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東京商工リサーチ、10月の「チャイナリスク」関連倒産の調査結果を発表

2015-11-13

[特別記事]
チャイナリスク」関連倒産調査
〜10月は最多タイの11件、1−10月は5割増の63件〜


 10月の「チャイナリスク」関連倒産は、集計開始以来で最多タイとなる11件だった。2015年1月〜10月の累計件数は63件となり、前年同期の41件から5割増加した。単月の業種別では、「繊維・衣服等卸売業」が3件、「繊維工業」が1件、「繊維・衣服・身の回り品小売業」が1件でアパレル関連業種の倒産が5件発生した。累計ではこれら3業種に「なめし革・同製品・毛皮製造業」を加えた倒産が26件に及んでおり、チャイナリスクはアパレル関連の業種を直撃している。
 10月の負債総額は60億9,800万円で、1月〜10月の累計は2,250億100万円となった。9月に第一中央汽船(株)(TSR企業コード:291084648、東京都中央区、中国景気減速)が1,196億700万円の負債を抱え民事再生法の適用を申請した影響により、前年同期(2014年1−10月)の138億2,400万円から負債総額は大幅に増加している。
 10月は倒産には集計されないが事業停止や破産準備中などの「実質破綻」は1件発生(前年同月ゼロ)。両者を合算したチャイナリスク関連破綻は12件で、2015年9月の13件に次ぐ水準となった。


<「チャイナリスク」関連の集計基準>
 「チャイナリスク」関連の経営破綻は、破綻の原因が次の6項目のどれかに該当するものを集計している。
 1.コスト高(人件費、製造コストの上昇、為替変動など)
 2.品質問題(不良品、歩留まりが悪い、模倣品、中国生産に対する不信など)
 3.労使問題(ストライキ、工場閉鎖、設備毀損・破棄など)
 4.売掛金等回収難(サイト延長含む)
 5.中国景気減速(株価低迷、中国国内の消費鈍化、インバウンドの落ち込みなど)
 6.反日問題(不買、取引の縮小、暴動など)

 ※「チャイナリスク]関連の経営破綻は、下記の「倒産の定義」のいずれかに該当するケースを「倒産」として集計。「事業停止」や「破産申請の準備中」などは、倒産とは区別し「実質破綻」としている。


<倒産の定義(対象:負債額1,000万円以上の法人および個人企業)>
 A)会社更生法、民事再生法、破産、特別清算を裁判所に申請した企業(法的倒産)
 B)手形決済などで6カ月間に2回の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けた企業(私的倒産)
 C)企業が経営破綻により事業継続を断念したが、法的手続きを採らず弁護士などに事後を一任して私的整理(内整理)を明らかにした企業(私的倒産)

 ※「チャイナリスク」関連倒産の集計開始は2014年1月。

 *表資料・グラフ資料は添付の関連資料「表資料・グラフ資料1」を参照


【2015年1月〜10月の主な事例】
○コスト高
 (株)アイリス(10月集計、TSR企業コード:840002858、徳島県美馬市、下着製造)
 下着製造で発展し、1988年より中国の上海や広東、天津に生産拠点を開設。1991年には上海アイリス製衣有限公司を設立して中国での生産を本格化させ、1995年8月期には通販業者向けの販売が寄与しピークとなる売上高34億9,363万円を計上した。その後、通販業者向け受注の落ち込みから減収傾向で推移し利益面も苦戦。さらに、近年の中国での人件費の上昇を受けて生産コストが高騰し、経費の吸収が困難になってきたため中国からの撤退を試みていたが、経営環境の急激な悪化に耐え切れず、2015年10月に破産開始決定を受けた。


○品質問題
 ジィーティー・インターナショナル(株)(10月集計、TSR企業コード:296551686、東京都文京区、婦人・紳士服の製造販売)
 婦人服・紳士服など衣料品全般を扱い、主に中国で縫製加工を手掛け、日本のアパレル業者等へ販売し、2011年3月期には売上高約1億円を計上していた。しかし、市況の低迷から2012年3月期には売上高が6,385万円へ下落し、2014年には数百万円の焦付が発生。さらに、中国で縫製する製品の品質不良からクレームが発生し売上高が低下。このため資金繰りも限界に達し、2015年10月に破産開始決定を受けた。


○中国景気減速
 第一中央汽船(株)(9月集計、TSR企業コード:291084648、東京都中央区、海運業)
 リーマン・ショック以降、海運市況の悪化で船舶過剰に陥り需給不均衡から業績が悪化。原油価格の高騰もあり2009年3月期以降、2011年3月期を除き赤字決算が続いていた。さらに中国の景気減速に伴うばら積み貨物の需要減少で運賃と傭船料の逆ザヤが拡大し、2015年9月に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。

 (株)マルヒロ(9月実質破綻、TSR企業コード:882105205、福岡県北九州市、鉄・非鉄金属などの加工処理)
 スクラップ相場や景気動向に左右されやすく、2012年9月期の売上高は9億円を割り込み、ピーク時の2008年9月期から売上高は半減していた。エンドユーザーの一部が中国に所在していた関係で、中国の景気減速の影響を受けて輸出向けスクラップ販売が急減。2015年9月に事業を停止し、破産準備に入った。


○売掛金回収難
 江守グループホールディングス(株)(4月集計、TSR企業コード:600000702、福井県福井市、持株会社)
 2014年4月に江守グループホールディングス(株)へ改称して持株会社へ移行。グループの戦略的機能を担い、傘下に国内外24社(うち中国5社)の事業会社を持っていた。中国向けは順調に売上を伸ばしたが、中国の金融引き締め等の影響から売掛金の回収難が発生。大幅な債務超過に陥り、2015年4月に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。


■まとめ:チャイナリスク関連倒産はさらに増加する恐れ
 10月のチャイナリスク関連倒産は11件だった。2014年1月の集計開始後、2カ月連続で10件を超えたのは初めて。負債額別では、1億円以上が7件(内訳:10億円以上2件、5億円以上10億円未満1件、1億円以上5億円未満4件)と全体の6割以上を占めている。同月の倒産全体は、負債総額1億円未満の構成比が7割(742件中522件)と小規模零細企業に偏っているのと対照的な状況である。
 産業別では、小売業の倒産が3件発生した。1月〜9月の発生は2件のみで、10月は急増したことになる。10月発生の3件は、いずれも人件費高騰や為替変動による調達コストの上昇が要因となっている。人件費の高騰などにより中国からの調達コストは引き続き上昇しており、依然としてコスト高は沈静化しておらず、当面「コスト高」を要因とした倒産が減少するとは考えにくい。このため、チャイナリスク関連倒産は、今後も月10件以上の高水準が続くとみられる。

 *表資料・グラフ資料は添付の関連資料「表資料・グラフ資料2」を参照



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