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東大とJST、電子・正孔ともに高い移動度を実現するゲルマニウム電界効果トランジスターを開発

2010-12-14

電子・正孔ともに世界最高移動度を持つゲルマニウム電界効果トランジスターを実現
(次世代CMOSへ新たな道)



 JST 課題解決型基礎研究の一環として、東京大学大学院工学系研究科の鳥海 明 教授らは、電子・正孔ともに世界最高の移動度(注1)を持つゲルマニウムを用いた絶縁ゲート型電界効果トランジスター(注2)の開発に成功しました。

 低消費電力デバイスを構築する上でCMOS(Complimentary MOS)(注3)技術は欠かせません。現在はシリコンCMOSが主流ですが、次世代CMOSの高性能化に向けてトランジスターのスイッチ速度に直結する飛躍的に移動度が高いトランジスターの実現が望まれています。多くの半導体材料の中で、半導体固有の移動度が電子・正孔ともにシリコンよりも格段に優れている材料はゲルマニウム以外にありませんが、ゲルマニウム上に安定的な絶縁膜を作製できなかったため、絶縁膜との界面で動作させる電界効果トランジスターにおいては、電子・正孔ともに高い移動度を実現することは不可能と考えられてきました。

 本研究グループは本年6月、ゲルマニウム基板の酸化過程の見直しからプロセスを構築することによって、世界最高の電子移動度を持つゲルマニウムトランジスターの実現を報告しました。しかし、材料科学的にはさらなる向上が予測され、またCMOS化を前提に正孔における移動度の改善が必要であることから、今回界面の抜本的改善に焦点をあててトランジスター作製過程を見直しました。その結果、従来のシリコン基板上の電界効果トランジスターの移動度と比べて、電子で2.5倍、正孔で3.5倍という最高性能のトランジスターを実証しました。これは15nm(ナノメートル、10億分の1m)技術世代以降のCMOS用基板材料としてゲルマニウムの極めて大きな可能性を示すものです。

 今回の研究成果は、2010年12月6日から8日(米国太平洋標準時間)に米国・サンフランシスコで開催される「電子デバイス国際会議(IEDM)」で発表されます。


 本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
 研究領域:「次世代エレクトロニクスデバイスの創出に資する革新材料・プロセス研究」
       (研究総括:渡辺 久恒 (株)半導体先端テクノロジーズ 代表取締役社長)
 研究課題名:「Ge High−k CMOSに向けた固相界面の理解と制御技術の開発」
 研究代表者:鳥海 明(東京大学大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻 教授)
 研究期間:平成20年10月〜平成26年3月

 JSTはこの領域で、革新的かつ実用化可能なエレクトロニクスデバイスを創製するための材料・プロセスの研究開発を推進しています。上記研究課題では、Ge系材料の熱的、電気的安定性が悪い弱点を克服し、高速・低消費電力デバイス実現に向けた研究を推進しています。


<研究の背景と経緯>
 情報技術の進展は、シリコンを用いたトランジスターの微細化よって成し遂げられてきたといっても過言ではありません。しかし、最先端トランジスターのゲート長はすでに50nm以下にまで微細化され、さらなる性能の向上を実現するにはシリコンという材料の見直しが迫られています。一方、性能だけではなく消費電力の削減が喫緊の問題として半導体技術に課せられてきていることも見逃せません。現在新しいトランジスター材料に要求される事項として、次の3点があげられます。

 i)集積化を前提にCMOS構造をコンパクトに実現できること。
 ii)電子・正孔ともに移動度がシリコンに比べて十分に高いこと。
 iii)サブスレッショールド電流(注4)を十分に抑えたトランジスターを実現できること。

 新しい材料を用いる場合に、材料の変更によって従来シリコンで達成されてきた利点を失うのであれば総合的には性能を落とすことになりかねません。また、電子・正孔をそれぞれ独立に異なる材料で移動度を向上させる手法では、現実的に集積回路を作製する観点からi)の集積化の実現が極めて難しいと考えられます。

 以上の観点から、本研究グループではシリコンに代わる材料としてゲルマニウムに着目し、電界効果トランジスターで最も重要な絶縁膜との界面の理解と制御の研究を進め、今年6月に米国・ハワイで開催された「VLSIシンポジウム」において、ゲルマニウムについて今まで不可能とされてきた電子の移動度に関して世界最高の結果を実証してきました(平成22年6月18日プレスリリース http://www.jst.go.jp/pr/announce/20100618/index.html)。

 今回の研究は上記要求項目のうち、i)CMOSという観点から電子だけでなく正孔においても実際に飛躍的な移動度向上は可能か、ii)電子の移動度はもう限界値なのか、あるいはさらに向上可能なのか、iii)サブスレッショールド電流を十分抑えられるのか、という3点に焦点をあて研究を進め、結果的にゲルマニウムは上記の要求項目の実現を可能にする材料であることを強く示すことができました。



※以下、リリースの詳細は添付の関連資料を参照


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