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住友電工、再生可能エネルギーを管理するマイクロスマートグリッド実証システムを開発

2011-06-20

マイクロスマートグリッド実証システムの開発について
〜再生可能エネルギーをスマートに管理し、無駄を少なく効率的に利用〜


 当社はこのほど、太陽光や風力などの再生可能エネルギー発電設備と蓄電池を直流(DC)で連系させたマイクロスマートグリッド実証システムを開発し、大阪製作所(大阪市此花区島屋1−1−3)で、構内試験を開始しました。
 今回開発したマイクロスマートグリッド実証システムは、4種類の発電装置と蓄電池を直流で連系させ、自然由来の不安定なエネルギーと、電力の需要を高度に管理することで、安定的且つ効率的に、各種設備や機器(負荷)に電力を供給することを可能にします。



1.マイクロスマートグリッド実証システムの構成及び特徴等について

【1】 システムの構成

(1)本システムでは、3種類の太陽光発電装置と小型風力発電装置、電力貯蔵用の小型レドックスフロー電池を総長約1kmの直流電力ケーブルで連結し、発電電力は所内一部の照明や家電製品、また超電導電気自動車用充電ステーションでの電力としても活用します。

(2)それぞれの発電電力(合計の最大発電能力は10kW弱)は、まずDC/DCコンバータで直流のまま昇圧し、直流電力ケーブルを経由してレドックスフロー電池に貯蔵、或いはDC/ACインバータで一括して交流に変換し、スマート分電盤、インテリジェント電源タップ(コンセント)を経て上記の負荷機器に供給されます。


【2】 システム全体の特徴等

(1)本システムは、商用電力系統とは連系しておらず、電源は太陽光と風力のみです。後述のエネルギーマネジメントシステムにより、これら不安定な再生可能エネルギーの発電量と消費量を監視・制御し、その変動を蓄電池で吸収することにより、システム全体として最も効率的で、安定した電力利用を実現します。

(2)今回の直流連系方式は、従来の交流(AC)連系方式に比べて、直流から交流への変換回数を低減することができます。直流/交流の変換では、変換機器の動力や変換によるエネルギー損失が発生するため、変換回数の低減は、再生可能エネルギーの効率的な利用に繋がります。また直流送電は、交流送電に比べてケーブルでの送電損失を低減します。
 なお、上記(1)、(2)により、10%程度の省エネ効果が見込めるものと想定しています。

(3)多種多様な再生可能エネルギー発電装置や蓄電池を、ニーズに応じて自在に連結することが可能で、様々な規模の電力系統に適用できます。


2.本システムを構成する機器・装置等について

【1】 発電装置
 発電装置には、市販品2種類の太陽光発電装置と自社開発の集光型太陽光発電装置(CPV)、及び市販の小型風力発電装置を採用しています。
 CPVは、発電素子に特殊な化合物半導体材料を用いていることから、発電効率が市販のシリコンパネルに比べて約2倍であり、また集光パネルを地面から高い位置に設置する構造であり、パネル下のスペースも活用できるなど、次世代の太陽光発電装置として期待されています。
 今回開発したCPV(出力 1kW)では、当社グループの材料技術を活用するとともに、従来のCPVに比べ、パネルの薄型化・軽量化を実現しました。

【2】 蓄電池「小型レドックスフロー電池」(容量10kWh)
 再生可能エネルギー発電を利用する電力系統では、その発電量の変動に応じて電力を貯蔵・放出する蓄電池の役割が特に重要になります。
 レドックスフロー電池は、不規則で変動の激しい充放電運転に適し、貯蔵電力量の正確な監視・制御が可能なことから、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの有効活用を目指すスマートグリッドに最適な蓄電池と考えています。市場投入実績を持つレドックスフロー電池について、現在、スマートグリッド用途での本格的な実用化を目指し、製品開発を進めています。

