イマコト

最新の記事から注目のキーワードをピックアップ!

Article Detail

帝国データバンク、2010年の全国企業倒産集計を発表

2011-01-18

2010年報 2010年(平成22年)1月1日〜12月31日


倒産件数は1万1658件、5年ぶりの前年比減少
負債総額は6兆9366億400万円、2年ぶりに前年比微増


倒産件数  1万1658件
前年比    12.4%減
2009年  1万3306件

負債総額  6兆9366億400万円
前年比   1.9%増
2009年  6兆8101億4700万円


<件数推移グラフ/負債総額推移グラフ>

 ※グラフ資料は添付の関連資料を参照


■件数
 ・ポイント 倒産件数は1万1658件、5年ぶりの前年比減少
  2010年の倒産件数は1万1658件で、2009年の1万3306件に比べ12.4%の2ケタ減少、2005年(8225件、前年比9.1%減)以来5年ぶりに前年を下回った。月別推移も2010年はすべての月で前年同月を下回り、2009年9月以降16ヵ月連続の前年割れとなった。

 ・要因・背景
  1.金融円滑化法等の金融支援策が奏功し、多くの企業が資金繰り破綻を回避
  2.建設業(3136件)、小売業(1966件)が2年連続の前年比減少
  3.北陸、中国、四国など公共工事依存度の高い地方圏を中心に、建設業が減少

■負債総額
 ・ポイント 2年ぶりに前年比微増
  2010年の負債総額は6兆9366億400万円で、2009年の6兆8101億4700万円と比べ1.9%増と、2年ぶりに前年を上回った。しかし、これは日本航空3社が負債2兆3221億8100万円で倒産した影響が大きく、3社を除く負債は4兆6144億2300万円と過去10年で最低となった。

 ・要因・背景
  1.日本航空など3社が負債2兆3221億8100万円を抱え、会社更生法を申請
  2.負債100億円以上の大型倒産は39件(前年91件)、前年比57.1%の大幅減少

■業種別
 ・ポイント 全7業種で前年比減少
  業種別にみると、全7業種で前年を下回った。不動産業(353件)が前年比27.7%の大幅減少となったほか、卸売業(1648件、前年比▲19.5%)でも減少が目立った。建設業(3136件、同▲8.9%)、小売業(1966件、同▲9.5%)の2業種は2年連続の前年比減少。

 ・要因・背景
  1.不動産業…大型倒産が沈静化、マンション分譲が急減(6件、前年比▲89.3%)
  2.建設業…上半期は前年同期比14.6%減も、下半期は公共工事減少受けほぼ横ばい
  3.小売業…自動車小売(前年比▲20.7%)、家電小売(同▲19.7%)が大幅減少

■規模別
 ・ポイント 負債5000万円未満の零細企業倒産、唯一の前年比増加
  負債額別にみると、負債5000万円未満の零細企業倒産は5739件で、前年の5661件を1.4%(78件)上回り、負債額別で唯一の増加となった。一方、負債100億円以上の大型倒産は39件で、前年比57.1%(52件)の大幅減少となった。資本金別でも、資本金1億円以上の倒産が243件と、前年の344件を29.4%(101件)下回るなど、中堅・大企業の倒産減少が目立った。

 ・要因・背景
  1.負債5000万円未満の倒産、製造業(742件、前年比+11.9%)で増加目立つ
  2.不動産業で負債100億円以上の大型倒産(9件、前年比▲75.0%)が大幅減少

■主因別
 ・ポイント 「不況型倒産」の構成比が83.5%、前年比2.1ポイントの増加
  主因別の内訳をみると、「不況型倒産」の合計は9740件(前年1万833件)で、前年を10.1%下回った。構成比は83.5%で、前年の81.4%と比べ、2.1ポイントの増加となった。

 ・要因・背景
  1.販売不振が9208件発生、構成比は79.0%を占める
  2.小売業の「不況型倒産」構成比が85.8%、前年比4.0ポイントの大幅増加

■地域別
 ・ポイント 全9地域で前年比減少
  地域別にみると、全9地域で前年を下回った。なかでも、北陸(376件、前年比▲25.5%)、中国(395件、同▲24.5%)、四国(230件、同▲31.5%)の3地域は前年比20%を上回る大幅減少となった。

