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帝人、リチウムイオン2次電池向けて耐熱性や易接着性などの性能を備えたセパレータを開発
拡大するリチウムイオン2次電池に向けて
革新的セパレータの開発と事業化について
帝人株式会社(本社:大阪市中央区、社長:大八木 成男)は、かねてより、急拡大するリチウムイオン2次電池(LIB)に向けて、従来にはない高性能セパレータの開発に取り組んできましたが、このたび、世界で初めてフッ素系化合物のコーティングにより耐熱性や易接着性などの優れた性能を備え、市場のニーズに幅広く応えることができる革新的なセパレータを開発しました。
※製品画像は添付の関連資料を参照
既に当社は、2007年にメタ系アラミド「コーネックス」をコーティングした高耐熱性セパレータを開発しており、これと合わせ2種類の革新的セパレータを持つことになります。
これに伴い、韓国企業との合弁によるセパレータ生産会社、およびこれらの革新的セパレータを販売するための100%子会社を韓国国内に設立し、今後、「LIELSORT(リエルソート)」のブランド名でLIB用セパレータの生産・販売事業を本格的に展開していくこととしました。
※「LIELSORT」ロゴ画像は添付の関連資料を参照
1.背景
(1)LIB市場は、2020年に8兆円規模の巨大市場に成長すると予想されており、特にタブレットPCや電気自動車が普及することにより、LIBのさらなる高容量化、高エネルギー密度化が見込まれています。
(2)現在、LIBの主なタイプとしては、概してPCや自動車などの大型用途に用いられる円筒型と、タブレットPCやスマートフォンなどの小型用途に用いられるラミネート型があり、それぞれのタイプに応じた高性能化が進められています。
(3)また、LIBの正極と負極を絶縁し、両極間でリチウムイオンを交換する機能を果たすセパレータには、これまでポリエチレン(PE)をはじめとする多孔質フィルムが用いられてきましたが、高容量化、高エネルギー密度化に伴い、LIBの発火事故が散見されることから、より耐熱性の高いセパレータの開発が求められています。
(4)こうした中、帝人は進化する市場のニーズに応えるべくLIB用セパレータの開発に取り組み、2007年にはPE微多孔膜の両面を耐熱性に優れる当社のメタ系アラミド「コーネックス」でコーティングする高耐熱性セパレータを開発し、市場開拓を進めてきました。
(5)さらに、LIBに求められる用途や性能、形状などが多様化する中、帝人は今後急拡大が予想されるラミネート型LIBに対応可能なセパレータの開発を進め、このたび、フッ素系化合物をコーティングする革新的セパレータを開発しました。
2.革新的セパレータについて
(1)メタ系アラミド「コーネックス」をコーティングした高耐熱セパレータは、250℃でも形状を維持し、スポット加熱試験では350℃でも破膜しないことが実証されています。さらに耐酸化性に優れることから、PCや自動車などに用いられる液状電解質を有する円筒型LIBにおいて、これまでにない高容量化、高エネルギー密度化とともに、高い安全性や長寿命を実現することができます。
(2)一方、このたび開発したフッ素系化合物をコーティングしたセパレータは、近年爆発的に普及しているタブレットPCやスマートフォンなどに使用される、ゲル状のポリマー電解質を有するラミネート型LIB向けに開発されたもので、ポリマー電解質との易接着性や耐酸化性に優れることから、安全性を確保しつつ、LIBの高出力化、長寿命化を可能にします。
(3)この2種の革新的セパレータ「LIELSORT」は、その特性から、従来のLIBに比べて出力が20%程度向上するとともに、高電位正極との組み合わせにより、従来のセパレータに比べて数倍程度の長寿命化を実現可能です。
(4)また、帝人グループが長年培ってきた高分子化学技術により、世界初の両面同時コーティング、および従来の5倍以上に相当する高速コーティングを実現し、より効率的な製造を可能としました。
(5)それぞれに高い性能を持つ「LIELSORT」、および帝人グループ独自の世界最先端のコーティング技術を駆使することにより、顧客ニーズに合わせたコーティング剤や製法の選択が可能となり、幅広く網羅した展開が可能となります。
3.生産会社・販売会社の設立
このたびの事業化に際し、LIB生産において世界をリードする韓国の顧客に密着した生産・販売網の構築、および中国進出の足場の確保を目的に、次のとおり韓国に生産会社および販売会社を設立しました。
(1)韓国で有力なフィルム加工会社であり、ロケーションや保有施設、加工技術などに優位性があるCNF社との合弁により、韓国牙山市内にセパレータのコーティング加工および生産を行う「Teijin CNF Korea Co.,Ltd」を設立しました。本年6月より稼働を開始する予定です。
〔Teijin CNF Korea Co.,Ltd 概要〕
本社所在地:韓国 忠清南道 牙山市
代表者:大内 和蔵
設立:2011年10月30日
資本金:70億ウォン(出資比率:帝人78%、CNF社22%)
事業内容:リチウムイオン2次電池用セパレータの製造とそれに関する品質管理
稼働開始:2012年6月(予定)
(2)新設の生産会社やマーケットとの位置関係から、韓国ソウル市内に帝人100%出資の販売会社「Teijin Electronics Korea Co.,Ltd」を設立し、本年1月より営業を開始しました。これにより、LIB市場を牽引するアジアにおいて早期市場展開を図ります。
〔Teijin Electronics Korea Co.,Ltd 概要〕
本社所在地:韓国 ソウル市
代表者:小山 俊也
設立:2011年10月30日
資本金:33億ウォン(帝人100%出資)
事業内容:化学品および電気・電子部品用部材の販売と付帯する全ての事業・活動
営業開始日:2012年1月1日
4.今後の事業展望
(1)LIBセパレータ市場を牽引するタブレットPCや自動車など高容量、高エネルギー密度のLIBに向けて、今後幅広く採用拡大を図っていきます。
(2)既に複数の大手電池メーカーによる認定を受けており、製品の出荷段階にあります。今後、韓国での本格生産を進め、次世代LIB仕様としてデファクトスタンダード化を図ります。
(3)早期に市場拡大することにより、2020年には売上高200億円を目指します。
■参考CNF社 概要
本社所在地:韓国 忠清南道 大田市
代表者:NOH SEUNG IK
設立:2009年8月4日
資本金:40億ウォン
事業内容:LCD、モバイル端末などの液晶用途向けフィルムの表面加工