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東北大、急速眼球運動時の後頭葉視覚中枢の抑制メカニズムを解明

2013-07-02

なぜ目を動かしても視覚イメージはぶれないのか
〜急速眼球運動時の後頭葉視覚中枢の抑制メカニズムの解明〜


【概要】
 東北大学大学院医学系研究科の植松貢講師、ウエイン州立大学ミシガン小児病院小児神経科の浅野英司准教授らの日米共同研究グループは、急速眼球運動時の後頭葉視覚中枢において、神経細胞活動の抑制と興奮が短時間に目まぐるしく起きて視覚を安定化させていることを、ヒトの頭蓋内脳波を用いた解析にて初めて明らかにしました。本研究により、目を急速に動かしても視覚イメージがぶれずに連続した映像として認識できるメカニズムが解明されました。本研究成果は、Neuroimage(電子版)で間もなく公開されます。


【研究内容】
 ある視点から離れた別の視点に視線を移動させる時、眼球の急速な回転(急速眼球運動、サッカード(*1))が起きる。私たちは日常絶え間なくこれを繰り返して外界を見ているが、眼球が回転する短い時間に本来見えるはずのぶれた映像を私たちは認識できない(図1)。この現象は“サッカード抑制“と呼ばれるが、その詳しいメカニズムはまだ十分に分かっていない。我々は小児の頭蓋内脳波を用いて約50−200ミリ秒の急速眼球運動時における高周波数脳波の変化について解析を行い、(1)眼球運動中に後頭葉視覚中枢の神経活動が抑制され、その程度は中心視野を認識する部位(後頭極)において最も強く(図2)、長い眼球運動ほど長く抑制されること(図3)、(2)抑制直後に視覚中枢は急速に興奮し、その程度は内側面において最も大きいこと(図2)、(3)レム睡眠中の急速眼球運動でも視覚中枢の抑制が起きており、眼前の視覚情報の変化というよりも、眼球運動自体が同時に後頭葉抑制を引き起こしていること、を明らかにした。この研究により、急速眼球運動時の後頭葉では部位により異なる抑制と興奮が短時間に目まぐるしく起きることによって、視覚イメージをぶれない連続した映像として認識できる、という機序が解明された。例えるならば、10分の1秒単位でアクセルとブレーキを同時に使いこなし、よどみなく自動車を走らせるような技術を、我々の大脳の視覚野が自然に持っている、ということができる。これは、ヒトにおけるサッカード抑制を初めて直接証明した研究である。この研究成果は、アメリカの医学雑誌Neuroimage電子版に間もなく公開される。
 本研究は、東北大学大学院医学系研究科の植松貢講師と、ウェイン州立大学ミシガン小児病院小児神経科の浅野英司准教授らが、アメリカ 国立衛生研究所(National Institutes of Health)の研究費(NS47550およびNS64033、浅野英司)の支援のもとに共同研究によって行われた。


 ※以下の資料は添付の関連資料を参照
  ・図1.サッカード抑制について
  ・図2.後頭葉各領域における急速眼球運動開始時の神経活動の変化
  ・図3.急速眼球運動の長さと後頭葉神経細胞活動の変化


【用語説明】
 *1 サッカード抑制:急速な眼球運動(サッカード)中、網膜に写った外界の像は激しく揺れ動いているにもかかわらず,その動きの知覚が抑制されてぶれた映像が見えないこと


【論文題目】
 Human occipital cortices differentially exert saccadic suppression:intracranial recording in children.
 掲載雑誌:Neuroimage
  「人の後頭葉は部位ごとに異なったサッカード抑制を引き起こす:小児頭蓋内脳波の解析」

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国立衛生研究所 東北大学 神経細胞 後頭葉 大学院 E電

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