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帝国データバンク、9月の全国企業倒産集計を発表

2010-10-14

2010年9月報


倒産件数は943件、13ヵ月連続の前年同月比減少
負債総額は1兆3705億9800万円、今年2番目の高水準


倒産件数   943件
前月比     2.2%減
前月      964件
前年同月比  0.3%減
前年同月   946件

負債総額   1兆3705億9800万円
前月比     709.9%増
前月      1692億3300万円
前年同月比  282.8%増
前年同月    3580億2900万円


※グラフ資料「件数・負債総額の推移」は、関連資料参照


■件数
 ・ポイント 13ヵ月連続の前年同月比減少も、前年同月比0.3%減とほぼ横ばい
  倒産件数は943件(前月964件、前年同月946件)で、前月比は2.2%、前年同月比も0.3%の減少となった。13ヵ月連続で前年同月を下回ったものの、減少率は0.3%とほぼ横ばいとなり、2ケタの減少率が続いた減少基調は終息に向かいつつある。

 ・要因・背景
  1.関東(352件、前年同月比▲1.7%)、近畿(232件、同▲8.3%)では小売業を中心に減少続く
  2.建設業(285件、前年同月比+31.3%)は地方圏での増加が目立ち、2ヵ月連続の増加


■負債総額
 ・ポイント 8ヵ月ぶりの前年同月比増加、今年2番目の高水準
  負債総額は1兆3705億9800万円(前月1692億3300万円、前年同月3580億2900万円)で、前月比は709.9%、前年同月比も282.8%の大幅増加。この結果、8ヵ月ぶりの前年同月比増加になるとともに、今年2番目の高水準となった。

 ・要因・背景
  1.負債額トップは日本振興銀行(株)(東京)の6805億6300万円。消費者金融の(株)武富士(東京)の4336億800万円が続き、2社のみで当月の負債総額の81.3%を占めた
  2.負債100億円以上の大型倒産は3件、2009年5月の6件以降、17ヵ月連続の1ケタ


■業種別
 ・ポイント 建設業が2ヵ月連続の前年同月比増加
  業種別に見ると、7業種中6業種で前年同月を下回った。なかでも、運輸・通信業(36件、前年同月比▲23.4%)、サービス業(146件、同▲16.1%)、卸売業(122件、同▲12.9%)の3業種は、前年同月からの減少率が2ケタとなった。一方、建設業(285件、同+31.3%)は2ヵ月連続の前年同月比増加となり、唯一前年同月を上回った。

 ・要因・背景
  1.サービス業…労働者派遣(5件、前年同月比▲64.3%、9件減)が大幅減少
  2.建設業…土木工事(59件、前年同月比+78.8%、26件増)、内装工事(36件、同+44.0%、11件増)で増加目立つ


■主因別
 ・ポイント 「不況型倒産」の構成比83.6%、16ヵ月連続で80%台の高水準
  主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は788件(前月831件、前年同月774件)となった。構成比は83.6%(前月86.2%、前年同月81.8%)で、集計基準変更後で最高を更新した前月に比べ2.6ポイント下回ったものの、前年同月比は1.8ポイントの増加となった。不況型の構成比は2009年6月の81.2%以降、16ヵ月連続で80%台の高水準となった。

 ・要因・背景
  1.小売業の「不況型倒産」は140件、構成比88.1%で前年同月比6.3ポイントの増加
  2.販売不振は744件、構成比は78.9%で前年同月比3.8ポイントの増加

 倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計


■規模別
 ・ポイント 負債5000万円未満の構成比50.7%、3ヵ月連続の50%台
  負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は478件で、前年同月を12.7%上回った。構成比は50.7%で、前年同月(44.8%)から5.9ポイントの大幅増加、3ヵ月連続の50%台の高水準。また、負債10億円以上の倒産は50件、前年同月(48件)を4.2%上回り、1年3ヵ月ぶりに前年同月比増加。資本金別では、個人経営と資本金1000万円未満が477件、構成比は50.6%。中小企業基本法に基づく中小企業・小規模企業を見ると、中小企業は940件で全体の99.7%、小規模企業も804件で同85.3%を占めるなど、小規模倒産は高水準で推移した。

 ・要因・背景
  1.小売業の負債5000万円未満(108件)、構成比は67.9%で前年同月比10.3ポイント増
  2.製造業、サービス業を中心に、負債10億円以上の倒産が散発


■地域別
 ・ポイント 北海道、九州など5地域で前年同月比増加
  地域別に見ると、9地域中5地域で前年同月比増加となり、なかでも北海道(29件、前年同月比+45.0%)、九州(77件、同+18.5%)など地方圏で増加が目立った。東北(47件、同+4.4%)は1年8ヵ月ぶりの前年同月比増加。一方、関東(352件、同▲1.7%)、近畿(232件、同▲8.3%)、四国(15件、同▲21.1%)の3地域は前年同月を下回った。

