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エーザイ、抗がん剤「ハラヴェン」の転移抑制効果に繋がる前臨床研究成果を発表

2013-04-16

第104回米国がん研究会議で抗がん剤「ハラヴェン(R)」の転移抑制効果に繋がる前臨床研究成果を発表


 エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、このたび、第104回米国がん研究会議(American Association for Cancer Research:AACR)において、抗がん剤「ハラヴェン(R)」(一般名:エリブリンメシル酸塩、以下「エリブリン」)の新たな作用機序として、エリブリンの転移抑制効果を示唆する、前臨床研究の成果を発表しましたので、お知らせします。

 今回、AACRで発表した研究成果として、当社は、複数のがん細胞株を用いた遺伝子発現解析を実施し、エリブリンが上皮間葉転換(Epithelial−Mesenchymal Transition:EMT)に関わる遺伝子群の発現を変動させることを確認しました。EMTは1980年代初めに提唱され、発生過程で胚上皮細胞が間葉系細胞の性質を得て細胞移動する際に見られる現象として長く認識されていましたが〔1〕、近年、成体でも様々な病態に関与していること、特に上皮性がん細胞のEMTの獲得は、がんの浸潤・転移と関連性が高いことが報告されています〔2〕。

 また、別の研究成果として、ヒト乳がん細胞株を移植したマウス皮下移植モデルについて、ダイナミック造影MRI(Dynamic Contrast Enhanced−Magnetic Resonance Imaging:DCE−MRI)による解析を行い、エリブリンが腫瘍組織中心部の血液循環を改善することを確認しました。本研究結果は、エリブリンが腫瘍組織中心部の血液循環を改善することで低酸素状態を解除することを示唆しています。低酸素状態の腫瘍組織中では、がん細胞が高い転移能を獲得しているとの報告があることから〔3〕、エリブリンが血液循環の改善により腫瘍組織中心部の低酸素状態を解除し、転移抑制に働く可能性を期待しています。

 エリブリンの主作用である非タキサン系微小管ダイナミクス阻害作用に加え、今回発表した前臨床試験の結果が示唆している転移抑制効果を含め、当社はエリブリンのさらなるエビデンスの創出に邁進し、本剤の製品価値最大化を通じて、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。


以上


[参考資料として、ハラヴェン(R)について添付しています]

<参考資料>
 1.「ハラヴェン(R)」(一般名:エリブリン)について
  「ハラヴェン(R)」は、新規の作用機序を有する非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai)から抽出されたハリコンドリン類の全合成類縁化合物であり、微小管の短縮(脱重合)には影響を与えずに伸長(重合)のみを阻害し、さらにチューブリン単量体を微小管形成に関与しない凝集体に変化させる作用を有しています。
  海外で実施された、アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む前治療歴のある進行または再発乳がん患者様762人を対象とした臨床第III相試験(EMBRACE試験)では、ハラヴェン(R)投与群は主治医選択治療群と比較し、全生存期間を2.5カ月間延長しました(全生存期間:13.1カ月 対 10.6カ月、ハザード比:0.81、p値:0.041)。また、当社は欧州と米国の審査当局からの依頼によりプロトコールの規定に加えてEMBRACE試験の結果をアップデートしました。その最新の解析データは、ハラヴェン(R)投与群では主治医選択治療群に比べて2.7カ月間の全生存期間の延長が認められました(全生存期間:13.2カ月 対 10.5カ月、ハザード比:0.81、p値:0.014)。ハラヴェン(R)投与群で高頻度(頻度25%以上)に認められた有害事象は、無気力(疲労感)、好中球減少、貧血、脱毛症、末梢神経障害(無感覚、手足等のしびれ)、悪心、便秘でした。この中で、特に重篤な有害事象として報告されたのは好中球減少(発熱を伴う症例が4%、発熱を伴わない症例が2%)です。またハラヴェン(R)投与中止に至った主な有害事象は末梢神経障害(5%)でした。また、日本で実施された臨床第II相試験でも、前治療歴を有する進行または再発乳がん患者様に対し、良好な抗腫瘍効果と忍容性プロフィールを示しました。
  本剤は、乳がんについて2010年11月に最初の承認を米国で取得し、これまでに欧州、日本、シンガポール、スイス等、40カ国以上で承認を取得しています。日本では、「手術不能又は再発乳癌」を効能・効果として承認され、2011年7月より発売をしています。また、本剤の製品価値最大化に向け、前治療歴の少ない乳がん、また、軟部肉腫、非小細胞肺がんについても後期臨床開発を進めています。


<参考文献>
 〔1〕Hay ED. The mesenchymal cell,its role in the embryo,and the remarkable signaling mechanisms that create it.Dev Dyn.2005;233:706−720.

 〔2〕Mani SA,Guo W,Liao MJ,Eaton EN,Ayyanan A,Zhou AY,Brooks M,Reinhard F,Zhang CC,Shipitsin M,Campbell LL,Polyak K,Brisken C,Yang J,Weinberg RA.The Epithelial−Mesenchymal Transition Generates Cells with Properties of Stem Cells.Cell.2008;133(4):704−715.

 〔3〕Sullivan R,Graham CH.Hypoxia−driven selection of the metastatic phenotype. Cancer Metastasis Rev.2007;26(2):319−331.


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