【3】 エネルギーマネジメントシステム
 発電装置・蓄電池と直流電力ケーブルの連結部分に設置するDC/DCコンバータ、負荷機器への供給直前に一括して直流を交流に変換するDC/ACインバータは、それぞれ通信機能付きパワーコントロール機能を備え、中央制御サーバでこれらを制御するというエネルギーマネジメントシステムを構築しています。
 具体的には、有線/無線のハイブリットネットワークを介して、発電量、蓄電量および消費量を収集し、最適な需給バランスが得られるように、電力の流れを管理することによって、消費者の利便性を損なわずに経済メリットも発揮できるように負荷機器の制御を行います。計測データは中央制御サーバで一括管理され、発電・蓄電・消費のリアルタイムの状況や、過去の発電や消費データのトレンドがディスプレイで確認することができます。
 なお、DC/DCコンバータ、DC/ACインバータ、各種負荷機器に効率的に給電するスマート分電盤の制御ユニット、その先に接続されるインテリジェント電源タップは、全て自社開発品です。

【4】 負荷機器(電力の需要側)
 本実証システムにおいて発電した電力は、現時点では照明やTV等の家電製品で消費しますが、子会社である日新電機(株)と共同開発した、超電導電気自動車用充電ステーション用の電力としても活用します。
 本充電ステーションは、市販の電気自動車にも対応できます。

 今後、日照量や風況などの気象条件と発電電力量の関連性を含めてデータを蓄積、解析し、省エネ効果の確認などをはじめ本システムの有効性を約1年間実証するとともに、本システムを活用し、スマートグリッド関連製品の開発を推進していきます。
 当社は、今後のエネルギー政策を注視しつつ、戸建住宅から一定規模のコミュニティレベルまでの多様なニーズに対応し、再生可能エネルギーをベースとした最適なマイクロスマートグリッドシステムを「Ingenious Power System」のキャッチフレーズで提案していきます。


以 上

 *参考画像は添付の関連資料を参照


【用語説明】

※1:スマートグリッド
 電力の流れを供給側・需要側の両方から制御することで電力需給の最適な調整を行える送電網。省エネとコスト削減及び信頼性と透明性の向上を図れる。

※2:直流連系方式
 電力配線網を従来の交流ケーブルに替えて直流ケーブルで連系して形成する方式。直流連系により、ケーブルや電力変換機器でのエネルギー損失を低減することができる。

※3:集光型太陽光発電装置(CPV)
 発電素子にレンズ等で集光させた高密度の太陽光を入射させることによって、小面積の発電素子でエネルギー変換をする太陽光発電方式。

※4:レドックスフロー電池
 バナジウム等のイオンの酸化還元反応を利用して充放電を行う蓄電池。充放電を行うセルの部分と金属イオン電解液を蓄えるタンクから構成され、長寿命、安全・安定という特長を持つ。風力発電などの不安定な電力の平準化性能に優れ、メガワット級の大型蓄電池として期待される。

※5:エネルギーマネジメントシステム
 発電設備と蓄電設備の機能を最適に管理・制御することで、省エネ効果の発揮や電力コストの低減を図る。たとえば、電力消費が少なく低コストの夜間電力を貯めておき、電力が逼迫してコストも高い昼間にそれを利用して系統からの電力消費の平準化(ピークカット)や、電力コストの低減を図ることが可能。また、電力消費を含む各種情報をリアルタイムで見える化し、利用者の生活パターン改善にも活用できる。

※6:コンバータインバータ
 コンバータは交流電力を直流電力に変換、或いは直流電圧を変化させる装置。インバータは直流電力を交流電力に変換する装置。電力系統を構成する上で不可欠で、システム全体の電力効率を決める重要な装置。

※7:スマート分電盤/インテリジェント電源タップ
 分電盤は交流電力を各種の利用目的に応じた配線系統に分けて給電する装置で、それぞれの給電電力の上限値を多数のブレーカによって管理している。スマート分電盤は、これに多様なセンサーや通信機能を付加し、電力消費量をリアルタイムで計測し中央制御サーバへ送信する機能を持つ。インテリジェント電源タップは、コンセント毎に計測した電力消費量を中央制御サーバへ送信し、或いは、中央制御サーバの指示に基づき、ブレーカのオン・オフを行うという機能を持つ。

※8:超電導電気自動車
 2008年に当社が開発した、ビスマス系高温超電導線を用いた超電導モータで駆動する電気自動車。超電導モータで駆動する電気自動車は世界初。

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