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IHI、放電表面処理技術「MSCoating」がボーイング777用「GE90」エンジンに適用

2016-04-26

画期的な放電表面処理技術「MSCoating(R)」ボーイング777用「GE90」エンジンに適用
〜IHIと三菱電機の共同開発技術 IHIがGEへライセンスを供与〜


 株式会社IHI(本社:東京都江東区,代表取締役社長:満岡 次郎,以下「IHI」)が,三菱電機株式会社(本社:東京都千代田区,執行役社長:柵山 正樹,以下「三菱電機」)と共同で開発した,画期的な放電表面処理技術「MSCoating(R)(マイクロ・スパーク・コーティング,以下「MSC」)」が,IHIがパートナーとして参加する国際共同開発事業である,ボーイング777用「GE90」エンジン部品に適用されました。IHIは,MSCとしては初めてとなる海外企業に対するライセンス契約を,2015年2月にGeneral Electric社(本社:アメリカ,以下「GE」)と締結し,このたび,GEがMSCを用いた修理を開始しました。これに加えて,IHIは,2015年7月に,当該部品を供給するAvio Aero社(本社:イタリア,以下「Avio」)と,受託加工契約を締結しました。

 MSCは,様々な金属部品表面に適用できる放電加工による皮膜生成技術で,安定的に耐摩耗性・耐熱性などに優れた高品質な機能性皮膜(※1)を形成できます。また,装置を生産ラインへ組み込むことも容易であることから,コスト削減が可能です。両社は,1999年に共同研究を開始し,2003年にMSCを開発しました。その後,高い耐久性が求められる航空エンジンを中心にマーケティングを進め,2007年に「CF34」エンジン部品に初めて採用され,運用実績を積み重ねてきました。

 今回のGE,AvioとIHIのこれらの契約により,ボーイング777用「GE90」エンジン部品のうち,Avioが担当する「低圧タービン6段ブレード」にMSCが適用されたことで,従来から用いられていた溶接と比較し,エンジン運用の環境下におけるブレードの耐摩耗性が,大幅に改善されることが期待されています。
 本契約にもとづき,IHIは,GEに対して治具・コーティング用部材を納入するとともに,技術指導を実施しています。一方,三菱電機は専用放電表面処理機をGEへ納入しました。そして,これを受け,GEのMcAllen工場(アメリカ テキサス州)では,本部品に対して,MSCを用いた修理が開始されました。また,IHI 相馬第一工場(福島県相馬市)ではMSCの受託加工を開始しております。

 IHIは,今後も他の航空エンジン部品へMSCが適用されるよう事業を展開していく予定です。また,IHIは,両社で独自開発したMSCを,航空分野のみならずガスタービンや自動車など様々な分野において利用を促進し,世界のものづくりの発展に貢献していきます。

 ※1 機能性皮膜:金属に強度,耐熱,防錆などの機能を持たせるために被覆する膜。


<参考資料>
 【MSC開発の背景】
 従来,航空エンジン等の航空宇宙分野における金属部品のコーティングは,溶接,溶射,メッキ等の方法で皮膜形成されていましたが,加工工程で発生する熱変形,割れや剥離が問題になっていました。そこで両社は,金属やセラミックなどのコーティング成分を含む電極を用いて放電加工することにより,中温から高温までの環境下で,耐摩耗性・耐熱性などに優れた,高品質な機能性皮膜を安定的に形成するMSCを共同開発しました。

 【MSCの原理】
 コーティングさせたい材料の粉末を固めて電極とし,母材とともに絶縁油の中に入れて電圧をかけます。これにより,電極と母材との間にパルス状の放電(毎秒約1万回)を繰り返すことで,電極の材料が母材に移動し溶融積層します。両社の本技術に関する特許は,世界15か国において認定されています。

 【MSCの主なメリット】
 従来,金属の表面にコーティングする主な方法としては,溶接,溶射,メッキなどがありますが,MSCは,これらの加工方法に比べて以下のような様々なメリットがあります。

 [1]母材の変形が極めて小さく,割れない。
  溶接では,溶接部の熱収縮が大きいので,変形や割れが生じる恐れがある。しかし,MSCでは,直径がミクロンレベルの微細なパルス状の放電が,局所的に繰り返し起こることにより,溶融堆積するため,母材の収縮がごく限られた範囲になり,変形が極めて小さく,割れることがない。

 [2]被膜コーティングの剥離がない。
  溶射やメッキは母材の表面に金属が付着しているだけであり,剥離する恐れがあるが,MSCでは,堆積金属が母材と溶融しているため,剥離することがない。

 [3]正確な加工が可能になり,前処理が不要となる。
  MSCは,電極と母材の間で放電する場所にのみコーティングできるため,溶射やメッキでは加工前に必要なマスキング作業が不要となる。

 [4]技能に頼らない安定した品質が確保できる。
  現在の溶接作業は,品質確保のために,熟練技能者が手作業によって実施しているのが実情である。MSC用専用放電表面処理装置を使用することにより,機械的に加工を行うことができるので,熟練技能者に頼ることはなく,現在よりも安定した品質の確保が可能となる。

 [5]小規模な装置のため生産ラインへの組み込みが可能となる。
  溶射やメッキは設備が大規模なため,生産ラインに組み込むことができなかったが,MSC用専用放電表面処理装置は小規模な装置であり,生産ラインへ組み込むことが可能となる。





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