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大陽日酸と阪大など、NOxの発生量を抑制する「アンモニア燃焼技術」を開発

2016-11-03

工業炉分野で化石燃料の代替燃料、アンモニアの社会実装に一歩近づく
NOxの発生量を抑制する「アンモニア燃焼技術」を開発


 大陽日酸株式会社、大阪大学 大学院工学研究科 教授の赤松 史光らの研究グループは、アンモニア燃焼の工業炉分野への適用を目指して、共同研究を実施しており、この度アンモニアを燃料として、NOx 注1)の発生を環境基準以下まで抑制し、同時に火炎の伝熱強化を達成する燃焼技術の開発に成功しました。
 これにより、産業分野でのエネルギー消費量のおよそ25%を占める各種工業炉分野に対してアンモニア燃焼を適用させ、CO2の排出量を大幅に削減することが可能となります。
 本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「エネルギーキャリア 注2)」(管理法人:国立研究開発法人 科学技術振興機構【理事長 濱口 道成(◇)】)の委託研究課題「アンモニア直接燃焼 注3)」において実施されました。

 ◇理事長名の正式表記は添付の関連資料を参照

<開発の経緯>
 現在、全世界のエネルギーの80%が化石燃料の燃焼により得られており、燃料輸送、貯蔵、自動車からエネルギープラント、工業炉まで燃焼を用いたエネルギーインフラが社会を支えています。日本国内では年間約14億トンのCO2が排出され、その40%を産業分野が占めています。さらにその25%は素形材産業を支える約40,000基におよぶ工業炉から排出され、さらなる省エネルギー技術や化石燃料に代わる新たな燃料を用いる燃焼技術の開発が急務となっています。
 アンモニアは、燃焼時にCO2を一切排出せず、従来の化石燃料に対する代替燃料の1つと考えることができます。一方で分子式NH3で示されるように窒素を含んでおり、燃焼時に多量のNOxが生成される可能性があります。
 そこで、現行の環境規制をクリアしながら、火炎の伝熱強化を達成する技術の開発に取り組みました。一般的な工業炉で化石燃料を用いる場合、燃焼過程で生成される『すす』と呼ばれる炭素分の微粒子からのふく射 注4)が炉内の伝熱に大きく寄与しますが、燃料とするアンモニアは炭素原子を含まない為に、すすからの固体ふく射による伝熱が期待できませんでした。そこで、酸素富化燃焼 注5)を組み合わせることで、火炎ふく射を強化するとともに、NOxの生成を抑制する燃焼の手法を確立しました(図1〜図3参照)。

<研究の内容>
 大阪大学では、研究試験用バーナを用いた基礎実験と数値計算手法により、アンモニア燃焼における酸素富化適用の有効性について火炎温度上昇およびNOx生成抑制の観点から明らかにすると同時に、アンモニア火炎の伝熱はアンモニア燃焼時に発生する水蒸気からのふく射が支配的であることを示しました。
 大陽日酸では、10kWモデル燃焼炉(写真1、写真2)に適合させるアンモニア専焼 注6)およびメタン混焼 注6)を可能とする酸素富化バーナ 注5)を設計、製作し、それぞれの燃焼における火炎温度や伝熱効率、排出ガス成分などの特性について明らかにしてきました。バーナの燃料に単純にアンモニアを混合して酸素富化燃焼した場合、火炎温度の上昇に伴ってNOx生成量が増加するという課題がありますが、今回の取り組みを通じて火炎温度の上昇によるNOx生成を最小限に抑制するには段階的に炉内の雰囲気を巻き込むことで火炎温度を均一化する多段燃焼と、酸素富化燃焼を組み合わせた燃焼技術が有効であることを見いだしました。この技術により、10kWモデル燃焼炉では酸素富化バーナを用いて火炎ふく射を強化(図1)すると同時にNOx排出濃度を大幅に低減(図2)し、現行の環境基準をクリアするアンモニア燃焼による工業炉運転を実現しました。火炎ふく射の強化に関する検証については大阪大学と共同でアンモニア燃焼のふく射強度 注4)の空間分布計測を行い、酸素富化燃焼を適用することで炉内全体に天然ガスの主成分であるメタン燃焼と同程度以上のふく射強度を実現(図3)することが可能であることを確認しました。
 今回の開発により、素形材産業を支える工業炉に対して従来の化石燃料を用いることなく運転することが可能であり、CO2排出量を劇的に削減する大きな可能性を示しました。
 本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「エネルギーキャリア」(管理法人:国立研究開発法人 科学技術振興機構【理事長 濱口 道成】)の委託研究課題「アンモニア直接燃焼」において実施されました。
 本研究開発の一部は平成25年度JST 戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発(ALCA)の委託研究「エネルギーキャリアとしてのアンモニア高効率利用に関する革新的基盤技術」において行われていました。

<今後の展開>
 工業炉の実生産に適用可能な規模である100kWモデル燃焼炉での火炎ふく射強化手法及び低NOx化手法のスケールアップに関する検証を行い、工業炉における開発目標達成の見通しを得ると同時に、アンモニア燃焼技術の工業炉分野への社会実装を目指します。

 ※参考図・用語解説は添付の関連資料を参照



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