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東北大と名大、測定誤差と擾乱の不確定性に関する新たな不等式の実験的検証に成功

2014-01-08

測定誤差と擾乱の不確定性に関する新たな不等式の実験的検証に成功


<概要>
 東北大学電気通信研究所・枝松圭一教授,名古屋大学大学院情報科学研究科・小澤正直教授らの研究グループは,量子力学の基本原理のひとつである「測定誤差と擾乱に関する不確定性関係」に関して,「ハイゼンベルクの不等式」が破れており,小澤が提案した「小澤の不等式」と,新たに提案された「ブランシアードの不等式」が成立していることを,弱測定と呼ばれる新しい計測法を用いた実験で検証することに成功しました。本実験技術は,量子暗号の技術開発に重要な役割を果たすことが期待されています。
 量子力学では,二つの物理量(例えば位置と運動量)の測定に関して,一方の物理量の測定誤差と,その測定によって他方の物理量が乱される量(擾乱)との間には,一般に,一方を小さくしようとすれば他方を犠牲にしなければならないという「測定誤差と擾乱に関する不確定性関係」があるとされています。この関係は,ハイゼンベルクが提唱した「ハイゼンベルクの不等式」によって正しく表現されるものと思われてきました。しかし,小澤は,ハイゼンベルクの不等式が成立しない場合があることを理論的に明らかにし,2003年に世界で最初にハイゼンベルクの不等式に代わって常に成立する新たな関係式(小澤の不等式)を提唱しました。昨年来,本研究グループを含む複数の実験グループが,中性子や光子を用いた実験によって,ハイゼンベルクの不等式が破れ,小澤の不等式が成立することを実験的に検証しました。
 さらに今年,オーストラリアのブランシアードによって,測定誤差と擾乱に関する新たな関係式(ブランシアードの不等式)が提案されました。この関係式は,小澤の不等式を含む改良型で,その実験的検証が期待されていました。今回,本研究グループは,光の偏光に関する「弱測定」と呼ばれる新たな計測法を用いて,ハイゼンベルクの不等式が破れており,小澤の不等式とブランシアードの不等式が成立すること,そして測定された誤差と擾乱の関係が,ブランシアードの不等式が予言する限界に近いものとなっていることを実験的に初めて確認しました。
 本研究は,総務省・戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)による研究プロジェクト「擾乱計測技術に基づく安全な量子通信の研究開発」の一環として実施され,「測定誤差と擾乱に関する不確定性関係」の新しい理論に基づき,弱測定によって通信路の擾乱を計測することにより,秘匿性を実現する新しい量子暗号技術の開発を目指しています。今回の実験は「測定」という科学技術の基本的事項において,ハイゼンベルクの不等式に代わる新たな基本的限界が存在することを初めて明瞭に検証したもので,量子力学における基本原理の見直しとなることはもちろん,従来の限界を超えた超精密測定技術や普遍的な誤差・擾乱関係に基づく新たな量子情報通信技術の開発が期待される特筆すべき成果と考えられます。

 この研究成果は,2013年12月26日に米国物理学会論文誌「Physical Review Letters」(フィジカル・レビュー・レターズ)誌オンライン版に掲載される予定です。


 ※以下、リリースの詳細は添付の関連資料を参照


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