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帝国データバンク、10月の全国企業倒産集計を発表

2010-11-12

2010年10月報



倒産件数は960件、14ヵ月連続の前年同月比減少
負債総額は5019億5700万円、今年3番目の高水準


倒産件数   960件
前月比     1.8%増
前月      943件
前年同月比  10.3%減
前年同月   1070件


負債総額   5019億5700万円
前月比     63.4%減
前月      1兆3705億9800万円
前年同月比  99.7%増
前年同月   2513億9400万円


※グラフ資料「件数・負債総額の推移」は、関連資料参照


■件数
 ・ポイント 14ヵ月連続の前年同月比減少
  倒産件数は960件(前月943件、前年同月1070件)にとどまり、前月比では1.8%の増加となったものの、前年同月比は10.3%の減少となり、14ヵ月連続で前年同月を下回った。減少率は2010年7月(▲23.8%)以来、3ヵ月ぶりに2ケタを記録した。

 ・要因・背景
  1.建設業(245件、前年同月比▲16.9%)は、北陸、中国など地方圏を中心に大幅減少(▲50件)に転じ、3ヵ月ぶりの前年同月比減少
  2.九州を除く8地域で前年同月を下回るなど、全国的に倒産が減少


■負債総額
 ・ポイント 2ヵ月連続の前年同月比増加、今年3番目の高水準
  負債総額は5019億5700万円(前月1兆3705億9800万円、前年同月2513億9400万円)で、前月比では63.4%の減少となったものの、前年同月比は99.7%の大幅増加。2ヵ月連続で前年同月を上回り、前月に次いで今年3番目の高水準となった。

 ・要因・背景
  1.負債額トップは、日本振興銀行(株)関連の中小企業保証機構(株)で1269億6200万円
  2.負債50億円以上の大型倒産が10件発生し、5ヵ月ぶりの2ケタ


■業種別
 ・ポイント 不動産業除く6業種で前年同月比減少
  業種別に見ると、7業種中6業種で前年同月を下回った。なかでも、建設業(245件、前年同月比▲16.9%)は3ヵ月ぶりに前年同月を下回り、50件の大幅減少となった。また、製造業(134件、同▲13.0%)は10ヵ月連続で前年同月を下回り、8月に並び今年最低を記録した。一方、不動産業(32件、同+14.3%)は10ヵ月ぶりに前年同月を上回った。

 ・要因・背景
  1.建設業…土木工事業(47件、前年同月比▲29.9%、20件減)で大幅減少
  2.製造業…自動車部品製造(1件、前年同月比▲80.0%、4件減)などで減少目立つ
  3.不動産業…賃料収入の減少を受け、貸事務所業(8件、前年同月比+50.0%)が増加


■主因別
 ・ポイント 「不況型倒産」の構成比83.1%、17ヵ月連続で80%台の高水準
  主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は798件(前月788件、前年同月882件)となった。構成比は83.1%(前月83.6%、前年同月82.4%)で前月比は0.5ポイント下回ったものの、前年同月比は0.7ポイントの増加となり、2009年6月の81.2%以降、17ヵ月連続で80%台の高水準となった。

 ・要因・背景
  1.「円高関連倒産」が7件発生、2010年1〜10月の累計は38件(前年同期32件)
  2.製造業の「不況型倒産」は118件、構成比は88.1%で前年同月比4.3ポイントの大幅増加

 倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計


■規模別
 ・ポイント 負債5000万円未満の構成比54.2%、集計基準変更後で最高
  負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産(520件)は、前月を8.8%、前年同月も5.9%上回った。構成比は54.2%(前月50.7%、前年同月45.9%)で、前月比は3.5ポイント、前年同月比も8.3ポイントの大幅増加。2010年7月の51.7%を上回り、集計基準変更後で最高となった。資本金別に見ると、個人経営と資本金1000万円未満が527件発生、構成比は54.9%を占めた。中小企業基本法に基づく中小企業・小規模企業を見ると、中小企業は955件で全体の99.5%、小規模企業も808件で同84.2%を占め、小規模倒産は高水準で推移した。

