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東北大など、腎臓病の進展メカニズムの一端と病態の可逆性を発見
腎臓病進展の原因細胞を同定
〜慢性腎臓病の治療法開発に光〜
東北大学大学院医学系研究科医化学分野の山本雅之教授と同分野の相馬友和博士らの研究グループは、腎臓病の進展のメカニズムの一端およびその病態の可逆性を発見しました。
研究チームはこれまでに、造血に重要な役割を果たす腎エリスロポエチン産生細胞を同定し、同細胞が腎臓病で性質を変化させ腎臓病進展の原因である腎線維化に寄与するようになることを明らかにしてきました。しかし、その細胞がどの程度、腎疾患進展に関与しているのか、また、可逆的な改善が可能かということが明らかでありませんでした。
本研究グループは、遺伝子改変動物を用いた実験で、腎線維化の主な原因が同細胞の機能不全、形質転換にあることを見出しました。さらに、形質転換した細胞が炎症性サイトカインを分泌し、微小炎症の悪循環を形成することを同定し、また、炎症シグナルを改善することで、形質転換した細胞が、正常の状態へ可逆的に回復しうることを発見しました。これらのことから、腎エリスロポエチン産生細胞の性質の制御が慢性腎臓病の進展抑制、さらには可逆的回復につながる可能性が示唆されました。
今回の研究成果は、日本国民成人の約8人に1人が罹患する慢性腎臓病の治療法開発において重要な発見と考えられます。
本研究の成果は、JSTのCREST「炎症の慢性化機構の解明と制御に向けた基盤技術の創出」領域の一環として行われ、米国科学誌『Journal of the American Society of Nephrology』のオンライン速報版(米国時間7月5日付:日本時間7月6日)で公開されます。