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野村総研、ASEANでの社会・ICTインフラビジネス動向分析と事業機会の検討成果を発表
アジア地域(ASEAN)における社会・ICTインフラビジネスの動向と事業機会
〜第1回目の検討の成果を公表〜
株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役:嶋本正、以下「NRI」)は、このほど、ASEANを対象とした社会インフラ、ICT(情報通信技術)インフラ関連の主要市場に関する動向分析と日本企業の参入に向けた検討を行いました。今後、数回に分けて成果発表を行う予定です。
近年、ASEANでは、シンガポールに続く成長が見られるマレーシア、タイ、インドネシアにおいて、市場が質的に成熟化したことにより、社会インフラ分野での急速な市場成長が顕在化しています。ベトナム、ミャンマー等においても、ODAだけではない自立した市場が萌芽しつつあり、日本企業が取り組みを強めるタイミングが迫りつつあります。
NRIは、ASEANにおける日本企業の事業機会を明らかにするために、社会インフラ市場(エアライン・空港、都市内交通、医療など)と、ICTインフラ市場(データセンター、決済・電子マネー、セキュリティ、放送、クラウドなど)に関する現状と各国の特徴や相違点を整理しました。第1回である今回は、社会インフラ市場全般に関してと、ICTインフラ市場からは「データセンター」「決済・電子マネー」を対象に、市場動向と日本企業にとっての事業機会をまとめました。
■社会インフラ市場全般
<市場動向>
日本政府のインフラ輸出戦略によれば、2020年までに世界で約30兆円(2013年の3倍)の受注が目標として掲げられています。日本企業にとって、相対的に有望とされているASEANのインフラ市場は、2020年までに約1兆ドル(約118兆円(*1))規模の需要があるとの予測があり、分野的には「交通分野」「エネルギー分野」が今後伸びると見られます。ASEANが他の地域に対する競争力を確保するためには、2020年までに各国合計で6000億ドル(約71兆円)の投資が必要という、アジア開発銀行による見解もあります。
<日本企業にとっての事業機会>
中国企業や現地企業など、新たなプレーヤーが参入しつつあるこの市場で、日本企業が勝ち残っていくためには、対象国を取り巻く大きな環境変化(メガトレンド)への対応を先導し、日本企業が提供する商品・サービスを現地に合わせることや現地の人材育成を官民連携して行う、新たなグローバルアライアンス体制が必要です。押さえるべきメガトレンドとそれに合わせた事業機会の例として、インドネシアのエアライン整備と空港建設があります。島間交流人口の増加が予想される同国では、マカッサルのようなリージョナルハブ空港が多数建設され、それらを結ぶリージョナルエアラインが整備される見込みです(図1)。
■ICTインフラ市場:(1)データセンター市場
<市場動向>
シンガポールを筆頭とするASEAN各国のデータセンター市場は、タイ、マレーシアなどでの急速な立ち上がりや、インドネシアでの建設ブーム、ベトナム、ミャンマーでの商用データセンター施設の開設など、急激な変貌をとげつつあります。2013年から2016年までの3年間で、日本市場における増分と同規模の、約40万m2の建設需要が期待されます(図2)。
<日本企業にとっての事業機会>
日本企業は、急速な市場の立ち上がりをフォローするだけでなく、熱帯地域のデータセンターにおける独自ニーズ(例:空調方式や耐熱設計等)を意識して、現地パートナーの開拓、工業団地やIT集積プロジェクトへの参画を進める必要があります。
■ICTインフラ市場:(2)決済・電子マネー市場
<市場動向>
交通系プリペイドカードや携帯電話を利用した送金サービスなど、ASEANは多様な決済手段・電子マネーが競い合う世界の展示場となっており、急速な成長が見込まれます。クレジットカードや銀行ATMなどの本格普及と、時期を同じくして登場した電子マネー市場において、さまざまなプレーヤーが参加しており、2020年には、ASEANの非現金決済金額の合計は、日本と同規模の約3兆ドル(約354兆円)に達すると予想されます(図3)。
<日本企業にとっての事業機会>
日本企業は、流通や鉄道など、様々な電子マネー提供事業への参画だけでなく、域内全域での共通インフラ構築なども含めて取り組んでいくことが期待されています。
NRIは、今後も現地の調査や定期的な情報発信を通じて、日本企業のASEANへの進出を支援していきます。
*1:1ドル=118円で換算
■参考
※図1〜図3は添付の関連資料を参照