敦(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 准教授)
 開発期間:平成19〜23年度(予定)

 JSTはこのプログラムで、最先端の研究ニーズに応えられるような計測分析・機器およびその周辺システムの開発を行うことを目的としています。


※以下、開発の詳細は添付の関連資料を参照

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