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富士通研究所、変換効率94.8%を実現したサーバー向け2.3kW大容量電源を開発

2012-04-11

世界最高の変換効率94.8%を実現した、サーバ向け2.3kW大容量電源を開発
サーバ、データセンターの省電力化に貢献


 株式会社富士通研究所(注1)は、出力電力容量2.3キロワット(以下、kW)では世界最高となる変換効率94.8%を達成したサーバ用電源を開発しました。

 近年、サーバの高性能化にともない消費電力も増大しており、サーバ内部へ電力を供給する電源の大容量化が求められています。電源は、外部から供給される交流電圧を、サーバの動作に必要な安定した直流電圧に変換しますが、その際に変換損失が発生します。この損失を減らし、電源の変換効率を高めることがサーバ全体の消費電力を削減する上で重要になっています。しかし、電源の大容量化にともない電源内部の損失が増大し、変換効率の高い電源を実現するのが難しくなっていました。

 今回、損失を低減するデジタル制御技術と新回路技術を開発することで、出力電力容量2.3kWのサーバ向け大容量電源では世界最高となる変換効率94.8%を達成しました。本技術により、サーバの消費電力を削減することができ、データセンターの省電力化に大きく貢献します。


■開発の背景
 近年、サーバの高性能化にともない消費電力も増大しており、サーバ内部へ電力を供給する電源の大容量化が求められています。サーバ向けの電源は、外部から供給される交流電圧(200V)を、サーバの動作に必要な安定した直流電圧(12V)に変換します。供給される入力電力に対して、出力電力の差を電源の電力損失と呼び、電源からの熱の発生の原因になります。また、入力電力に対する出力電力の比を効率と呼んでいます。この損失を減らし、電源の変換効率を高めることがサーバ全体の消費電力を削減する上で重要になっています。たとえば、大規模な企業向けのエンタープライズサーバやブレードサーバなどの高性能サーバでは、サーバの消費電力が数十kWにもなり、大容量電源を多数使う結果、その損失は数kWになります。


■課題
 電源は、スイッチ素子である電界効果トランジスタ(FET: Field Effect Transistor)が連携してオンとオフを繰り返し電圧の変換を行っています。電源の大容量化にともない、電源内部のFETのオンとオフにおける以下1と2の損失が増大し、変換効率の高い電源を実現するのが難しくなっています。

1.デッドタイム損失
 電源の回路では、短絡(ショート)を避けるため、一つのFETがオフした後で、もう一つのFETがオンするように、FETのオンとオフのタイミングが制御されます(図1左)。従来の電源では、このタイミングが固定になっていますが、大電流時には、FETのオンとオフの速度が速くなるため、FETの両方がオフとなる期間が長くなり、損失(デッドタイム損失)が増大します。

2.スイッチング損失
 大容量電源では、スイッチ素子のFETに大電流が流れるため電圧降下や熱の発生を抑えるためにFETのサイズを大きくしてオン抵抗値を小さくする必要があります。しかしサイズを大きくした場合、一般的に出力容量が大きくなるため、FETがオンの瞬間に電流が流れ損失(スイッチング損失)が増大します(図1右)。

 *図1は添付の関連資料を参照


■開発した技術
 今回、デッドタイム損失を低減するデジタル制御技術、およびスイッチング損失を低減する新回路技術を開発しました。開発した技術の特長は以下の通りです。

1.デッドタイム損失を低減するデジタル制御技術
 二つのFETのオンとオフのタイミングを調整するデジタル制御技術を開発しました。大電流時はFETのオン、オフの速度が速くなるため、両方のFETのオフ期間が長くなりデッドタイム損失が増大します。この現象を防ぐため、FET2をオフにするタイミングを遅らせ、またFET1をオンにするタイミングを速めます。そうすることで両方のFETのオフ期間を、小電流時と同じように最小にすることが可能となり、デッドタイム損失を低減できます(図2左)。

2.スイッチング損失を低減する新回路技術
 FET内部の出力容量に溜まったエネルギーを再利用する新回路技術を開発しました。FETがオンする前に新回路により出力容量に溜まったエネルギーを抜くため、スイッチング損失を低減することが可能となります(図2右)。本技術は、パワーエレクトロニクス関連の国際会議PEMD(Power Electronics, Machines and Drives Conference)2012において発表を行いました。

 *図2は添付の関連資料を参照


■効果
 開発した技術を実装した最大出力2.3kWの電源を試作しました。出力電力容量2.3kW、出力電圧12Vのサーバ向け大容量電源では世界最高となる変換効率94.8%を達成しました(図3)。本技術により、電源そのものの損失低減により、電源部から発生する熱を抑制することができ、電源を冷やすためのファンの省電力化、電源の小型化にも寄与します。また、サーバの消費電力を削減することができ、データセンターの省電力化にも大きく貢献します。

 *図3は添付の関連資料を参照


■今後
 今回開発した技術を適用した電源を、2014年のサーバ製品に搭載することを目指して、さらなる高効率化、信頼性および安定性の評価を進めて行きます。


■商標について
 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。


以上


<注釈>
 注1 株式会社富士通研究所:代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市

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