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京大、炎症部位で血管の透過性が亢進する様子を二光子顕微鏡で撮影することに成功

2013-06-11

二光子顕微鏡を用いた生体マウス内での新規血管透過性評価法


 江川形平 日本学術振興会特別研究員(医学研究科)、椛島健治 同准教授らの研究グループは、生きたマウスを用いて、血管透過性がダイナミックに変化する様子を動画に撮影することに世界で初めて成功しました。

 本研究成果は、2013年6月5日付けの英国科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」誌に掲載されました。


<概要>
 炎症がおこった部位は次第に腫れてきます。これは、炎症部位において血管の透過性が亢進するためです。今回、本研究グループは生きたマウスを用いて、血管透過性がダイナミックに変化する様子を動画に撮影することに世界で初めて成功しました。

 本研究では二光子顕微鏡という特殊な顕微鏡を用いています。二光子顕微鏡を用いることで、生きた動物の体内の様子を外から直接観察することができます。まず、蛍光標識デキストランをマウスに静脈注射し、血管を蛍光で光らせました。この時、さまざまな分子サイズの蛍光標識デキストランを用い、分子サイズによる漏れやすさの違いから皮膚の血管透過性を評価しました。その結果、およそ分子量70,000以下のものは炎症がなくても容易に血管外へ漏れ出ることを観察しました。これは主要な血清タンパクであるアルブミン(分子量66,000)が長く、血管内に留まることと合致する結果です。

 一方で、さまざまな方法で血管透過性の亢進を誘導し、それを動画に撮影しました。ヒスタミンの静脈注射では、注射直後に血管透過性が亢進し、とくに後毛細管静脈と呼ばれる部位から漏出が起こることを明らかにしました。これは急激に血管透過性が亢進するアナフィラキシーに相当するモデルです。また、皮膚のかぶれ反応を誘導し、皮膚炎部位で持続的に血管透過性の亢進が生じている様子を撮影しました。これらの炎症部位では分子量2,000,000のデキストランでも容易に血管外へ漏出しており、免疫グロブリン(分子量150,000)のような高分子量の血清タンパクでも炎症部位では組織中に高濃度に分布することが示唆されました。

 ※参考図などは添付の関連資料を参照


<今後の展望>
 今回の研究手法により、「炎症」という概念を血管透過性の亢進という観点から視覚的に表現することが可能となりました。ダイナミックに血管透過性が変化し、血管内の蛍光シグナルが組織中へ分布する動画は印象的で、一般の人でも炎症の概念を分かりやすく捉えることができるものと思われます。また、血管透過性の制御は、免疫グロブリンの組織への分布をも制御していると考えられ、今回得られた知見は、自己免疫病などの病態メカニズムの解明にも役立つものと期待されます。


書誌情報
 [DOI]http://dx.doi.org/10.1038/srep01932

 Egawa Gyohei,Nakamizo Satoshi,Natsuaki Yohei,Doi Hiromi,Miyachi Yoshiki,Kabashima Kenji.
 Intravital analysis of vascular permeability in mice using two−photon microscopy.
 Scientific Reports 3,Article number:1932,2013/06/04/online


 ・京都新聞(6月5日 22面)に掲載されました。


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