 ・要因・背景
  1.負債5000万円未満では、建設業(129件)の構成比が24.8%で全業種中トップ
  2.内需低迷の影響を受け、小売、運輸業などで零細業者の倒産が増加


■地域別
 ・ポイント 九州除く8地域で前年同月下回る
  地域別に見ると、9地域中8地域で前年同月を下回った。なかでも北陸(34件、前年同月比▲33.3%)、中国(25件、同▲34.2%)、四国(20件、同▲39.4%)は前年同月比30%を超える大幅減少となった。県別では、長野(6件、同▲71.4%)や岡山(6件、同▲60.0%)などで減少が目立った。一方、九州(54件、同+1.9%)は2ヵ月連続で前年同月を上回った。

 ・要因・背景
  1.北陸は、富山や石川を中心に建設業(6件、前年同月比▲71.4%)が大幅減少
  2.九州は、製造業(8件、前年同月比+300.0%)、不動産業(5件、同+400.0%)で増加


■上場企業倒産
 10月は、東証2部上場の大和システム(株)(負債633億円、大阪府)のほか、大証ヘラクレス上場の(株)ラ・パルレ(同27億500万円、東京都)、東証マザーズ上場のTCBホールディングス(株)(同2億5700万円、東京都)の3件発生した。

 2010年1〜10月の累計は9件にとどまっており、前年同期の19件を大きく下回っている。国内景気はリーマン・ショック後の最悪期を脱したうえ、私的整理手法の広がりもあり、上場企業の倒産は沈静化が続いていた。しかし、8月以降は3ヵ月連続で発生するなど、ここにきてやや変化の兆しが見られる。


■大型倒産
 負債額トップは、日本振興銀行(株)関連の中小企業保証機構(株)(大阪府、民事再生法)の1269億6200万円。次いで、郵政グループのJPエクスプレス(株)(東京都、特別清算)の681億4900万円、東証2部上場の大和システム(株)(大阪府、民事再生法)の633億円が続いた。

 負債50億円以上の倒産が10件(前年同月6件)に増加し、5ヵ月ぶりに2ケタの発生となった。負債100億円以上の倒産は4件(同1件)と、22ヵ月連続で1ケタにとどまっているが、本業不振が長期化するなか、大型倒産の沈静化の流れにもやや変化の兆しが見られる。


景気動向指数(景気DI)
 ・景気DIは31.5で前月比1.2ポイント減、3ヵ月連続で悪化
  2010年10月の景気動向指数(景気DI:0〜100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.2ポイント減の31.5となり、3ヵ月連続で悪化した。

  業界別にみると、「製造」(33.4)や「小売」(29.6)、「サービス」(32.4)など10業界すべてが、2009年12月以来、10ヵ月ぶりにそろって悪化した。

  10月5日、日銀は実質的なゼロ金利や量的緩和などの包括緩和政策の実施を発表したが、円高の進行を食い止めるには至らず、1ドル=80円台に突入し、輸出企業の収益性は厳しさを増した。米内需の低迷など外需の減速も影響して、「電気機械製造」や「輸送用機械・器具製造」が悪化するなど、「製造」は全12業種が悪化した。

 ・国内景気は回復力が急速に弱まり、踊り場局面入り
  また、「小売」では食品や家電、自動車、スーパー・百貨店関連業種などが悪化した。とくに、「自動車・同部品小売」は前月比9.5ポイント減となり、補助金終了前の2010年8月(42.7)と比べ、わずか2ヵ月間で20.3ポイント悪化し、リーマン・ショック時(2008年9月:23.4)を下回る水準に急落。「家電・情報機器小売」もエコポイント削減前の駆け込みにより高価格帯の薄型TVなどが需要増となったものの、消費意欲の低迷により業種全体では悪化した。

