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富士通研究所、生物多様性保全に向けて山梨県でニホンジカの生息数を予測する技術の実証を開始

2016-01-20

生物多様性保全に向けて、山梨県ニホンジカの生息数を予測する技術の実証を開始


 株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、哺乳動物(以下、動物)の平均的な体重と公開されている植生や土地の用途などの情報から、動物の生息可能数を予測する技術を開発しました。今回、開発技術を活用し、食害による被害が年々深刻化しているニホンジカの生息数予測に適用する実証を山梨県森林総合研究所(注2)(以下、山梨県森林研)の協力を得て1月から開始します。

 本実証では、山梨県下の8か所以上の地区で、森林の現状や、ニホンジカが好む植物の分布や移動経路の情報、現地調査に基づくニホンジカの生息数のデータについて、山梨県森林研から提供を受け、予測精度の向上に取り組みます。

 これにより、調査員が立ち入ることが困難な地域についても、予測に基づき柵を設置するなど効果的な対策が可能となり、全国に拡大しつつあるニホンジカによる森林の荒廃や希少な高山植物の食害対策を実現し、多様性に富んだ、豊かな自然の維持に貢献します。


■背景
 生物多様性は、様々な生物がバランスよく存在することで保たれますが、近年、ニホンジカの急激な増加による食害で、高山植物などの希少な野生植物の減少や森林の荒廃が進み、今後さらなる被害の拡大による生物多様性の損失が懸念されています。その対応として、2015年5月に施行された「改正鳥獣法」ではニホンジカを「指定管理鳥獣」に指定して、国に加え都道府県が主体となった対策が進められています。


■課題
 食害への対策には、現地調査により生息数を推定し、分布の拡大を予測することが必要ですが、従来は推定のために調査員を対象となる地域に派遣してサンプリング調査を行っていました。より広域の対策を実施するためには、現地調査の規模が拡大するため、期間や調査員数が増大します。また、そもそも調査員が入るのが困難な地域の生息数をどのように推定するかが課題でした。

 ※図1は添付の関連資料を参照


■開発した技術
 今回、植物の種類や分布を示した植生図、地形図、気象情報などの公開されている情報と、動物の基本的な生態の情報から、現地調査をすることなく生息可能数を予測する技術を開発し、山梨県甲州市の10キロメートル(km)四方の地区で、ニホンジカの生息可能数を予測しました(図2)。植生および土地利用図、地形図から、ニホンジカの生態を想定して、生息に適した生息地、生息に適さない非生息地、生息には適していないが移動に利用できる通路に区分し、通路で連結した生息地を抽出、ニホンジカの生息密度と体重の関係式を当てはめることにより、1km四方に区切った区画ごとの生息可能数を算出しています。

 ※図2は添付の関連資料を参照


■実証の概要
 現地調査員による目撃数や糞の分布など、ニホンジカの生息状態に関する現地調査データを取得し、本技術による予測数と比較、解析を行い、そこで得られた新たな生態などに関する知見を導入して本技術の精度向上を目指します。

 例えば、緩斜面の針葉樹林はすべて生息に適さないと考えられていましたが、甲州地区での事例では、カラマツ林など一部の針葉樹林でもニホンジカの捕食行動が確認されており、実際の生態に合わせて生息地とする植生などの条件を見直す必要があることがわかりました。

 そのために、森林の状況やニホンジカの生態、生息について研究(注3)している山梨県森林研の協力を得て、以下の検証を行います。

 ・目的:本技術でニホンジカの生息分布を予測し、多様性保全対策に利活用する。
 ・期間:2016年1月から2016年9月(予定)
 ・場所:山梨県内の10km四方を8か所以上
 ・内容:実測データなどの情報をもとに、以下の内容を実施して予測精度を向上する。
   (1)ニホンジカの生態を反映した、生息、通路、非生息に対する植生区分などの定義の細分化
   (2)間伐や伐採などによる下草などを含む森林状態の生息への影響の把握
   (3)夏と冬など、季節による植生状態の変化や積雪などの生息への影響の把握

 ※図3は添付の関連資料を参照


■効果
 実際の立ち入り調査が困難な地域においても、本技術によりニホンジカの生息数予測の範囲を広げることが可能となり、広域の予測結果に基づく定住地や移動経路の推測から、効果的に柵を設置するなどの対策が可能となります。


■今後
 富士通グループでは、2009年に「生物多様性行動指針」を策定し、自らの事業活動とともに、社会における生物多様性の保全と、その持続可能な利用を実現するため、当グループのICTを活用して積極的に取り組んでいます。

 本技術を、これまでニホンジカによる食害の被害が表面化しておらず、調査が進んでいない地域についても順次適用していき、より効率的、効果的なニホンジカの被害抑制に向けて本技術の改善を進めていきます。また、ニホンジカ以外の野生獣や外来動物、希少な動物などにも適用範囲を広げていきます。これらを通じて、生物多様性保全に貢献していきます。


■商標について
 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。


以上


■注釈
 注1 株式会社富士通研究所:
 本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐相秀幸。

 注2 山梨県森林総合研究所
 所在地 山梨県南巨摩郡、所長 小林 均。

 注3 ニホンジカの生態、生息について研究:
 平成27年5月発表 山梨県森林総合研究所研究課題成果「ニホンジカの森林生態系に及ぼす影響と適切な管理手法の開発」





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