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カルピス、乳酸菌「L.アシドフィルスL−92株」摂取でインフルエンザの感染抑制など確認
乳酸菌「ラクトバチルス・アシドフィルス L−92株」の摂取による
インフルエンザの感染抑制および風邪様症状の緩和作用を確認
〜日本乳酸菌学会2011年大会にて発表〜
カルピス株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:山田藤男)は、当社保有の乳酸菌「ラクトバチルス・アシドフィルス L−92株」(以下「L.アシドフィルスL−92株」)にインフルエンザの感染抑制および風邪様症状の緩和作用があることを鹿児島大学隅田教授および(株)スディックスバイオテックとの共同研究により、ヒト試験で確認しました。この研究成果は7月12日に日本乳酸菌学会2011年大会で発表しました。
1.研究の背景
当社はこれまで、「L.アシドフィルスL−92株」が花粉症・通年性アレルギー性鼻炎の症状緩和作用およびアトピー性皮膚炎の症状緩和作用を示すことを確認してきました。
また、モデル動物においてインフルエンザ症状も抑制する事を確認いたしました。
これらの結果をうけて、「L.アシドフィルスL−92株」の免疫機能を調節する作用についてヒトでの有効性を確認するために、8週間にわたって「L.アシドフィルスL−92株」を含むヨーグルトを食べた方と食べなかった方を対象にそれぞれの冬季におけるインフルエンザウイルスの検査と風邪様症状の観察を行ないました。
2.研究成果の要旨
1)インフルエンザウイルス濃度の評価
まず被験者の唾液中のインフルエンザウイルスの高感度検査による解析を行なったところ、摂取群の被験者に認められたウイルスの濃度が対照群に対して有意に低下している事が分かりました。
2)高熱の発生への影響
加えて摂取期間中の起床時体温の変化の解析から、摂取期間中にインフルエンザ感染を疑わせる38℃以上の高熱を示した被験者の人数が、「L.アシドフィルスL−92株」ヨーグルト摂取群において有意に減少している事が認められました。
◇「ラクトバチルス・アシドフィルス L−92株」顕微鏡写真
※添付の関連資料を参照
3)風邪様症状の自覚症状への影響
摂取期間のアンケートによる自覚症状の回答結果から、「L.アシドフィルスL−92株」ヨーグルト摂取群では、鼻づまりや喉の痛み、せき、悪寒、倦怠感といった風邪様症状が相対的に軽いことがわかりました。
これらの結果から、「L.アシドフィルスL−92株」の摂取がインフルエンザウイルスの感染・増殖に対して抑制的に作用し、風邪様症状の発症を抑制している可能性があることが示されました。
【まとめ】
◇「L.アシドフィルスL−92株」の摂取は、身体の免疫機能を高め、ウイルスなどの病原性微生物に対して抵抗力を高める効果が期待できます。
当社は、今後も「L.アシドフィルスL−92株」の免疫調節機能に関する研究を進め、乳酸菌が与える健康価値の創造を進めていきます。
3.試験内容について
【方 法】
2010年12月28日から2011年2月21日の8週間にわたり「L.アシドフィルスL−92株」を含むヨーグルトを毎日100gずつ食べた被験者(摂取群、111名)とヨーグルトなどを食べないで通常の生活を続けた被験者(対照群、110名)の唾液試料から金粒子を用いた高感度インフルエンザウイルス検査法(注1)により毎週、インフルエンザA型ウイルス濃度を測定しました。また、起床時の体温を毎日記録し、インフルエンザ感染の疑われる38℃以上の発熱を期間中に示した被験者の人数を解析しました。加えて、毎日の生活状況をアンケート形式で回答し、摂取の有無と風邪様の自覚症状の違いを解析しました。
【結 果】
唾液中のウイルス測定から、試験期間(8週間)中に示した最も高いウイルス濃度で集計すると表1のようになりました。濃度によりスコアを乗じて平均値を計算すると摂取群ではウイルス濃度の有意な減少のある事が分かりました。また期間中、初めてウイルスを検出した被験者の経時的な変化を比較すると、対照群の変化との間に統計的に有意な差が認められました。
表1 摂取期間におけるインフルエンザA型ウイルスの濃度と検出者数
表2 摂取期間の体温測定結果
※添付の関連資料を参照
自覚症状における解析からは、「L.アシドフィルスL−92株」ヨーグルト摂取群の被験者は鼻づまりや喉の痛み、せき、悪寒、倦怠感といった風邪の諸症状に関する自覚症状が対照群より軽度になっている事が分かりました。一方でマスクの着用や手洗いの状況などの風邪予防行動については両群間において有意な差は認められませんでした。
【結 論】
これらの結果から、「L.アシドフィルスL−92株」の摂取がインフルエンザウイルスの感染・増殖を抑制し、インフルエンザ感染を疑わせる高熱の発生や風邪様症状を抑制している可能性があることが示されました。「L.アシドフィルスL−92株」の継続的な摂取でインフルエンザウイルス感染とその症状の悪化を緩和する効果が期待されます。
注1/金粒子を用いた高感度インフルエンザウイルス検査法
インフルエンザウイルスと親和性の高い多糖で覆った金ナノ粒子を試験試料(今回は被験者から採取した唾液)と混ぜ合わせるとインフルエンザウイルスを凝集して回収する事ができます。この手法では通常の診断方法の少なくとも100倍以上低濃度のインフルエンザウイルスを凝集して検出する事が可能となり、今回の試験でも極めて低い濃度のウイルスを検出する事ができました。
注2/加重平均スコア
今回測定したウイルス濃度のように陽性、擬陽性、擬陰性、陰性の4段階で表現される人数を、陽性は3点、擬陽性は2点、擬陰性は1点、陰性は0点と重み付けをしました。この点数を人数に掛け算して合計値を出し、人数で割ることで平均値を出しています。平均値にすることで2つの分布を考慮した違いが明確になります。
以 上