  円高や外需の減速に加え、内需が脆弱ななかでの政策支援終了は大きな下押し要因となっている。国内景気は回復力が急速に弱まっており、踊り場局面に入っている。



<今後の見通し>
 ■倒産件数960件、14ヵ月連続の前年同月比減少
  2010年10月の倒産件数は前年同月比10.3%減の960件にとどまり、14ヵ月連続して前年同月を下回った。9月の前年同月比減少率が0.3%とほぼ横ばいとなり、2ケタの減少率が続いた減少基調は終息に向かいつつあったが、再び減少率が拡大した。円高、デフレ、政策支援終了など企業を取り巻く事業環境が悪化するなかでの減少幅拡大は、金融円滑化法と緊急保証という二段構えの金融支援策が依然、効果を発揮していることの表れだ。また、建設業が3ヵ月ぶりに前年同月を下回り、業種別で最大の減少率(▲16.9%)となった点、地域別では九州を除く8地域で前年割れとなり全国的に倒産が減少した点も、減少率拡大の主な要因といえる。 

 ■負債5000万円未満の倒産520件、構成比は54.2%で集計基準変更後最高
  10月の負債総額は5019億5700万円で、今年3番目の高水準となった。月中、日本振興銀行関連の中小企業保証機構が負債1269億6200万円で倒産するなど、負債50億円以上の大型倒産が10件発生し、5ヵ月ぶりに2ケタとなった。上場企業倒産も同じく振興銀関連のラ・パルレ(負債27億500万円)など3件発生した。ここにきて負債数十億の中堅クラスの倒産が相次いでおり、大型倒産沈静化の流れにやや変化の兆しが見られる。一方で、負債5000万円未満の小規模倒産は520件発生し、前年同月比5.9%の増加となった。構成比は54.2%に上昇し、2005年4月の集計基準変更後で最高となるなど、零細企業を取り巻く環境は依然厳しいままだ。

 ■緊急保証制度、2011年3月末で打ち切りへ
  政府は10月8日、円高・デフレ対応のため財政支出約5兆円規模の緊急総合経済対策を閣議決定した。しかし、景気押し上げ効果は限定的との見方が多く、あくまで下支えにとどまるだろう。むしろ倒産動向への影響が今後出てきそうなのは、経産省による緊急保証制度の来年3月末での打ち切り方針決定だ。利用額が11月4日時点で23兆円に達していることから分かるように、この制度によって金融機関からの借り入れが迅速に行われ、当座の資金繰りを乗り切った企業は多い。零細企業向けの小口融資に限り制度は継続され、政府系による借り換えの積極受け入れの措置も取られるが、倒産抑制に効果を発揮してきた2大金融支援策のうちの1つがなくなる影響は小さくない。経済環境の違いもあり単純比較はできないものの、98年10月に創設された特別保証制度の際に、2001年3月の制度終了後1年目となる2001年度の倒産件数が戦後2番目に急増した経緯もあり、今後の推移が注目される。

 ■資金需要増す年末をはさみ、倒産増加に転じる可能性も
  10月の倒産件数は前月時点の予想に反して前年同月比2ケタの減少となったものの、前月を1.8%上回る960件と、水準としては決して低いものではなく、先行きは楽観できない。頼みの金融円滑化法も、借入金の返済を猶予している間に業績が回復しなければ、倒産の先送りを続けるだけだ。来年3月末の期限延長も政府内で検討されているが、仮に1年延長したとして、この間に経済環境が好転する保証はない。むしろ将来展望がない企業の破綻リスクを銀行が過度に抱え込んだツケを、近い将来、倒産増加という形で払わされる可能性が高まっている。当面は、高値圏を続ける円高の影響拡大の行方が最大の注目点となる。円高による輸出不振や海外生産シフト、デリバティブ損失などの影響による「円高関連倒産」は10月に7件発生し(2010年1〜10月の累計は38件)、今後もさらなる増加が予想される。このほか、政策支援の終了などで消費者心理が悪化するなか、高止まりを続ける小売業、サービス業倒産の一段の増加も懸念される。景気の先行き不透明感が増すなか、資金需要が高まる年末をはさんで零細企業の資金繰り破綻が相次ぐおそれもあり、倒産が増加に転じる可能性は依然否定できない。



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