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住友林業など、陸前高田市「希望の松」後継樹の育成状況を発表

2013-06-22

陸前高田市「希望の松」後継樹育成の経過報告について


 住友林業株式会社(社長:市川晃 本社:東京都千代田区)と住友林業緑化株式会社(社長:徳永完平 本社:東京都中野区、住友林業100%出資)は、岩手県陸前高田市の高田松原で東日本大震災の津波に耐え一本だけ残った“希望の松“の保護を目的としたプロジェクトチームに2011年4月より参加し、希望の松の後継樹育成に携わっております。昨年12月の進捗報告に続き、接ぎ木苗及び松ぼっくりから採取した種子から育てている実生苗の現在の生育状況につきましてお知らせいたします。


■苗木の種類と生育状況
・2011年春採取 接ぎ木
 一本松から採取した枝から育成している3本の接ぎ木苗は、現在までのところ苗畑で順調に生長しており、苗高は約80cm程度になっています。現在の生長の状況を鑑みると、今年の秋から冬にかけて次の接ぎ木増殖につながる接ぎ穂の採取が可能となる見込みです。

 ※参考画像1は添付の関連資料を参照

・2011年春採取 種子
 2011年4月に採取した松ぼっくりから発芽した18本の実生苗のうち3本が生長し、徐々に外部環境に慣らすために、人工気象室から室内に移動させ、育成するとともに、マツなどの樹木と共生する菌根菌(きんこんきん)を接種する試みも進め、注意深く育成条件を検討しておりました。
 しかしながら、これら3本の実生苗につきましては、その後、根の生長が急に止まり、その数週間後には芽の生長も止まってしまい、残念ながらこのたび枯死と判断せざるを得ない状況に至りました。
 枯死の原因としては、未解明な部分も多々ありますが、播種の時期が少なからず影響を及ぼしていると考えられます。これらの実生苗は、マツ本来の種子の飛散時期である秋に飛散せずに残っていた松ぼっくりを採取し育成しているため、もともとの種子自体が未成熟な状態であり、全ての苗木が順調に成長することは大変むずかしいと想定はしておりました。震災直後の4月に種子を松ぼっくりから取り出し、低温室で半年間の成熟期間を経た後に播種しましたが、育成時期が自然のサイクルである秋採り春蒔きと全く逆となったことや長期間人工気象室で育成したことから、人工気象室から出して室内条件に馴らす段階で、自然条件についていくことができなかったことが要因の一つではないかと分析しています。

・2012年秋採取 種子
 希望の松の伐採が実施された2012年秋に採取した松ぼっくり約1,000個から採集した種子約75個につきましては、冷蔵庫内で低温保存したのち今年4月頃から順次播種を行いました。
 現在までに約70個の種子を播種し、そのうち9本が発芽し3cmほどに生長しています。しかしながら、これらの種子は震災前の種子であることも想定され、長期間に渡り樹上で潮風にさらされてきたことから、2011年春に採取した種子と比較しても状態の悪い種子が多く含まれていることは否めません。厳しい状況であることを踏まえつつ、2011年の知見を活かせる様、今後一層慎重を期し育成に取り組んでいく方針です。

 ※参考画像2は添付の関連資料を参照


■今後の方針
 当社は、引き続き陸前高田市や関係者(*)の皆様に適宜ご相談、ご報告を行いながら、お預かりしている苗の育成に慎重に取り組み、将来的には陸前高田市の皆様にお戻しすることを目標にしております。
 また、筑波研究所において震災前から取り組んでいる針葉樹の組織培養による増殖技術の開発につきましては、継続して取り組み、希望の松の増殖にも応用していきたいと考えております。

 *陸前高田市のほか、土地の所有者である財団法人日本ユースホステル協会、2011年4月より様々な形で希望の松後継樹の育成を目的に活動している公益社団法人日本造園学会、一般財団法人日本緑化センター、一般社団法人日本造園建設業協会の3組織の皆様。


<解説>
 *接ぎ木:植物の枝を切り取り、同種または近縁の植物の幹に接ぐ繁殖方法。接がれる側の苗を「台木」、接ぐ側の枝を「接ぎ穂」という。
 *菌根菌(きんこんきん):植物と共生関係にある菌類。植物から同化した糖類の供給を受ける一方、植物には水とともにリンやミネラルを供給する。マツは、根に菌根菌(きんこんきん)が共生することにより、砂浜のような痩せた土地でも生きていくことができる。
 *組織培養:植物の成長に必要な養分などが入った培地を入れたガラス容器などの密閉した無菌空間で植物器官を育て、植物等を増殖する技術。茎頂(けいちょう)培養、胚培養などの手法がある。

<住友林業株式会社 筑波研究所 概要>
 木の総合的な活用を目指し、広く研究開発を進めていくことを目的に1991年に茨城県つくば市の「筑波研究学園都市」に設立。「木質資源分野」・「建築住まい分野」の観点より、素材としての木の可能性を探求し、魅力ある住宅用木質材料の研究、資源の有効活用、快適な住環境の研究開発など循環型社会に向けさまざまな研究テーマに取り組んでいます。また、各種部材や住宅部材の品質について検査・検証を行う「テクノセンター」、研究成果や技術情報の収集、タイムリーな情報提供を行う「木と住まい先端情報室」を併設し、先端技術の実用化に向けた取り組みを支えています。


以上

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