 ・要因・背景
  1.公共工事依存度の高い地方圏では、建設業の減少が影響
  2.関東、近畿、中部では卸売業、不動産業の減少が目立つ

■態様別
 ・ポイント 破産の構成比92.7%、過去10年で最高
  態様別にみると、破産は1万808件(前年1万2156件)で前年比11.1%の減少となったが、構成比は92.7%で2009年を上回り過去10年で最高。会社更生法(前年比▲58.3%)、民事再生法(同▲36.9%)が大幅減少となった一方、特別清算は339件で前年比3.4%の増加。

 ・要因・背景
  1.再建型手続きが困難な中小・零細企業による破産申請が高水準で推移
  2.中堅・大企業の倒産減少が影響し、会社更生法、民事再生法は大幅減
  3.特別清算は、課税リスクが生じる法改正が10月に行われ、駆け込み申請相次ぐ

■業歴別
 ・ポイント 業歴30年以上の構成比、3年ぶりに30%を下回る
  業歴別にみると、業歴3年未満の倒産は446件(前年508件)発生し、前年比12.2%の減少となった。一方、業歴30年以上の倒産は3424件(同4038件)発生、構成比は29.4%(同30.3%)となり、2007年(29.8%)以来3年ぶりに30%を下回った。

 ・要因・背景
  1.業歴3年未満の構成比ではサービス業(28.7%)が全業種中トップ
  2.資産背景に乏しい業歴の浅い企業は、厳しい資金繰り環境続く

■上場企業倒産
 2010年の上場企業倒産は、JALグループの持ち株会社である(株)日本航空(負債6715億7800万円、1月)、消費者金融の(株)武富士(同4336億800万円、9月)など9件発生したが、前年の20件は大きく下回った<2010年12月のシルバー精工(株)(銀行取引停止)は除く>

 国内景気はリーマン・ショック後の最悪期を脱したうえ、私的整理手法の広がりもあり、上場企業の倒産は沈静化が続いた。

■大型倒産
 2010年の負債額トップは、(株)日本航空インターナショナル(東京都、会社更生法、1月)の1兆5279億1900万円。次いで、日本振興銀行(株)(負債6805億6300万円、東京都、民事再生法、9月)となった。

 年初には日本航空、ウィルコムなどの大型倒産が続いたものの、3月以降6ヵ月連続で負債1000億円以上の倒産は発生しなかった。さらに、負債100億円以上の倒産も、8月に過去10年で初めて発生しなかったのをはじめ、20ヵ月連続で1ケタの件数にとどまるなど、大型倒産は沈静化が続いた。

■注目の倒産動向
 ・円高関連倒産 58件発生、前年比65.7%の大幅増加
  2010年に円高の影響を受けた倒産は、58件判明。2009年(35件)と比べ65.7%の大幅増加となった。なかでも、デリバティブ損失による倒産は25件(前年13件)と、構成比は43.1%を占めた。急激な円高により、為替取引に伴う通貨オプションのデリバティブ取引で大幅な損失を計上し、倒産に至るケースが続発している。

 ・返済猶予(リスケ)後倒産 112件判明、前年比93.1%の大幅増加
  2010年に返済猶予後に倒産に至ったケースは、112件判明。2009年(58件)と比べ93.1%の大幅増加となった。12月には19件判明し、月間最多を記録した。また、中小企業金融円滑化法による返済猶予を受けた後に倒産に至ったケースは2010年7月以降散発し、23件判明。返済再開のタイミングでの倒産増加が引き続き懸念される。


<今後の見通し>

 ■倒産件数は1万1658件、5年ぶりの前年比減少
  2010年の倒産は1万1658件と、2009年の1万3306件に比べ12.4%の2ケタ減少、2005年(8225件、前年比9.1%減)以来、5年ぶりに前年を下回った。月別推移も2010年はすべての月で前年同月を下回り、2009年9月以降16ヵ月連続の前年割れとなった。倒産が減少に転じた要因は、金融円滑化法と緊急保証という二段構えの金融支援策にある。過去に例を見ない手厚い中小企業支援策で、多くの企業が資金繰り破綻を回避した。堅調な外需や景気刺激策による下支えも倒産抑制に働いた。他方、負債総額は6兆9366億400万円で2009年に比べ1.9%増と、2年ぶりに前年をわずかに上回った。しかし、これは日本航空3社が負債2兆3221億8100万円で倒産した影響が大きく、3社を除く負債額は過去10年で最低となるなど縮小傾向が続いた。負債100億円以上の大型倒産も39件と、2009年の91件から約6割減少した。

