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静岡大など、光合成反応の場を作る膜脂質の機能を解明

2014-09-08

光合成反応の場を作る膜脂質の機能を解明
〜光合成膜脂質のこれまでの常識を覆す〜


 静岡大学の粟井光一郎准教授ら研究グループは,光合成反応を行う光合成膜に普遍的に存在するガラクト脂質が,これまでの常識と異なり光合成に必須ではないことを明らかにしました。

<ポイント>

 ▲植物や藻類などの光合成を行う生物では,光合成膜は主に糖の一種であるガラクトースを持つ脂質(ガラクト脂質)でできており,ガラクト脂質は光合成膜に必須であると考えられてきた。

 ▲しかし、その常識は下記の成果により覆された。
 ・シアノバクテリアのガラクト脂質合成に関わる糖変換酵素遺伝子mgdEを世界で初めて同定し,mgdE遺伝子破壊株を作成した。
 ・このmgdE遺伝子破壊株では,光合成膜中のガラクト脂質がなくなり,代わりにグルコースを持つ脂質に置き換わっていたが、光合成活性や光合成膜の構築に大きな異常はなかった。

 ▲本成果により、光合成膜の機能理解の進展,エネルギー生産の効率化への寄与が期待される。

 植物や藻類,シアノバクテリア(注1)などの酸素発生型光合成をする生物では,光合成反応の場である光合成膜(注2)は,ガラクト脂質(注3)でできています。植物では脂質の骨格にガラクトース(注4)を転移してガラクト脂質を合成するのに対し,シアノバクテリアでは脂質の骨格に一度グルコースを転移した後,ガラクトースに変換して合成することが知られています。
 粟井准教授らは,これまで不明であったグルコースからガラクトースに変換する酵素の遺伝子mgdE(注5)を明らかにし,その遺伝子破壊株(注6)を作成しました。遺伝子破壊株では,ガラクト脂質の代わりにグルコースを持つ脂質が蓄積していましたが,光合成膜が形成され,光合成活性も維持していることがわかりました。このことは,ガラクト脂質が光合成膜に必須ではないことを示しています。
 今回の発見は,ガラクト脂質が光合成に必須であるという,これまでの常識を覆す結果であり,光合成膜の機能解明に大きな進展をもたらす成果です。今後,光合成に必須のタンパク質群の構造や安定性に膜脂質が与える影響を明らかにすることで,光合成システムの精密な理解を促進し,エネルギー物質生産の効率化に役立つことが期待されます。
 本研究は,東京大学佐藤直樹教授,東京工業大学の太田啓之教授と共同で行ったものです。
 本研究成果は,米国科学アカデミー紀要(PNAS)のオンライン速報版で2014年9月1日の週(米国東部時間)に公開される予定です。


 本成果は,以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
 戦略的創造研究推進事業個人型研究(さきがけ)
 研究領域:「藻類・水圏微生物の機能解明と制御によるバイオエネルギー創成のための基盤技術の創出」
      (研究総括:松永是東京農工大学学長)
 研究課題名:「ラン藻ポリケチド合成酵素を用いた脂質生産」
 研究者:粟井光一郎(静岡大学大学院理学研究科生物科学専攻准教授)
 研究期間:平成24年10月〜平成28年3月

 JSTはこの領域で,藻類・水圏微生物には,高い脂質・糖類蓄積能力や多様な炭化水素の産生能力,高い増殖能力を持つものがあることに着目し,これらのポテンシャルを活かした,バイオエネルギー創成のための革新的な基盤技術の創出を目指しています。

 ※以下、研究の背景と経緯などリリース詳細は添付の関連資料を参照


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