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東北大とNEC、スピントロニクス技術を用いたロジックインメモリ集積回路の自動設計技術を開発

2013-02-22

スピントロニクス技術を用いたロジックインメモリ集積回路の自動設計技術を開発
〜消費電力を1/4に削減した画像処理プロセッサを動作実証〜



 東北大学とNECは、電子機器の待機電力ゼロに向けたスピントロニクス技術を論理集積回路に導入し、論理回路とメモリを一体化した不揮発性ロジックインメモリ集積回路を自動設計できるライブラリを開発しました。また、本ライブラリを利用して、画像処理用のプロセッサを設計・試作し、演算時に不要な消費電力を1/4に削減できることを実証しました。

 本技術は、電子が持つ性質であるマイナス電荷や微細な磁石であるスピン(注1)を利用したスピントロニクス論理集積回路技術の一つです。東北大学が従来から開発を進めている、磁性体に対して垂直な磁化をもつ垂直磁化MTJ素子(注2)を利用することで、論理集積回路上の全ての回路を不揮発化することができます。

 東北大学とNECは従来から、汎用検索集積回路(TCAM)、FPGA用の論理演算回路(LUT)、加算器回路など、少ない数のMTJ素子を規則的に並べる回路や回路部品で動作実証を行ってきました(注3)。しかし、大規模な論理集積回路は、多数のMTJ素子を複雑・不規則に並べるものが多く、実現のためには不揮発性ロジックインメモリで使用できる自動設計ツールが必要です。
 このたび開発したライブラリは、CADを用いた既存の論理回路設計ツールに追加搭載して利用するもので、回路の設計やスピントロニクス技術の専門家でなくても、大規模なロジックインメモリ集積回路の設計が可能です。

 不揮発性ロジックインメモリ集積回路は、論理演算を実施するたびに、演算に不要な回路の電源を切ることができます。これにより、待機電力ゼロ、省電力動作、瞬時な起動を可能にする電子機器を実現します。このたび開発したライブラリを搭載した自動設計用ツールを活用して、画像処理用プロセッサを試作し動作の実証を行いました。その結果、スピントロニクス技術を活用しないプロセッサと比較して、待機電力ゼロ、演算全体における不要な消費電力を1/4に削減しました。

 このたび開発した技術の特長は、次のとおりです。


1.不規則・複雑な不揮発性ロジックインメモリ集積回路に対応した、自動設計ライブラリを開発
 回路構成が不規則で複雑な不揮発性ロジックインメモリ集積回路を設計するために、自動設計用のツールに搭載できるライブラリを作成。本ライブラリにより、メモリに不揮発性材料であるMTJ素子を利用しながら、一般的な集積回路と同様の論理合成や自動レイアウトを実現。


2.設計ツールを活用して、演算時に不要な消費電力を従来比1/4に削減した画像処理用プロセッサを開発
 不揮発性のロジックインメモリ集積回路は、論理演算を実施するたびに、その論理演算に不要な回路の電源を切ることで、無駄な電力を削減可能。このたび開発した画像処理用アレイプロセッサは、処理演算ごとに25個の単位プロセッサのうち必要なものだけを動作させ、不要なプロセッサの電源を切ることで、本技術を使用しない場合と比べて演算時の不要な消費電力を1/4に削減。

 昨今、クラウドコンピューティングの拡大とともに、情報通信機器の利用も増加しています。現在の機器は、完全に電源を切ると起動に時間が必要な場合が多く、待機時は内部回路が通電状態となっています。このため、機器の増加に伴う、待機電力の増大が懸念されています。

 東北大学とNECは、スピントロニクス論理集積回路技術をさらに向上して、より大規模、省電力で、多用途な集積回路の開発を目指すとともに、本技術の早期実用化に向けて研究開発を進めてまいります。

 なお、東北大学とNECは今回の成果を、2月17日から21日まで、米国サンフランシスコで開催される半導体回路技術の国際学会「International Solid−State Circuits Conference(ISSCC) 2013」において、19日に発表します。

 本成果の一部は、内閣府の最先端研究開発支援プログラム(題名:「省エネルギー・スピントロニクス論理集積回路の研究開発」(注4)、中心研究者:東北大学 大野英男教授)によって得られたものです。


【別紙】スピントロニクス技術を用いたロジックインメモリ集積回路の自動設計技術を開発

 ※添付の関連資料を参照


以上


 (注1)負の電荷を帯びた粒子である電子が持つ、小さな磁石の性質
 (注2)小さな磁石による磁化が電流と垂直方向となるように回路の構造、材料を最適化した素子。
 (注3)東北大学とNECの従来の取り組み2012年6月11日発表:世界初、スピントロニクス論理集積回路の信頼性を向上する技術を開発〜電子機器の待機電力ゼロを実現する回路の実用化へ前進〜http://www.nec.co.jp/press/ja/1206/1102.html
 (注4)最先端技術の中心研究者を選出し、その中心研究者を核にした研究開発によって、日本の国際競争力向上を目標とする国家プロジェクト事業。

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