 ■政策効果が寄与し、建設業、小売業が2年連続減少
  業種別では、全7業種で前年を下回った。このうち、建設業と小売業の2業種は2年連続の前年比減少。建設業は年前半に公共工事前倒し発注の効果が続いたうえ、二段構えの金融支援策も倒産減少に寄与した。小売業はエコカー補助金や家電エコポイントなどの景気刺激策の恩恵もあり、自動車小売、家電小売がともに約20%の大幅減少となった。地域別でも全9地域で前年を下回った。北陸、中国、四国など公共工事依存度の高い地方圏を中心に、建設業倒産の減少を受け2ケタ減となった。このほか、上場企業倒産が9件にとどまり、2009年の20件から半減した。日本航空、武富士など2つの大型案件はあったものの、総じて沈静化が続いた。

 ■円高関連倒産が58件発生、前年比6割強の増加
  年明け1月6日の日経平均株価は、約8ヵ月ぶりに1万500円台を回復した。好調な外需、内需も年末の季節需要に下支えされ、企業の生産活動は改善基調が続いた。しかし、依然として国内景気の回復力は弱く、2010年夏場以降の歴史的な円高の影響もじわり広がってきた。2010年の円高関連倒産は58件発生し、2009年の35件に比べ6割強増えた。輸出企業の収益悪化に加え、輸入企業でも為替デリバティブ取引による大幅損失で倒産に至るケース(2010年25件)が目立った。関連倒産の件数こそまだ少ないものの、58件のうち30件が9月以降に発生したうえ、12月は12件と前月比倍増となるなど、さらなる影響拡大が懸念される。

 ■年度末以降、前年同月を上回る月も
  今後の注目は、各種政策支援で抑制された倒産がいつ増加に転じるかだ。政策効果の息切れが顕著となった2010年9月(943件、前年同月比0.3%減)を境に、反転増の兆しはみられる。前年同月比減少率が2ケタから1ケタ台に縮小したうえ、前月比では増加の月も出てきた。2010年の年間件数をみても、倒産全体の約3割を占める建設業倒産が下半期にほぼ底を打ったうえ、政策効果が行き届きにくい零細規模の倒産はわずかながら前年を上回った(負債5000万円未満の倒産=5739件、前年比1.4%増)。販売不振や業界不振を原因とする「不況型倒産」の構成比も83.5%に達し、2年連続で80%台の高水準となった。企業を取り巻く事業環境は「回復」には程遠いなか、2011年は政策支援が相次いで終了される。このため、政策期限と資金需要期が重なる年度末以降、前年同月を上回る月が出てきそうだ。しかし、その後すぐに増加基調を強める可能性は低いとみられる。倒産抑制効果が大きい金融円滑化法の1年延長が決まったためだ。改正法案が今後成立すれば、倒産急増という事態は避けられるだろう。だが、延長期間中に経済環境が好転する保証はなく、円高、デフレ、雇用悪化、原材料高等のマイナス要因もあるなか、業績回復を伴わない延命策のツケを早晩払わされる可能性がむしろ高まっている。



詳細および東京都企業倒産集計は記事単位でPDFデータをご購入いただけます。
詳細・ご購入(オンデマンドサービス)はこちら
http://www.bookpark.ne.jp/tdb/

※ご購入の際にはユーザー登録(無料)が必要です。


Related Contents

関連書籍

  • 死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    詩歩2013-07-31

    Amazon Kindle版
  • 星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    前田 徳彦2014-09-02

    Amazon Kindle版
  • ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    大久保 明2014-08-12

    Amazon Kindle版
  • BLUE MOMENT

    BLUE MOMENT

    吉村 和敏2007-12-13

    Amazon Kindle版