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東大など、がんの悪性度を検知する「ナノマシン造影剤」を開発

2016-05-20

がんの悪性度を検知する『ナノマシン造影剤』を開発


■発表のポイント
 ◆がんの内部で、治療抵抗性を持つ悪性度の高いがん細胞が存在する「腫瘍内低酸素領域(注1)」を臨床で普及したMRIにより高感度で可視化できる「ナノマシン造影剤(注2)」の開発に成功しました。
 ◆ナノマシン造影剤は、既存のMRI造影剤より腫瘍のみを検出する特異性や検出感度に優れ、1.5mmの微小な転移したがんを高感度で検出することができました。
 ◆ナノマシン造影剤は、がんの早期発見、転移を見つけること、治療効果を予測すること、治療効果判定への応用が期待でき、将来的に見落としの無い確実性の高いがん診断と治療が可能になることが期待されます。


■発表概要
 ナノ医療イノベーションセンター 片岡一則センター長(東京大学政策ビジョン研究センター 特任教授)と米鵬主任研究員、東京工業大学西山伸宏教授、量子科学技術研究開発機構青木伊知男チームリーダーらは、がん内部の微小環境で悪性度や治療抵抗性に関する「腫瘍内低酸素領域」を高感度でMRIにより可視化できるナノマシン造影剤を開発しました。がん内部の低酸素領域には薬剤が十分に届きにくく、また放射線治療の効果も低くなるなど治療への抵抗性を示し、より悪性度の高いがんに変化して転移を引き起こす原因領域とされ、注目されています。開発したナノマシン造影剤は、がん組織の微小環境を検知して、MRIの信号強度を増幅するこれまでに無い機能を有しており、既存のMRI造影剤よりも優れた腫瘍特異的イメージングを可能にすることを研究チームは明らかにしました。また、ナノマシン造影剤を利用することにより、直径わずか1.5mmの肝臓へ転移した微小な大腸がんを高感度で検出することにも成功しています。このようにナノマシン造影剤は、臨床で広く利用されている生体検査と比べて極めて低侵襲的で、体内のあらゆる臓器・組織に適用できる「イメージングによる病理診断技術」としての実用化が期待されます。また、ナノマシン造影剤は、治療において、治療前の効果の予測や治療後の迅速効果判定にも応用でき、将来的には、見落としの無い確実性の高いがん診断を可能にし、先手を打った、より確実な治療が可能になるものと期待されます。


■発表内容
 MRIは、放射線を使わず、磁石により体内を画像化する体に優しい診断装置です。高解像度の断層イメージングが可能で、国内で6000台程度が稼動するなど広く普及しています。日本国民の死因の第一位である悪性腫瘍(がん)のMRI診断においては、高感度化、がん組織の検出力(特異性)の向上、診断情報の高度化(微小環境の変化など)が望まれており、そのための技術開発が世界中で行われています。MRI装置の開発が進められる一方で、安全で、より高機能な造影剤の開発が、近年強く求められています。このような背景において、研究チームは、生体に対して安全で、がん組織での低pH環境に応答して溶解する「リン酸カルシウムナノ粒子」にMRI造影効果を有するマンガン造影剤を搭載したナノマシン造影剤を開発しました。このナノマシン造影剤は、造影剤を内包した内核が、生体適合性に優れた高分子材料の外殻で覆われています。ナノマシン造影剤は、血流中の環境(pH7.4)では安定ですが、腫瘍内の低pH(6.5−6.7)においてpHに応じてマンガン造影剤をリリースします。加えて、ナノ粒子から放出したマンガン造影剤が、がん組織でのタンパク質と結合することによって、信号が約7倍に増幅する性質があります。これらの結果より、ナノマシン造影剤は、腫瘍の内部のpH(6.5−6.7)の僅かな変化に応答して、MRI信号を変化させる特性を有するものと研究チームは考えました。
 MRIは、放射線を使わず、磁石により体内を画像化する体に優しい診断装置です。高解像度の断層イメージングが可能で、国内で6000台程度が稼動するなど広く普及しています。日本国民の死因の第一位である悪性腫瘍(がん)のMRI診断においては、高感度化、がん組織の検出力(特異性)の向上、診断情報の高度化(微小環境の変化など)が望まれており、そのための技術開発が世界中で行われています。MRI装置の開発が進められる一方で、安全で、より高機能な造影剤の開発が、近年強く求められています。このような背景において、研究チームは、生体に対して安全で、がん組織での低pH環境に応答して溶解する「リン酸カルシウムナノ粒子」にMRI造影効果を有するマンガン造影剤を搭載したナノマシン造影剤を開発しました。このナノマシン造影剤は、造影剤を内包した内核が、生体適合性に優れた高分子材料の外殻で覆われています。ナノマシン造影剤は、血流中の環境(pH7.4)では安定ですが、腫瘍内の低pH(6.5−6.7)においてpHに応じてマンガン造影剤をリリースします。加えて、ナノ粒子から放出したマンガン造影剤が、がん組織でのタンパク質と結合することによって、信号が約7倍に増幅する性質があります。これらの結果より、ナノマシン造影剤は、腫瘍の内部のpH(6.5−6.7)の僅かな変化に応答して、MRI信号を変化させる特性を有するものと研究チームは考えました。
 今回得られた結果に関して、重要なこととして、臨床で最も広く普及している、比較的安価な低磁場1テスラMRIにより得られたものであり、高価で導入台数の少ない高磁場MRIを必要としないことが挙げられます。本ナノマシン造影剤は、低磁場のMRI装置において、特に優れた信号上昇を示すことも示されています。ナノマシン造影剤は「いつでも、どこでも、だれでも」利用でき、病変部位の検出の高感度化と診断情報の高度化を可能にする革新的MRI造影剤として今後の展開が期待されます。
 なお、本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の支援によって行われました。


■発表雑誌
 雑誌名:「Nature Nanotechnology誌」(オンライン発行:5月16日)
 論文タイトル:A pH−activatable nanoparticle with signal amplification capabilities for non−invasive imaging of tumour malignancy
 著者:Peng Mi,Daisuke Kokuryo,Horacio Cabral,Hailiang Wu,Yasuko Terada,Tsuneo Saga, Ichio
 Aoki*,Nobuhiro Nishiyama*,Kazunori Kataoka*
 (*責任著者)
 DOI番号:10.1038/NNANO.2016.72


【Nature Nanotechnologyについて】
 Nature Nanotechnologyは、Nature Publishing Groupが発行しているナノテクノロジーに関する専門誌で、2006年に創刊されました。インパクト・ファクターは34.048(2015年発表)でナノサイエンス・ナノテクノロジーの分野では1位の学術誌として高い評価を得ています。
 参考URL:http://www.nature.com/nnano/index.html


 ※用語解説・図1〜図3は添付の関連資料を参照




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