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帝国データバンク、2014年度の全国企業の財務分析調査結果を発表

2015-12-12

特別企画:全国企業の財務分析(2014年度)
小規模企業、5年ぶり債務超過解消
アベノミクス効果で建設業の収益改善目立つ〜


■はじめに
 2014年度の決算は、一部上場企業を中心に過去最高益をあげた企業が相次いだ。加えて、昨年に引き続き公共工事の増加が追い風となった建設業やインバウンドの恩恵を受けた企業などは業績の回復傾向を見せている。
 一方で、中国経済の低迷や円安が進むなか人件費・原料高などのコスト増や、中国特有のリスクの影響を受ける企業が増え始めるなど、今後は会社の規模や業種によって業績の明暗が分かれていくことが考えられる。
 帝国データバンクでは、リーマン・ショック前の2007年度(2007年4月〜08年3月期)から14年度(14年4月〜15年3月期)までの8期間の財務分析を実施。収益性、安全性の2点から調査・分析した。

 今回の調査は2014年12月に続き3回目。

 ◆企業規模は、総資本別(「1億円未満」「1億円以上10億円未満」「10億円以上100億円未満」「100億円以上」)。
 ◆財務比率の各数値は、帝国データバンクの企業財務データベース「COSMOS1」をもとに作成した『全国企業財務諸表分析統計』(第51〜58版)による。
 ◆決算期の対象は、2007年度(07年4月〜08年3月期)〜14年度(14年4月〜15年3月期)の8期。
 ◆財務比率は、「自己資本比率」(安全性)、「売上高経常利益率」(収益性)の2指標。
  1.自己資本比率=(自己資本/総資本)×100
  2.売上高経常利益率=(経常利益/売上高)×100
 ◆業種別では「建設」、「製造」、「卸売」、「小売」、「運輸・通信」の5業種を取り上げた。


■調査結果(要旨)
1.「自己資本比率」 建設、製造など4業種が改善
 「建設」、「製造」、「卸売」、「運輸・通信」が改善。特に「建設」は前年度比3.22ポイント増となり、最大の増加幅になったが、リーマン・ショック前(2007年度)の水準には戻っていない。また、「運輸・通信」も原油安によるコスト減により、1.41ポイント上昇した。一方、総資本「1億円未満」は、「製造」、「小売」の2業種が債務超過

2.「売上高経常利益率」 全業種でリーマン・ショック以降、最高値に
 全体、規模別ともにリーマン・ショック前を上回った。業種別では、全業種でリーマン・ショック以降、最高値を更新。総資本「1億円未満」は、2007年度以降初めて全産業でプラスとなった。


1.「自己資本比率」 建設、製造など4業種が改善
 企業の安全性を測る指標のひとつである「自己資本比率」を見ると、全産業平均で22.89%となり、前年度比1.74ポイント増加した。また、規模別では全てにおいて改善、なかでも総資本「1億円未満」は最も改善幅が大きく(前年度比4.16ポイント増)、2009年度以来5年ぶりに資産超過に転じた。
 業種別では、「建設」、「製造」、「卸売」、「運輸・通信」の4業種が前年度を上回った。特に「建設」は、アベノミクスの財政出動による公共工事の増加で前年度比3.22ポイント増となり、最大の増加幅となった。しかし、リーマン・ショック前(2007年度)と比較すると4.96ポイントの開きがあり、未だにリーマン・ショック前の水準まで回復していない。また、「運輸・通信」は原油安によるコスト減がプラス材料となり、前年度比1.41ポイント上昇した。
 一方、「小売」は消費増税の反動減が長引いたことを受けて、前年度比0.24ポイント減とわずかに減少。さらに、総資本「1億円未満」を見ると「製造」、「小売」の2業種が債務超過だった。

 ※グラフ資料・表資料は添付の関連資料「グラフ資料・表資料1」を参照


2.「売上高経常利益率」 全業種でリーマン・ショック以降、最高値に
 企業の収益性を測る「売上高経常利益率」を見ると、全産業平均で2.60%となり、前年度比0.62ポイント増加した。また、全業種で前年度を上回り、リーマン・ショック以降最高値を更新。特に「建設」は前年度比1.04ポイント増と大幅に増加。大手ゼネコンを中心に堅調な公共工事と首都圏における住宅・商業施設の建設など民間需要が好調で、収益を重視した受注が可能となったことがあげられる。
 他方、「製造」は円安による輸入原材料の高騰というマイナス要因はあったものの、コスト軽減などで前年度比0.56ポイント増とわずかに上回った。総資本「1億円未満」の小規模企業を見ると、2007年度以降で初めて全産業がプラスになるなど経営環境が上向いている様子がうかがえる。

 ※グラフ資料・表資料は添付の関連資料「グラフ資料・表資料2」を参照


3.まとめ
 今回の調査・分析を見ると、「自己資本比率」は、全産業でリーマン・ショック前を下回ったものの、「建設」、「製造」、「卸売」、「運輸・通信」が前年度に比べて改善。規模別では総資本「1億円未満」が5年ぶりに資産超過に転じ、財務体質は回復傾向が続いていることが分かった。
 「売上高経常利益率」では、全業種でリーマン・ショック前の水準を上回った。なかでも「建設」は、公共工事が活発だったことで収益は好調に推移した。また、総資本「1億円未満」の小規模企業はリーマン・ショック後初めて全産業でプラスとなった。

 本調査・分析の対象となる2014年度は、消費増税に対する反動減が長引いた一方で、日銀による大胆な金融緩和で急速な円安を招き、製造業を中心とした輸出企業はその恩恵を受け収益を改善した企業が目立った。
 しかし、近時は中国経済の減速による企業の設備投資の慎重化や、テロによる海外渡航者減少のおそれなど不安材料が残る。米国の利上げが年内になる可能性が高まり、さらなる円安が予想され、原材料を輸入に頼る企業は収益面への影響が危惧される。
 中小企業の財務体質は改善するも景況感は依然足踏み状態と言え、これらがどのように企業経営に影響を及ぼすのか注視していく必要がある。


■参考

 ※表1・2は添付の関連資料を参照



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