 ・要因・背景
  1.北海道、九州など地方圏では土木工事業を中心に建設業が大幅増加
  2.関東、近畿では卸売業、小売業、サービス業が減少


景気動向指数(景気DI)
 ・景気DIは32.7で前月比0.5ポイント減、2ヵ月連続の悪化
  2010年9月の景気動向指数(景気DI:0〜100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.5ポイント減の32.7となり、2ヵ月連続で悪化した。
  業界別にみると、「製造」(35.3)や「卸売」(32.8)、「小売」(31.8)、「サービス」(33.1)などが悪化した。とくに「小売」はエコカー補助金(2009年4月10日〜2010年3月末、緊急経済対策で半年間延長し2010年9月末まで)が予算枠に達して9月7日に終了したことで、「自動車・同部品小売」(31.9)が同10.8ポイント減と調査開始以来、最大の悪化幅を記録。厳しい雇用環境や所得低迷の長期化で個人消費は停滞が続き、「小売」は2ヵ月連続で悪化した。

 ・国内景気の失速は鮮明、踊り場局面入りへ
  また、「製造」では電機や自動車関連業種などが悪化した。一時1ドル=82円台に突入した円高に対して、政府・日銀は15日、6年半ぶりの為替介入を実施したが、効果は限定的で、輸出企業の収益性にとって厳しい水準が続いた。米国内の需要低迷による外需減速も影響して、「製造」も2ヵ月連続で悪化した。
  自律回復の動きは弱く、国内景気がリーマン・ショック前を回復したに過ぎない水準のなかでの政策支援の終了は、自動車関連メーカーや卸売、小売、人材派遣サービスなど幅広い業種に影響を与えた。国内景気の失速は鮮明で、踊り場局面に入りつつある。


<今後の見通し>
 ■倒産件数は3年ぶりの5000件台にとどまる
  2010年度上半期の倒産は5751件に減少し、前年同期を14.3%(961件)下回り、年度上半期としては3年ぶりの5000件台にとどまった。月ベースでも、2009年9月から2010年9月まで13ヵ月連続で前年同月を下回るなど沈静化が続いた。倒産が減少したのは、中小企業金融円滑化法や景気対応緊急保証制度等の金融支援策やエコカー補助金制度など、各種政策支援による下支えが一定の効果を上げたためだ。一方、負債総額は2兆6319億円となり、年度上半期としては2年ぶりに前年同期を上回った。しかし実際には、9月に倒産した日本振興銀行(負債6805億6300万円)と武富士(同4336億800万円)の2社を除いた負債は1兆5177億2900万円にとどまるなど、負債規模の縮小が続いた。他方、上場企業倒産は9月末時点で武富士、プロパスト(5月)など5件発生し、前年同期の5件と同水準となった。

 ■「円高関連倒産」高水準続く、今後の増加を懸念
  政府・日銀は9月15日、6年半ぶりとなる為替介入に踏み切った。月中、約15年ぶりの高値となる1ドル82円台になるなど急激な円高ドル安が進んだためだ。しかし、介入により一時的に円安に振れたものの、その後は再び円高に戻しており、輸出関連企業を中心に今後の影響拡大は必至である。すでに、円高による輸出不振や海外生産シフトなどのあおりを受けた「円高関連倒産」は2010年度上半期に21件発生し、前年同期の7倍に増えた2009年度上半期と同件数となるなど、さらなる増加が懸念される。9月8日には経済産業省がエコカー補助金の申請受付終了を発表した。補助金終了の反動から、9月の新車販売台数(軽自動車除く、日本自動車販売協会連合会調べ)は前年同月比4.1%減と14ヵ月ぶりのマイナスとなった。すそ野の広い産業だけに、需要の落ち込みが長引けば部品・素材など関連産業で倒産続発のおそれもある。このほか尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件をきっかけに対中関係が悪化するなか、自動車、電機、衣料、食品など中国からの輸入に頼る産業への影響が懸念される。

 ■10月にも増加に転じる可能性
  失速し始めた国内景気にひきずられ、倒産件数が増加に転じる可能性が高まってきた。2010年9月の倒産は943件で前年同月比0.3%減とほぼ横ばいとなり、2ケタの減少率が続いた減少基調は終息し、10月にも増加に転じる勢いだ。すでに倒産全体の3割を占める建設業では8月から前年同月を上回ったうえ、返済猶予後の倒産も2010年度上半期に61件判明し、前年同期から倍増。負債10億円以上の中堅クラスの倒産が9月に1年3ヵ月ぶりに増加するなど、潮目の変化を予感させる。これまで多くの中小企業は円滑化法や緊急保証の利用により資金調達で一息ついていたが、この間に自律的な回復には至らず、資金繰りに窮する事態に直面している。エコカー補助金や家電エコポイント等の消費喚起策の効果も薄れるなか、10月末には緊急保証創設から2年、12月には円滑化法施行から1年という節目を迎える。例年、資金需要が高まる年末と、これらの借り入れ負担が増す時期とが重なることで、先送りしてきた倒産予備軍の破綻が続発するおそれは十分ある。9月の武富士倒産で消費者金融業界全体への不安感が高まるなか、改正貸金業法の完全施行をはさんで各社が新規貸出を大幅に抑制する動きも、一部中小・零細企業の資金繰りの足を引っ張りかねない。こうしたなか政府は9月10日、円高やデフレに対応するための経済対策を閣議決定した。加えて追加の経済対策の議論も進むが、景気の先行き不透明感が増すなかで実体経済の底上げにどこまで結びつくかは疑問だ。むしろ、これまで国内景気をけん引してきた大企業が政策効果の剥落と円高で失速するなか、中小企業の資金繰り破綻が相次ぎ、年末から年度末にかけて倒産増加が続く可能性が出てきた。



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