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清水建設、土木構造物ににかかる地震の力を半減し工事費も削減できる免震工法を開発
杭頭と構造物底盤を絶縁・分離する新たな免震工法を開発
〜土木構造物に作用する地震力を1/2、基礎工事費を2/3に削減へ〜
清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、杭基礎を採用する土木構造物の免震化を目的に、千葉大学・中井正一教授の指導のもと、杭頭と土木構造物の底盤を絶縁・分離する全く新しい免震工法「杭頭絶縁免震」を開発しました。この工法により、地盤から杭を介して構造物に伝播する地震力を1/2に半減できるとともに、これに伴い杭基礎をスリム化でき基礎工事費を2/3に削減できる見込みです。さらには、杭頭と底盤の複雑な配筋や結合処理が不要になることから、工期短縮も可能です。
杭基礎を採用する構造物では、建築・土木を問わず、杭頭と構造物の底盤とを一体化(剛結合)します。剛結合すると地震力が杭から構造物に直接伝播して、構造物が横揺れするため、杭頭部分に大きな力が作用します。このため、杭の断面積と強度は、地震時に杭頭に作用する力と平常時に杭頭に作用する上部構造物の荷重の両方を勘案し、決定します。
そこで当社は、まさに逆転の発想で杭基礎の概念を覆し、杭頭と構造物の底盤を絶縁・分離する全く新しい免震工法を開発しました。杭頭と構造物の底盤を分離すれば、構造物に伝播する地震力を大幅に削減できることはもちろん、杭頭に作用する力が大幅に小さくなるため杭の断面積と強度を削減できます。
杭頭絶縁免震工法の効果を検証するため、1/30スケールの剛結合模型と杭頭絶縁模型を模擬地盤に配置した試験体を作成し、遠心振動実験を実施、構造物に伝播する地震力や杭頭に作用する力の差異に関するデータを収集しました。その結果、杭頭を絶縁すると上部構造物に伝播する地震力が剛結合の場合の1/2になることを確認できました。また、得られたデータをもとに杭頭絶縁工法を採用した構造物を設計し、動的解析を実施したところ、杭の断面積と強度を最大で2/3に削減できることを確認できました。
本工法は、従来の杭基礎の概念に捉われない全く新しい理論に基づくため、千葉大学の構内に設置した免震効果検証用の構造物3体により、実際の地震に対する免震効果を検証・確認したうえで、プラント基礎などの杭基礎を有する各種土木構造物に展開する考えです。3体の構造物は、実構造物の1/10スケールの模型(82×82×82cm、1.3t)で、1体は剛結合、1体は杭頭絶縁(いずれも杭径10cm、杭長10m)、1体は杭基礎無し(直接基礎)としました。
以 上
※本免震工法の適用対象は土木構造物です。
現時点では、集合住宅をはじめとする建築構造物への適用は想定しておりません。
≪参 考≫
千葉大学構内に設置した構造物3体を下図に示します。
*添付の関連資料を参照