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理研、水中・室温・無触媒で起こるアミド化反応を発見

2016-10-18

水中・室温・無触媒で起こるアミド化反応
−ペプチドの合成や選択的修飾に新しい手法を提供−


■要旨
 理化学研究所(理研)田中生体機能合成化学研究室の田中克典准主任研究員、ケンワード・ヴォン特別研究員らの共同研究チーム(※)は、プロパルギルオキシ基[1]を持つ電気的中性のエステル(プロパギルエステル[1])と疎水性の1級アミン(RNH2)[2]を混ぜ合わせると、水中または有機溶媒中で、触媒を用いずに室温で「アミド結合(−NHCO−)」が形成されることを発見しました。

 ペプチドやタンパク質を構成するアミノ酸をつないでいるアミド結合は、薬剤や高分子などのさまざまな有機分子に欠かせない基本的な構造です。多くの場合、まず縮合剤などを用いて、ハロゲン原子[3]や電子不足状態のアルコキシ基[4]を結合させることで、カルボン酸を酸ハロゲン化物や活性化されたエステルに変換し、続いて1級アミンと反応させることでアミド結合は形成されます。最近では、活性化されていない電子的中性[5]のエステルに特殊な酸または塩基触媒を用いることでアミド結合の形成が可能になりましたが、一般的には電子的中性のエステルとアミンを室温で混ぜても、全く反応しない、アミド結合を形成することはできないと考えられていました。

 今回、共同研究チームは、水中または有機溶媒中で、触媒を用いずに室温でアミド結合を形成する反応(アミド化反応)が起こることを発見しました。ただし、(1)基質のエステルに三重結合を持つプロパルギルオキシ基があること、(2)エステルのα位にアミノカルボニル基があること、(3)反応させる1級アミンには直鎖で疎水性の置換基があること、の3条件が揃った場合にのみ効率的に反応が進行しました。また、計算化学の手法によって、この反応が起こるメカニズムを突き止めました。さらに、ペプチドの末端を選択的にアミド化反応で修飾することや蛍光標識することにも成功しました。

 本成果は、ペプチド合成やペプチドの選択的な修飾だけでなく、分子同士を選択的につなぐ新しい方法としての利用が期待できます。

 本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業個人型研究(さきがけ)の研究領域「分子技術と新機能創出」(研究総括:加藤隆史)研究課題名「生体内合成化学治療:動物内での生理活性分子合成」(研究者:田中克典)の一環として行われました。

 成果は、ドイツの科学雑誌『Chemistry−A European Journal』のオンライン版(10月12日付け)に掲載されました。

※共同研究チーム
 理化学研究所 田中生体機能合成化学研究室
 准主任研究員 田中 克典(たなか かつのり)
 特別研究員 ケンワード・ヴォン(Kenward Vong)

 北海道大学大学院 理学研究院
 准教授 前田 理(まえだ さとし)

 *背景などリリース詳細は添付の関連資料を参照





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