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浜松ホトニクス、MPPCを搭載した高精度で小型な放射線検出モジュールを製品化
高精度で小型な放射線検出モジュールを製品化
当社独自の高感度半導体光検出素子MPPCを搭載
10月1日から放射線計測装置メーカー向けにサンプル出荷開始
当社は、当社独自の高感度半導体光検出素子MPPC(マルチ・ピクセル・フォトン・カウンタ)とCsIシンチレータを搭載した、高精度な放射線検出モジュールの新製品「C12137」を10月1日から可搬型やインライン型などの用途に向けて、国内の放射線計測装置メーカーにサンプル出荷を開始、製品出荷を今年12月に予定しています。
なお、本製品は、9月7日(水)から幕張メッセ・国際展示場(千葉市美浜区)で開催される、分析に関する日本最大規模の展示会「分析展2011」に出展します。
<製品の概要>
本製品は、MPPCと放射線を可視光に変換するシンチレータを組み合わせたガンマ線検出用の放射線検出モジュールです。高感度でエネルギー分解能が高い光電子増倍管と小型で安価な光半導体素子のSi PIN フォトダイオードの両者の特長を併せ持つ当社独自のMPPCを搭載したモジュールで、本製品により放射線検出機能を有する装置の開発が可能となります。
本製品は、MPPCにより放射性物質のエネルギー弁別に必要とされる30keVの低エネルギーのガンマ線計測ができるため、セシウム137やヨウ素131などの放射性物質の判別が可能になります。また、本製品は、13mm×13mm×20mmのCsIシンチレータを採用しているため、検出時間の短縮が期待できます。さらに、計測に必要な信号処理回路などをすべて内蔵し、USBからの電源供給のみで動作するため、各種装置への放射線測定機能の組み込みが容易です。
今後は、スループットの良いインライン測定器向けに、シンチレータの体積や形状変更の要求に対応することも検討しています。
当社は、医療機器向けに培った放射線検出技術による検出器を、半導体生産技術により安価かつ潤沢に供給することで、福島原発事故の放射能に対するより正確な情報が提供され、不要な不安感の解消に役立ちたいと考えております。
<主な特長>
1、高精度で短時間計測が可能な小型装置の開発が可能
MPPCは、当社の半導体製造技術によって生み出された新しいタイプの光半導体素子で、フォトン(光子)を100万倍程度に増倍して極微弱光を検出することができます。半導体光検出素子は小さく薄いため、高精度な測定器の小型化、モバイル化が可能になります。また、放射線測定器の検出効率はシンチレータの大きさに依存し、シンチレータが大きくなれば測定器の検出時間短縮につながります。本製品は13mm×13mm×20mm のCsIシンチレータと組み合わせているため、放射線に対する感度が高く、短時間で精度の高い計測が可能です。
2、放射性物質の判別が可能
MPPCはSi PIN フォトダイオードに比べSNが50倍程度改善され、低エネルギーのガンマ線が計測できるため、放射性物質のエネルギー弁別に必要とされる30keVのガンマ線が計測できます。セシウム137やヨウ素131などの放射性物質から放出されるガンマ線のエネルギーを弁別することで放射性物質の判別が可能になります。
3、測定器に組み込みやすいモジュール
本製品は、計測に必要な信号処理回路やバイアス電源、A/D変換器を、コンパクトな筐体に内蔵し、USBインターフェースでパソコン(Windows 7,XP)に接続することにより、USBのバスパワーで連続動作し放射線計測が簡単に行えます。専用のアプリケーションソフトを開発して携帯型測定器やインライン測定器に組み込むことにより、高精度でありながら小型で取り扱いの簡便な放射線測定機能が実現できます。また、放射性セシウムの放射線検出感度を規定して供給することも可能です。
<開発の背景>
福島原発事故で放射能への不安が高まる中で、放射線測定器の供給不足が伝えられています。放射線測定器には、個人用途から分析用途まで機能や精度が異なる測定器があります。当社は、従来より放射線検出素子として、核種同定定量評価の分析・解析用途とモニタリングなどの環境計測用途には高感度で高エネルギー分解能が要求される光電子増倍管を、学校教育支援用の簡易放射線測定器や個人被ばく管理などの計数のみの用途には小型、安価な光半導体素子のSi PIN フォトダイオードを測定器メーカーに供給してきました。
これらは、いずれもシンチレーション型放射線測定器に用いられる検出素子で、シンチレータの大きさで検出効率が改善します。検出効率が高くなれば、さまざまな分野で放射線の正確な計数を高速で測定することが可能になります。
しかしながら、これまで光電子増倍管とSiPINフォトダイオードの中間にある素子がなく、可搬型高感度検出器や製造現場における受入検査やライン監視、出荷検査などのスクリーニング用などの計数のみの測定にも高感度で安価な検出素子が望まれていました。
●主な仕様
※添付の関連資料を参照
●サンプル出荷開始日 2011年10月1日
●販売目標数量 初年度 3,000台 3年後 10,000台
※製品画像は添付の関連資料を参照