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大成建設、環境に配慮した1,4−ジオキサンの生物浄化技術実証試験を開始
コストを大幅減、1,4−ジオキサンの生物浄化技術実証試験へ
ーCO2排出量の低減も。環境に配慮した浄化技術ー
大成建設株式会社(社長:山内隆司)は、国立大学法人大阪大学及び学校法人北里研究所北里大学と共同で、1,4−ジオキサンで汚染された地下水の浄化技術の開発を進めています(注1)。本技術は、大阪大学が発見した1,4−ジオキサン分解菌を用いた浄化手法であり、従来技術と比較してコストやCO2排出量の大幅な低減が見込めます。
今回、本技術の実証試験を岩手・青森県境の産業廃棄物不法投棄現場において、9月から開始することが決定しました。今後は実証試験を進めることにより本技術を確立し、一日も早い実用化を目指します。
1,4−ジオキサンは、発がん性の疑いがある一方、高い水溶性を示すとともに揮発性や吸着性、生分解性等が低いことから、いったん水中へ放出されると広域に拡散してしまい、除去が困難な物質です。実際に国内の河川や地下水等において1,4−ジオキサンが検出される事例が報告されており、我が国では、各種基準において規制の対象となっています(注2)
1,4−ジオキサンの浄化手法としては、促進酸化法((注3):以下「AOP」)が挙げられますが、本手法は投入エネルギーや処理コストが高くなるといった問題があります。また、対象とする汚染水に1,4−ジオキサン以外の有機物や還元物質が含まれていると、処理性能が著しく低下するといった課題も内包しています。
今回、実証試験を予定している生物浄化技術は、AOPにおけるこれらの問題を解消できる画期的な技術です。
まず本技術は、高価な薬品を必要とせず、投入する電力量も少ないことから、コストを大幅に削減できます。とりわけランニングコストにおいては、AOPの1/10程度まで低減できる見込みとなっています。また、生物を利用した浄化方法であるため、処理に伴うCO2排出量も大幅に低減できます。
さらに、本技術で用いる1,4−ジオキサン分解菌は、重金属類や揮発性有機化合物による阻害を受けにくい特長を有しています。そのため、これらの有害物質を含んだ汚染地下水においても、効率良く1,4−ジオキサンを分解できることから、安定した浄化が期待できます。
今後は、この実証実験で浄化技術を確立し、さまざまな汚染土壌・地下水対策に展開していく予定です。
※浄化技術のイメージは添付の関連資料を参照
(注1)研究事業名:環境省「環境研究総合推進費」
課題名:1,4−ジオキサン汚染地下水の生物浄化可能性の評価診断ツールの開発と浄化戦略の実証
研究期間:平成24〜26年度(3年間)
研究実施者:大阪大学(研究代表者)、北里大学、大成建設
(注2)国内の1,4−ジオキサンに関する主な規制
・水道水質基準(2004年:0.05mg/L)
・水質汚濁に係る環境基準(健康項目)(2009年:0.05mg/L)
・地下水の水質汚濁に係る環境基準(2009年:0.05mg/L)
・排水基準(2012年:0.5mg/L)
(注3)促進酸化法(Advanced Oxidation Process:AOP)
紫外線、オゾンや過酸化水素などの酸化剤を組み合わせた浄化方法