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住友林業など、仁和寺の「名勝 御室桜」で組織培養法により増殖に成功し試験植栽を開始

2012-02-24

〜総本山仁和寺(にんなじ)御室桜(おむろざくら)研究プロジェクト〜
“名勝 御室桜”組織培養苗の試験植栽開始



 総本山仁和寺(門跡:南 揚道、京都市右京区 以下、仁和寺)の“名勝 御室桜“は、美しい京都の春の最後を彩る遅咲きの桜としてその名が知られ、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)の世界文化遺産に「古都京都の文化財」として登録されております。このたび、仁和寺と住友林業株式会社(社長:市川 晃 本社:東京都千代田区 以下、住友林業)をはじめとする「御室桜研究プロジェクト」は、2010年1月に住友林業筑波研究所(所長:梅咲 直照 所在地:茨城県つくば市 以下、筑波研究所)が、組織培養法によって増殖に成功した御室桜の苗木の第一号が植栽可能な大きさに達したことから、仁和寺への里帰りを行うとともに、土壌や気候条件の異なる複数の場所で試験植栽を開始することとなりましたので、お知らせいたします。

 仁和寺の境内中門をくぐって左手に広がる御室桜は、株立ちで人の背丈ほどまでにしか成長しないため、目の高さで花が咲くという特徴があります。天保3年(1646年)に行なわれた伽藍再建の際に植えられたと伝えられているものは、既に樹齢360年を超えると考えられ、近年、樹勢の衰えが顕著となっていたため、仁和寺はその成長に関する謎の解明と美しい景観を維持管理することを目的に、京都府文化財保護課および各行政機関と協議の上、千葉大学園芸学部、住友林業グループと共同で、2007年4月に御室桜研究プロジェクトを発足させてから、成長調査、土壌・根系調査、苗木増殖、DNA鑑定等の調査研究を実施してまいりました。

 試験植栽は、全国各地の仁和寺および住友林業の管理地で行います。東日本大震災により被害を受けた東北地方の複数の小中学校に研究プロジェクトに加わっていただき、桜を育てることを通じて未来を考えていただくことを検討しております。文部科学省や各市町村の教育委員会など関係機関に相談させていただきながら、植栽の実現に向けて働きかけてまいります。御室桜研究プロジェクトの目的は、御室桜という文化を後世に守り伝えるということにあります。地域の小中学生と共同で試験を進めていくことを通して、被災地において植栽した培養苗が、後世に震災の記憶を語り継いでいくシンボルの一つになると考えております。


■御室桜の組織培養について
 御室桜の苗木は、株分けで増殖されてきましたが、この桜は大変繊細なため、株分けの段階で先祖帰りをして一重になることが多く、本来の姿である八重咲きが徐々に失われつつありました。
 筑波研究所では、御室桜の景観を後世に引き継ぐために、組織培養法の一手法である茎けい頂ちょう培養法を採用し、八重咲きになる可能性の高い増殖技術を開発しました。茎頂培養法は、芽の分裂組織である“茎頂”を顕微鏡下で摘出し培養する方法ですが、茎頂は自然条件下でもほぼ無菌状態と言われているため、病虫害に冒された苗を生産する危険性がほとんどありません。加えて、この方法で苗木を増殖すると、先祖帰りをせず本来の八重咲きの姿を受け継ぐことが可能です。
 八重咲きの枝から材料を採取し、茎頂培養により増殖した苗は、理論的には必ず八重咲きとなりますが、御室桜はきわめて繊細ということもあり、増殖した苗の花弁調査を行い、八重咲きであることを確認する必要があります。このため、苗木が植栽可能な大きさに育った段階で、試験植栽を行うこととなりました。


■試験植栽について
 1)試験概要
 増殖した苗は、材料採取した木と同一の形質となるため、土壌や気候が同じ場合には、同じように成長すると想定できます。従って、増殖した苗を、仁和寺と異なる場所に移植し、その成長を観察することにより、成長の要因が土によるものなのか、または木そのものがもつ特徴なのか、あるいは両方によるものなのかを解明できると考えています。
 試験地は、仁和寺境内のほか、住友林業グループの管理地がある宮崎県、愛媛県、神奈川県、茨城県の5箇所と、東日本大震災の被害があった東北地方からも候補地として複数箇所を予定しており、植栽本数は、各試験地に1〜10数本を予定しています。各地での試験開始は、本年11月以降を目指しています。仁和寺境内では、段階を経ながら合計で50本近い培養苗を順次植栽する予定です。

 2)東北地方での試験植栽
 東北地方での試験植栽に関しては、文部科学省や各市町村の教育委員会など関係機関に相談させていただきながら、本年11月からの植栽試験の実現に向けて努力していきます。地域の小中学生たちが参加する試験植栽の取り組みの中で、仁和寺は御室桜とその歴史を熟知した人材と詳細な資料を用意し、御室桜を継承していく意義を伝えていきます。住友林業グループは御室桜の培養苗とその育成に関するバイオテクノロジー技術、またプロジェクトに伴う費用を提供します。具体的には、以下の内容を予定していますが、試験地については、継続的に観察・研究を進めていくことを鑑みて、深雪の場所、短期間しか調査できない場所、塩害が予想される場所などは除外して植栽を行います。
 (1)被災地の小中学校と共同で御室桜の培養苗の植栽および成長調査を行う。
 (2)参加した小中学校に毎年集まっていただき、調査報告会を開催するとともに、調査レポートを作成する。
 (3)試験期間は、5年間とする。試験終了後は、調査を担当した各小中学校が責任を持って管理を行う。

*住友林業 筑波研究所
 木の総合的な活用を目指し、広く研究開発を進めていくことを目的に1991年に茨城県つくば市の「筑波研究学園都市」に設立。「木質資源分野」・「建築住まい分野」の観点より、素材としての木の可能性を探求し、魅力ある住宅用木質材料の研究、資源の有効活用、快適な住環境の研究開発など循環型社会に向けさまざまな研究テーマに取り組んでいます。また、各種部材や住宅部材の品質について検査・検証を行う「テクノセンター」、研究成果や技術情報の収集、タイムリーな情報提供を行う「木と住まい先端情報室」を併設し、先端技術の実用化に向けた取り組みを支えています。


以上


 ※参考資料は添付の関連資料を参照



【御室桜の拝観に関するお問合せ先】
 総本山 仁和寺
 http://www.ninnaji.or.jp/
 TEL:075−461−1155

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