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東京商工リサーチ、白物家電関連メーカーの業績動向調査結果を発表

2016-03-24

〔特別企画〕
白物家電関連メーカー業績動向調査
〜海外企業が主導の業界再編が動き出す〜


 数年前まで世界に冠たる白物家電メーカーが国内で切磋琢磨していた。だが、わずか数年で新興国を中心に低価格商品が市場を席巻し、国内の白物家電メーカーは淘汰の波にもまれている。
 2014年度(2014年4月期−2015年3月期)の白物家電関連メーカー39社の売上合計は3,984億1,300万円で前年度より5.5%増加した。2014年度の増収企業は22社で、構成比56.4%と前年度より15.3ポイントアップし、売上高10億円未満の61.5%が増収を達成した。しかし、売上高10億円以上の減収企業が53.8%と増収を上回り、グローバルの戦いを挑む大手中堅が売上高を伸ばせなかった。
 国内市場は人口減少や海外製品との低価格競争が起こっている。日本電機工業会(JEMA)の発表でも2015年(1−12月)の白物家電の出荷額は2兆2,043億円と前年比2.8%減少。また、大手メーカーでは2016年3月期第3四半期までにおいて白物家電を含むセグメントも減収が多いなど環境は厳しさを増す。東芝は白物家電事業を中国の美的集団へ売却することを含めた再編を進めており、低コスト生産など優位にあるアジア企業を中心とした業界再編が動き出した。

 ※白物家電関連は、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、炊飯器、扇風機、エアコンなどに限定。主業種が1.「その他の民生用電気機械器具製造業」、2.「衣料衛生関連機器製造業」、3.「ちゅう房機器製造業」、4.「空調・住宅関連機器製造業」の4業種とした。

 ※白物家電および白物家電の完成品に近いメーカーをTSR企業データベース398万社から抽出し、3期連続で業績比較が可能な39社を対象に分析した。主業種で抽出しており、東芝やシャープなど大手電機メーカーは含まない。


■業績 増収傾向が続く
 白物家電関連メーカー39社の2014年度(2014年4月期−2015年3月期)の売上高合計は3,984億1,300万円(前年比5.5%増)、税引き後当期利益合計は151億7,000万円(同19.1%増)と増収増益だった。
 2014年度は円安で資材高騰の影響が懸念されたが、増収でコスト上昇をカバーした格好となった。

 *グラフ資料は添付の関連資料を参照


■売上高別 2極化が鮮明
 白物家電メーカー39社の売上高は、1億円以上5億円未満が13社(構成比33.3%)で最多だった。次いで、1億円未満12社(同30.7%)、100億円以上8社(同20.5%)の順。
 5億円未満の構成比が64.1%を占め、二極化が鮮明になっているが、小・零細規模メーカーの商品開発力が支えている側面が窺える。


■増収企業数が56.4%
 白物家電メーカー39社の2014年度の売上高は、増収22社(構成比56.4%)と過半数を占めた。2014年度の売上高10億円以上は13社中、増収は6社、減収は7社と伸びを欠いた。一方、同10億円未満は26社中、増収16社、横ばい及び減収は5社と小規模ほど増収企業が多かった。

 *表資料は添付の関連資料「表資料1」を参照


■増益企業が56%を占める
 39社の2014年度の利益は、増益が22社(構成比56.4%)だった。一方、減益は12社(同30.7%)、横ばいが5社(同12.8%)。増益企業の構成比は10.2ポイントアップし、好調ぶりが目立った。

 *表資料は添付の関連資料「表資料2」を参照


■主な白物家電関連メーカー 富士通ゼネラルは海外で伸ばす
 白物家電関連メーカーでは、富士通ゼネラルが空調を主体に、国内での消費増税後の駆け込み需要の反動減を海外市場で補てんして増収に繋げた。また、象印ファクトリー・ジャパンは、内需に加え、中国人観光客向け高級炊飯ジャーが堅調で増収となった。

 *表資料は添付の関連資料「表資料3」を参照


■主な大手家電メーカーのセグメントの売上推移 東芝とシャープは大幅減
 今回の調査では対象外だが、主な大手家電メーカーでは白物家電を含むセグメント別の売上高(2015年4月〜12月)が三菱電機を除き、減収となった。
 三菱電機は国内外の空調機器、冷蔵庫が好調だった。白物家電事業の売却が報じられた東芝、経営再建中のシャープは大幅に落ち込んだ。パナソニックは2月3日、2016年3月期連結通期業績予想で中国でのエアコン事業の落ち込みなどから売上高を下方修正した。家電大手メーカーは、国内消費動向の変化、中国の景気減速などが白物家電の業績下押しにつながっているようだ。

 *表資料は添付の関連資料「表資料4」を参照


 リーマン・ショック後、不況や円高で海外から低価格製品が流入し白物家電メーカーは苦境に立たされている。今回の調査で、円安の中で独自技術を活かして業績が改善している中小企業も多いことがわかったが、人口減少で国内の家電市場は縮小が見込まれている。さらに、新興国のメーカー各社のデザイン力や技術進歩は目覚ましく、国内メーカーは深刻な競争に晒されている。
 国内メーカーの技術力、ブランド力価格競争力は、いまや海外の新興メーカーとの競合を前に優位性を失い、業績悪化を招いている。そこに豊富な資金力を背景に、国内メーカーの技術やブランドを狙う海外企業が出現している。2012年に旧:三洋電機の白物家電事業を中国のハイアール(海爾集団)が買収し、最近では経営再建中のシャープはEMS(受託生産)で世界最大手の鴻海精密工業(台湾)の出資受け入れを決定、再建を目指すことになった。また、東芝も白物家電事業を中国企業の美的集団への売却を基本合意したと公表するなど、低コスト生産で世界を席巻しているアジア企業主導の業界再編が動き出した。
 中小メーカーは、ニッチ市場で付加価値を高め、活路を見出すことは可能だろう。大手メーカーは省エネや高付加価値製品で需要喚起を狙うが、高コスト体質で下請けや材料調達に多くの課題を抱えている。国内メーカーの多くは内需だけでなくグローバル市場でも厳しい価格競争に巻き込まれており、白物家電メーカーが生き残れるか、これから厳しい時代を迎えている。



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