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東大、転写因子「GATA2」が血管内皮細胞の性質維持に重要であることを発見 

2011-06-15

「転写因子『GATA2』が血管内皮細胞の性質維持に重要であることを発見」 


1.発表者: 
  東京大学先端科学技術研究センター システム生物医学 特任教授 南敬

2.発表概要:
 この度、東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区、中野義昭所長))の神吉康晴特任研究員、南敬特任教授らの研究グループ(血管生物学分野・最先端次世代研究開発支援プロジェクト)は、転写因子GATA2が血管内皮細胞においてその性質維持に重要であること、同遺伝子の機能が失われると血管内皮細胞の一部が別の細胞に形質転換を起こすことを明らかにした。[本研究成果はThe EMBO Journal (Nature Publishing Group) 2011年6月10日電子版に掲載]

3.発表内容:
 このほど、東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区駒場、中野義昭所長)の神吉康晴(かんき やすはる)特任研究員、南敬(みなみ たかし)特任教授らの研究グループ(血管生物学分野・最先端次世代研究開発支援プロジェクト)は、転写因子GATA2が血管内皮細胞においてその性質維持に重要であること、また同遺伝子の機能が失われると血管内皮細胞の一部が別の細胞に形質転換を起こすことを明らかにした。

 転写因子GATA2は、DNAに結合して遺伝子の発現、及び細胞の性質を制御する因子として知られている。GATA2がないマウスでは血管、血球の元になる細胞が増殖できずに早期に死亡することが従来から知られていた。一方で分化した先である血管内皮細胞でもGATA2は発現しているが、その機能は不明であった。

 そこで今回の神吉研究員、南教授らの研究では、まずGATA2に対する抗体を作成し、最先端技術である次世代シークエンサーを用いてGATA2の結合部位を全ゲノム上で明らかにした。また、血管の内皮細胞及び比較対象として用いた血球系細胞での解析より、GATA2は細胞ごとに異なる領域に結合すること、またその結合先はそれぞれの細胞を特徴づける遺伝子であることを明らかにした。

 次に両者の結合の違いが何に由来しているかを探索した。体中の細胞は同じDNAを持ちながら様々な細胞種に分化する過程、あるいは 分化した細胞が iPS 細胞にリセットされる過程においてエピゲノム修飾というものが重要であることが分かっている。エピゲノム修飾は、DNAそのものの修飾、DNAが巻き付いているヒストンの修飾、ヒストンの集合体であるヌクレオソームの構造変化等が知られている。今回の研究では、ヒストン修飾の次世代シークエンサー解析から、GATA2の細胞種ごとの結合の違いは細胞種ごとに異なるヒストン修飾に規定されていることを見いだした。

 また、血管内皮細胞におけるGATA2結合部位は血管でしか発現していない遺伝子座に集積しており、GATA2の発現が落ちると、血管はその性質や機能を維持出来ないばかりか、一部の細胞が間葉系細胞に変化してしまうEndMT (Endothelial−Mesenchymal Transition)という現象が起こることを明らかにした。EndMTは悪性腫瘍転移を促す現象として最近注目されており、今回明らかになったGATA2の腫瘍内血管での解析を進めることで腫瘍転移に対する新たな治療戦略へと繋がることが期待される。

 さらに、次世代シークエンサーを用いた網羅的解析から、血管内皮細胞におけるGATA2の新たな標的因子endomucinを同定した。Endomucinは血管内皮細胞のマーカー遺伝子であり、GATA2と同様に血管新生に重要であることも今回新たに示した。本研究は、GATA2−endomucinという制御が血管の基本的な性質にとって極めて重要であることを初めて示したものとなる。


4.発表雑誌:
 雑誌名:「The EMBO Journal (Nature Publishing Group) 」(2011年6月10日オンライン版)
論文タイトル:Epigenetically coordinated GATA2 binding is necessary for endothelium specific endomucin expression 
 著者:Yasuharu Kanki, Takahide Kohro, Shuying Jiang, Shuichi Tsutsumi, Imari Mimura, Jun−ichi Suehiro, Youichiro Wada, Yoshihiro Ohta, Shigeo Ihara, Hiroko Iwanari, Makoto Naito, Takao Hamakubo, Hiroyuki Aburatani, Tatsuhiko Kodama, and Takashi Minami 



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悪性腫瘍 東京大学 目黒区 ゲノム DNA 駒場 腫瘍

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