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清水建設、新たな地盤沈下対策工法「A&S土性改善工法」を開発・実用化
新たな地盤沈下対策工法「A&S土性改善工法」を開発・実用化
〜軟弱粘性土地盤の地下水吸引・排出と沈下促進により工期を1/2に短縮〜
清水建設(株)<社長 宮本洋一>は(有)アサヒテクノ<社長 高橋茂吉>と共同でこのほど、軟弱粘性土地盤の新たな地盤沈下対策工法として、地盤内の地下水の吸引(Absorption)・排出と沈下(Subsidence)を効率的に促進させる「A&S土性改善工法」を開発・実用化しました。
※(有)アサヒテクノの社長名の正式表記は添付の関連資料を参照
従来、軟弱粘性土地盤を対象とした地盤の沈下対策工事では、多くの場合、地中内へ垂直に排水ドレインを建て込み、盛土による重さを利用することで地下水をドレインから排出し圧密沈下を図る載荷重工法を採用してきました。ただ、ローコストの半面、盛土の荷重に頼るため十分な対策効果を発揮できるまでに半年以上の長期に亘る工期を要します。地盤にセメントを添加・混合して固める固化処理工法もありますが、即効性があるものの2倍以上の工費を要することから、載荷重工法では、工期に対する要請に応えられない場合等に採用されています。
「A&S土性改善工法」は、工期および工費において両者の中間的な位置付けの工法です。開発に当たっては、アサヒテクノの特許工法・スーパーウェルポイント工法(以下、「SWP工法」。)に着目。SWP工法は、軟弱粘性土地盤の沈下対策工法の一つで、空気を通さずに水だけを吸引する特殊スクリーンを巻きつけたケーシングを井戸内に設置し、ケーシング内を減圧することで、強制的に地下水を吸引・排出するものです。
この工法をベースに軟弱粘性土地盤の沈下対策を効率化した工法がA&S土性改善工法です。具体的には、SWP工法のケーシングに加え、固定式と移動式の吸・送気管を最適な位置に配置、地盤内に空気を吸気、送気することで水みちを形成して地盤内の地下水の排水を促し、載荷重による沈下促進を図ります。
本工法は、最大1,000m2を一区画として施工を行い、層厚50m程度の軟弱粘性土地盤まで対応可能です。施工に当っては、初めに区画中央部に直径500mm程度のSWP工法の井戸を掘削してケーシングを設置し、地下水の吸引・排出を行います。続いて、区画の外周部に固定式の吸・送気管(φ40mm)を区画形状や面積に応じて複数本設置、区画中心部の井戸の周囲に移動式の吸・送気管を等間隔に同じく複数本設置します。盛土は着工後なるべく早い時期に行います。
地盤への吸気・送気は10日間程度を1サイクルとして交互に行い、移動式の吸・送気管は順次、区画の中心部から外側へ移設して行きます。吸・送気により地盤内に水みちができるので地下水の吸引効率が向上します。また、地下水の排水が進むと土粒子間に空隙が生じるので、盛土の荷重により沈下が促進されます。本工法は、3つの対策技術をひとつの工法にまとめてシステム化することで、対策効果の最大化を図っています。
本工法については、当社が施工中の埼玉県の造成工事で一部適用しています。層厚30m、N値ゼロの超軟弱のシルト地盤に対策を施したところ、含水比が85.8%から75.0%に低下、地盤の圧密降伏応力が133.0kN/m2から185.0kN/m2に上昇。この結果、当該地盤は、強度の増加により地盤改良後の沈下が抑制され、構造物やインフラ施設を建設できるレベルに改善されました。また、所定の改良効果を発揮するのに要した工期は約3カ月であり、載荷重工法比で5割減となりました。
なお、共同開発にあたっては、当社は本工法の理論確立とシステム構築と造成工事の計測管理を、(有)アサヒテクノはケーシングと固定式・移動式の吸送気管の製作・施工をそれぞれ担当しました。
以 上
※共同開発先の概要など《参考》は添付の関連資料を参照