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東大、伊豆諸島青ヶ島の東に海底熱水鉱床を発見

2015-08-14

伊豆諸島青ヶ島の東に海底熱水鉱床を発見
〜短期間に海底熱水鉱床を発見可能な手法を開発〜


1.発表者:
 浅田 昭(東京大学生産技術研究所 教授)
 飯笹幸吉(東京大学生産技術研究所 特任教授)


2.発表のポイント:
 ◆海底堆積物サンプリングと世界最先端の合成開口インターフェロメトリソーナー(注1)による複合観測手法により、東青ヶ島カルデラ内において、中央火口丘(水深750m)に熱水鉱床域、カルデラ東部と北部に熱水活動域を発見した。
 ◆本研究により開発された手法により、短期間に海底熱水鉱床を発見することが可能となる。
 ◆今後、広大な海域の中から効率的に海底熱水鉱床を探査する実用的な手法として期待される。


3.発表概要:
 東京大学生産技術研究所の浅田昭教授、飯笹幸吉特任教授らの研究グループは、伊豆諸島青ヶ島東方12kmに位置している最大水深820mの東青ヶ島カルデラの中央火口丘および南東カルデラ壁直下の少なくとも2箇所に海底熱水鉱床を発見した。
 本発見は、海底熱水鉱床の探査手法の高度化を目指し、地質学的知見と開発した音響機器による精密海底地形調査および民間への技術移転を同時に実施した成果である。
 中央火口丘の海底熱水鉱床は、事前調査によって中央火口丘西麓に分布している高さ20m直径40mほどの円錐形のマウンド(小丘)に、高さ30m程の巨大なチムニー(火山の噴煙口)などが複数確認されていた。今回、本研究グループはマウンド上の水深750mで重力式柱状採泥器(注2、図4)によって試料を採取したところ、亜鉛を豊富に含む塊状硫化物であることを発見した。採取試料は、銅、鉛、バリウム等も含んでいた。このことから当該マウンドは高品位の亜鉛を含む多金属硫化物マウンドであることが示唆される。
 本採取試料から、南東カルデラ壁直下の海底熱水鉱床は亜鉛・バリウムに富んでいることが、現時点では推察される。その地形的特徴は、大小のマウンドが連なり東西方向に海嶺状地形を示しており、およそ南北方向の長さ500m×東西方向幅200mのエリアである。
 本研究で得られた精密海底地形や地球科学的特徴に基づくと、当該カルデラ内には同様の海底熱水鉱床と推察されるマウンドが20カ所を超える。
 本研究グループは今後、海底下の塊状硫化物の分布を地質構造探査で把握することを計画している。
 なお、本研究は文部科学省 海洋資源量促進技術開発ブログラム「海洋鉱物広域探査システム開発」の一環として行われました。


4.発表内容:
<背景>
 (1)2013年9月に海洋エンジニアリング(株)の海洋調査船「第七開洋丸」を使い、東青ヶ島カルデラ床で海底地形計測と柱状採泥4点の観測を行い、カルデラ内に熱水活動に伴う硫化鉱物粒子の存在を確認した。
 (2)2015年6月に海洋研究開発機構海洋調査船「よこすか」と海中ロボット「うらしま」に合成開口インターフェロメトリソーナーを装備し、東青ヶ島カルデラ内に鉱床候補の的を絞った観測測線計画に従って3次元音響画像探査(注3)を実施し、熱水鉱床と推定される3区域を発見した。
 (3)2015年7月に第七開洋丸を使い、候補ポイントに的を絞った精密測位誘導の柱状採泥により熱水鉱石を採取し、東青ヶ島カルデラ内の中央火口丘(水深750m)に熱水鉱床があることを特定した。

 海底熱水鉱床の調査研究は1987年頃、旧工業技術院地質調査所による東青ヶ島カルデラの採泥調査が実施され、表層の堆積物中に熱水活動起源の重晶石粒子が確認されているが、海底熱水鉱床の発見には至っていなかった。2013年から東京大学生産技術研究所によって本格的調査が実施され、特に重鉱物分析による熱水起源鉱物を熱水活動の指標とする手法で、カルデラ内の堆積物調査を行い、その結果に基づいて音響精密調査・地質調査を実施するという3段階の探査手法により、海底熱水鉱床の発見を目指した。
 今回、本研究グループは、長期にわたる活動を記録している1m程の柱状堆積物を重力式柱状採泥器(図4)によって採取し、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱などの硫化物粒子や重晶石を同定し熱水活動の痕跡を把握した。次にAUV(自律型無人潜水機)を利用した精密調査によってチムニーを伴うマウンド地形を捕捉した。最後に、マウンドの地質試料を採取し海底熱水鉱床の特徴を明らかにした。


<研究内容>
(1)合成開口インターフェロメトリソーナーの実用化を達成本研究グループは、2014年に開発した合成開口インターフェロメトリソーナーを海中ロボット「うらしま」に装備し、初めて海底熱水鉱床探査を実施し、実用性能を確認した。本システムは、100kHzの音響パルスを左右同時に発信し、300m幅の5−10cmピクセルの3次元海底音響画像を取得するシステムで、海中ロボットAUVに搭載し、水深3000mの海底上50m〜100mを潜航観測し、詳細な音響画像を撮影する。音響画像から、3次元の地形解析、音響による底質分類を行い、熱水鉱床探査に有用な情報を得るシステムである。(図1)。本研究グループは、今回、ピンポイントで採泥点を特定し、効果的に熱水鉱床の鉱石を採取することに成功した(図3)。

(2)海底熱水鉱床地質調査の概要
 本研究グループは、2013年の調査航海において、東青ヶ島カルデラにおいて採取した堆積物の地質鉱物学的分析から、海底熱水活動に伴う硫化物や重晶石の粒子を発見し、海底熱水活動の証拠を複数の地点で捉えることに成功した。その後、中央火口丘南東麓に分布している高さ20m、直径40mほどの円錐形のマウンド上に、高さ20m程の巨大なチムニー(図2)など大小のマウンド地形を確認した。今回、水深760mの中央火口丘南東麓の硫化物マウンド上で重力式柱状採泥器によって採取した試料は、閃亜鉛鉱を主成分鉱物とし、黄銅鉱・黄鉄鉱・方鉛鉱や重晶石などから構成されている。また、マウンド西方のわずかな比高のマウンド様地形では熱水性マンガン酸化物が採取されている。このことから、中央火口丘周辺では熱水活動域が広範囲に分布していることが推察される。
 一方、南東カルデラ壁直下に分布する海嶺状地形のマウンド周辺において採取した試料は、閃亜鉛鉱と重晶石を主成分鉱物とするものである。このマウンド地形の周辺にも数個のマウンドが確認されている(図3)。


<今後の予定>
 本研究グループは、2015年9月頃を目途にROV(ケーブル接続海中ロボット)を用いた、サンプル採取と海底下音響構造探査の実施を予定している。


5.発表:8月7日(金)海洋工学シンポジウムにおいて、発表予定


 ※用語解説・図1〜図5は添付の関連資料を参照




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