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ユニ・チャーム、使用済み紙おむつのパルプを再生し資源化する技術を開発
〜温室効果ガス削減効果とバージンパルプ同等の衛生安全性を両立〜
“使用済み紙おむつ資源化技術を開発“
第26回廃棄物資源循環学会と第64回日本感染症学会にて発表
ユニ・チャーム株式会社(本社:東京都港区、社長:高原豪久)は使用済み紙おむつのパルプを再生し資源化する技術を開発しました。この技術の環境影響評価を東京都市大学の伊坪徳宏教授と共同で実施し、その評価結果を第26回廃棄物資源循環学会(2015年9月2日〜4日)にて発表しました。また、この技術により得られたパルプの感染安全性の検証を北里大学の花木秀明感染制御研究センター長・特任教授と共同で実施し、その検証結果を第64回日本感染症学会東日本地方学術集会(2015年10月21日〜23日)にて発表しました。
■背景
大人用紙おむつの生産量は、2014年現在で重さ30万トン、50億枚(※1)にのぼり、この10年間で1.6倍に伸長しています。高齢者人口の増加を背景に、今後も生産量の増加が見込まれます。また、使用済み紙おむつのほとんどは焼却処理されています。焼却を減らすことが環境負荷を低減し、更に再利用をすることで資源を有効活用することができます。一方で、再利用すると、排泄物に含まれる菌がリサイクルした製品に含まれる恐れがあります。これに対して、当社では新たな技術としてオゾン処理方法(使用済み紙おむつのパルプをバージンパルプ(※2)と同等の品質にする方法)を開発し、この処理を行った場合の環境負荷低減効果(温室効果ガス削減効果)と、資材の安全性(衛生安全性)評価を行いました。
※1 日本衛生材料工業会 生産統計データより(軽失禁用を除く)
※2 バージンパルプ:木から取り出した新しいパルプ
■今回ユニ・チャームが開発した、使用済み紙おむつのパルプを再生し資源化する技術
*図1・2は添付の関連資料を参照
■環境影響評価の結果概要
LCA(ライフサイクルアセスメント)の手法を用いて、現状焼却処理方法と新開発処理方法の2つの処理システムを対象に比較しました。汚泥処理を一般的な燃焼処理をしたとするシナリオによる分析の結果、平均で約31%の温室効果ガスの削減効果があることを確認できました。
*表1は添付の関連資料を参照
■衛生安全性評価の結果概要
使用済み紙おむつから再生パルプまでの各工程で、細菌の検出と清浄度指数としての蛋白濃度の測定を実施しました。システムの構築に沿った工程の各時点で細菌の検出と種類の変化を分析し、併せて、清浄度指標として蛋白質濃度をModefied Lowry法で分析しました。
*図3は添付の関連資料を参照
◇分析の結果1.細菌数
主な検出は大腸菌群で、使用済み紙おむつ回収時の初発菌数は10億個(cfu)/mL以上ありました。
オゾン処理後に菌は検出されませんでした。
*表2は添付の関連資料を参照
◇分析の結果2.蛋白質濃度
オゾン処理後にはヒト由来の汚れ指標とした蛋白質濃度は測定下限以下でした。
■まとめ
ユニ・チャームが開発した、使用済みおむつからバージンパルプと同等品質のパルプを再生し資源化する技術は、現状焼却処理より温室効果ガスを削減する環境に優しい技術であることが確認できました。さらに改善を加えることで30%以上の温室効果ガス削減効果があることが分かりました。
また、再生パルプであっても感染性の危険性のないバージンパルプと同等の素材になることが確認されました。
今後は、事業化の可能性の追求と事業化における経済性・社会性・安全性及び総合的な環境影響も検証する必要があると考えています。
■東京都市大学 伊坪 徳宏教授のコメント
ユニ・チャームが提案する紙おむつのリサイクルシステムは、今後益々需要が増える紙おむつの処理を焼却に頼るのではなく、付加価値の高い材料として循環利用することを進めるものです。今回の評価を通じて、上質なパルプを紙原料として回収し、発熱量の高いプラスチックは熱源として利用することを可能にするこのシステムは、CO2の排出量の低減にも貢献することがわかりました。高齢化社会のなかで今後顕在化するであろうゴミ問題や気候変動問題を解決していく、新しいビジネスモデルを提唱する同社の試みは大変高く評価できます。
■北里大学 花木 秀明感染制御研究センター長・特任教授のコメント
使用済み紙おむつのリサイクルは、今後、各自治体の大きな課題となってくると考えられます。しかし使用済み紙おむつには感染性に関与する衛生上の危険が絡んでいます。この危険性を回避できることが本研究で確認できました。この技術を洗練してリサイクルを実現させていくことは、地域から全国へ、さらに地球環境の改善に役立つことになります。今後は、産官学が一体となった展開が望まれます。
■当社のコメント
使用済み紙おむつに対して一歩踏み込んだ対応技術であり、得られた素材は環境的にも衛生的にも問題のないことが確認できたと思われます。ステークホルダーの皆様のご意見・ご協力を得てこの技術を事業へと進展させていきたいと考えています。当社は環境負荷への責任を十分認識し、環境に配慮した商品の開発を今後も継続して進めてまいります。