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免疫生物研究所、遺伝子組換えカイコを用いたヒトフィブリノゲンの生産に成功
遺伝子組換えカイコを用いたヒトフィブリノゲンの生産成功について
この度、当社及び日本製粉株式会社は、遺伝子組換えカイコを用いたヒトフィブリノゲンの生産に成功いたしました。本研究は、農林水産省の委託プロジェクト研究「動物ゲノムを活用した新市場創出のための技術開発」において、独立行政法人農業生物資源研究所との共同研究として実施したものです。
【概 要】
当社及び日本製粉株式会社は、遺伝子組換えカイコを用いて、血液凝固活性を有する組換えヒトフィブリノゲンを繭に効率的に生産する技術研究開発に成功いたしました。
フィブリノゲンは、血液凝固因子の一つである糖タンパク質です。ヒトフィブリノゲン及びそれを主成分とする製剤は、現在、止血用の医薬品等へ利用されております。しかしながら、その製造原料はヒトの血液が用いられているため、C型肝炎ウイルス等の混入リスクが全く無いとはいえません。そのため、動物培養細胞や酵母等を用いて安全な組換えヒトフィブリノゲンの生産が試みられてまいりましたが、効率的な生産技術はいまだ確立されていないのが現状です。
これまでに、当社及び日本製粉株式会社は、遺伝子組換えカイコの繭に可溶性のタンパク質を効率的に分泌させる生産系を開発し、ヒト抗体やヒト成長ホルモン等の生産を成功させてまいりました。
今回の技術研究開発では、ヒトフィブリノゲンのような複雑な高次構造を有する高分子の組換えタンパク質の効率的生産を目指しました。その結果、高次構造を有するフィブリノゲン分子として、世界で初めて繭に分泌させることに成功し、また繭に含まれる組換えヒトフィブリノゲンを簡便に抽出・精製することにも成功いたしました。さらに、抽出した組換えヒトフィブリノゲンは、明らかに凝固する性質を有することも確認しております。
今後、当社及び日本製粉株式会社は、さらに本組換えヒトフィブリノゲンの詳細な物性解析や生産量向上を目指した技術開発を継続し、カイコで生産したヒトフィブリノゲンを医薬部外品、医薬品、及びその他用途への実用化を目指してまいります。
以 上