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東北大、長時間テレビ視聴が小児の言語性知能などに悪影響を与えることを発見

2013-11-26

長時間テレビ視聴が小児の高次認知脳領域の発達性変化や言語性知能に悪影響を与えることを発見
〜発達期の小児の長時間のTV視聴には一層のケアを喚起〜



<要旨>
 東北大学加齢医学研究所・認知機能発達(公文教育研究会)寄附研究部門(川島隆太教授)は、MRI等の脳機能イメージング装置を用いて、健常小児の脳形態、脳血流、脳機能の発達を明らかにすると共に、どのような生活習慣が脳発達や認知力の発達に影響を与えるかを解明しています。
 この度、同部門の竹内光准教授・川島隆太教授らの研究グループは、小児の縦断追跡データを用いて、TV視聴習慣が数年後の言語機能や脳形態の変化とどう関連しているかを解析し、長時間のTV視聴が、脳の前頭極を始めとした高次認知機能領域の発達性変化や言語性知能に悪影響を与えていることを明らかにしました。今回の知見により発達期の小児の長時間のTV視聴には一層の注意が必要であることが示唆されます。

 脳画像解析、大規模なデータ、数年の期間をおいた縦断解析といった手法を用いてTV視聴の小児における言語機能などへの悪影響の神経メカニズムを新たに明らかにした点などから、従来にない画期的な研究成果として、英国神経科学雑誌Cerebral Cortexに採択されました。論文は2013年11月20日に電子版が発行される予定です。


1.研究の背景
 乳幼児や小児におけるテレビ視聴が、認知機能、とくに言語機能、行動、学業成績といった指標を長期的に低下させることが数多くの横断心理学研究や縦断心理学研究により明らかにされてきました。
 一方、これまでの研究において脳のMRIを用いて、健常の小児が発達の中期以降に神経回路の刈込みと呼ばれる現象が背景にあると考えられる灰白質量の減少を示すこと、脳の前頭極とよばれる領域をはじめとした高次認知関連領域形態が知能と関連すること、極めて高い知能が発達におけるそれらの領域、とくに発達における灰白量の減少をよく示す前頭極領域のより急峻な灰白質の減少などと関連することを示してきました。
 しかし、これらの高次認知機能と関連する領域の発達に、生活習慣がどのような影響を与えるのかは明らかにされていませんでした。
 そこで本研究では、健常小児において、TV視聴の生活習慣が脳形態や言語機能に与える影響を解明することを目的としました。


2.研究成果の概要
 研究参加者は、一般より募集した、悪性腫瘍や意識喪失を伴う外傷経験の既往歴のない健康な小児としました。
 これらの研究参加者は最初にTV視聴を含む生活習慣などについて質問に答え、知能検査をうけ、MRI撮像を受けました。この時点では研究参加者の年齢は5歳から18歳(平均約11歳)に及びました。これらの研究参加者の一部が、3年後に再び研究に参加し、再び知能検査とMRI撮像を受けました。
 まず276名の初回参加時のデータを解析し、TV視聴時間と言語性知能、動作性知能、総知能、脳の局所の灰白質量、白質量の関連を解析しました。次に216名の方の初回参加時と2回目参加時のデータを解析し、初回参加時におけるTV視聴時間が、どのように各参加者の初回から2回目参加時の言語性知能、動作性知能、総知能、脳の局所の灰白質量、白質量の変化を予測していたかを解析しました。これらの解析においては、性別、年齢、親の教育歴、収入といった種々の交絡因子を補正しました。
 これらの解析の結果、初回参加時における長時間のTV視聴時間は、初回参加時から数年後の2回目参加時への言語性知能低下を予測していました(図1)。同様に初回参加時における長時間のTV視聴時間は、初回参加時から数年後の2回目参加時への前頭極領域、運動感覚領域、視床下部周辺領域の発達性変化への負の影響(灰白質体積の減少が少ないこと)と関連していました(図2)。
 また、言語性知能は、上述の同定された前頭極領域において、局所の灰白質量と負に相関していました。


3.研究成果の意義
 今回の成果より、小児における長時間のTV視聴で、脳の高次認知機能に関わる領域が影響をうけ、これが長時間のTV視聴による言語能力の低下と関連することが示唆されました。TV視聴は我々の日常生活において大きな幅を占めるものになっています。TV視聴の乳幼児による悪影響はよく知られ、日本や米国の小児科学会からそれに関する提言がされています。今回の知見により発達期の小児の長時間のTV視聴には一層の注意が必要であると示唆されたと考えられます。
 また、脳画像解析、大規模なデータ、数年の期間をおいた縦断解析といった手法を用いてTV視聴の小児における悪影響の神経メカニズムを新たに明らかにした点などから、従来にない画期的な研究成果と評価されたと考えられ、英国神経科学雑誌の権威であるCerebral Cortexに採択されました。

 ※図1〜2は、添付の関連資料を参照


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