イマコト

最新の記事から注目のキーワードをピックアップ!

Article Detail

理研など、患者由来iPS細胞による脊髄小脳変性症の病態を再現

2016-11-08

患者由来iPS細胞による脊髄小脳変性症の病態再現
−小脳プルキンエ細胞変性から病態を理解し、創薬への道を開く−


<要旨>
 理化学研究所(理研)多細胞システム形成研究センター非対称細胞分裂研究チームの石田義人客員研究員、六車恵子専門職研究員らの共同研究グループ(※)は、脊髄小脳変性症[1]の患者からiPS細胞を樹立し、小脳プルキンエ細胞[2]を分化誘導させ、病態の一部を再現することに成功しました。また、疾患由来の小脳プルキンエ細胞がある種のストレスに対して“脆弱性”を示すことを突き止め、この脆弱性を抑制する化合物の評価系を構築しました。

 遺伝性神経変性疾患の一つである脊髄小脳変性症6型(SCA6)は、小脳神経細胞が選択的に変性、脱落する病気です。現在、有効な治療法は確立されていません。SCA6では、原因遺伝子の「CACNA1A」でグルタミン酸をコードするCAGリピート配列[3]が異常に伸長し、小脳プルキンエ細胞内にグルタミン酸が蓄積することが知られています。しかし、神経変性に至るメカニズムは明らかになっていませんでした。

 六車専門職研究員らは、2015年にヒト多能性幹細胞[4](ES細胞およびiPS細胞)から小脳神経細胞を作製する方法を開発しました。今回、その手法を応用し、SCA6患者の皮膚細胞あるいは血液細胞から樹立したiPS細胞を小脳プルキンエ細胞へと分化誘導して病態の一部を再現しました。CACNA1Aは、神経細胞に存在するP/Q型Ca2+チャネル[5]のα1サブユニットをコードする遺伝子です。SCA6患者由来の小脳プルキンエ細胞を観察した結果、健常人の同細胞に比べ、P/Q型Ca2+チャネルのα1サブユニットの「Cav2.1[5]」が異常に蓄積していました。また、患者由来プルキンエ細胞では、CACNA1AのC末端がコードする転写因子[6](α1ACT)、およびその標的分子(TAF1、BTG1)の発現が低下していることが分かりました。さらに、細胞にストレスを与えるような特殊な条件下で培養をすると、SCA6患者由来の小脳プルキンエ細胞は高い“脆弱性”を示し、異常な形態が現れました。この形態変化を指標に化合物評価を行ったところ、一部の既存薬にその脆弱性を抑える効果があることが分かりました。

 今回開発した新たな病態モデルによって、これまで不明だったSCA6の病態解明と創薬研究への道が開かれると期待できます。また、患者から樹立したiPS細胞を用いた技術は、他の神経変性疾患の研究への応用が可能と考えられ、今後の疾患研究の進展に貢献する可能性が期待できます。

 本研究は、AMED再生医療実現拠点ネットワークプログラム「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」事業の一環として行われ、成果は米国の科学雑誌『Cell Reports』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(11月1日付け:日本時間11月2日)に掲載されます。

※共同研究グループ
 理化学研究所 多細胞システム形成研究センター
 非対称細胞分裂研究チーム
 客員研究員 石田 義人(いしだ よしひと)(塩野義製薬株式会社 研究員*)
 専門職研究員 六車 恵子(むぐるま けいこ)
 テクニカルスタッフ 西山 あやか(にしやま あやか)

 器官発生研究チーム(研究当時)
 専門職研究員 北島 裕幸(きたじま ひろゆき

 器官発生研究グループ
 グループディレクター(研究当時)笹井 芳樹(ささい よしき)

 広島大学 原爆放射線医科学研究所 分子疫学研究分野
 教授 川上 秀史(かわかみ ひでし)

 京都大学 iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門
 教授 井上 治久(いのうえ はるひさ)

 *本研究成果は、理研、広島大学、京都大学の共同研究による成果であり、塩野義製薬の寄与はありません。石田義人は理研客員研究員として共同研究グループに参加しています。

 ◇リリース詳細は添付の関連資料を参照




Related Contents

関連書籍

  • 死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    詩歩2013-07-31

    Amazon Kindle版
  • 星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    前田 徳彦2014-09-02

    Amazon Kindle版
  • ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    大久保 明2014-08-12

    Amazon Kindle版
  • BLUE MOMENT

    BLUE MOMENT

    吉村 和敏2007-12-13

    Amazon Kindle版