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慶大、仮想電力会社環境下で1000家庭の電力需給制御実験に成功

2013-05-28

マシンツーマシン通信技術を用いた仮想電力会社環境下での1000家庭の
電力需給制御実験に成功
5月29日(水)〜31(金)スマートコミュニティJapan2013で実験デモ公開


 慶應義塾大学理工学部 山中直明研究室は、ICT技術を活用したスマートグリッドにおいて仮想電力会社(*1)(EVNO:Energy Virtual Network Operator)による次世代電力需給制御方式の研究を行っています。このたび、1000家庭を想定し、各家庭の電力管理制御システム(HEMS:Home Energy Management System)の情報をマシンツーマシン(M2M:Machine−to−Machine)通信技術で相互にやり取りを行う、電力需給制御アルゴリズムを動作させるための模擬実験システムを開発し、3社のEVNO環境で1000家庭に対して2秒周期で電力需給制御を行う実験に成功しました。
 本研究成果は、5月29日(水)〜31日(金)に東京ビッグサイトで開催されるスマートコミュニティJapan2013・スマートグリッド展にて展示公開します。スマートコミュニティJapan2013における本研究成の実験デモをぜひご取材ください。


1.研究の背景
 慶應義塾大学理工学部 山中直明研究室は、2009年よりICT技術を活用したスマートグリッドの電力制御について研究開発を進めてきました。その間、仮想電力会社“EVNO”(*1)の概念を提唱し、EVNOの特徴を活用するスマートコミュニティ、EVNO実現のためのスマートネットワークシステム、EVNOならではの電力制御アルゴリズムの研究を進め、スマートルームによる模擬スマートハウスシステムでのEVNO実証実験を進めてきました。


2.研究概要とスマートコミュニティJapan2013でのデモンストレーション
 EVNOは、(1)HEMS(Home Energy Management System)やスマートメータが将来的に提供される外部との情報交換インタフェイスであるAPI(Application Program Interface)を通じて、各家庭の現在の電力需要状況と電力供給(太陽光発電や燃料電池、蓄電池からの放電)状況である需給状況を、各家庭に配備するアプリケーションプログラムやEVNOの持つ需給制御システムで利用可能とします。(2)各家庭のアプリケーションプログラムでは、APIを通じて得られた需給状況をもとにM2Mの通信技術を用いた家庭間での分散協調スケジューリングアルゴリズム(*2)により自動的に需給調整を行います。
 スマートグリッドの電力需給調整は、図1に示すようにプールの入水量(給電、発電)と出水量(消費)を同時同量で制御して水位を予定した値に保つことに例えることができます。需給調整のためには、EVNOのアプリケーションプログラムが各家庭の統計的な需要情報やHEMSに対して指示された需要計画情報をもとにスケジュール調整を行います。例えば、移動可能な電力需要の稼働時間を計算して機器の電源を自動的にオン/オフ制御する、変更可能な電力需要に対してはエアコンの温度設定を変更する等の調整をすることにより、電力の需給バランスを制御します。EVNOによる需給調整は、電力料金を最低にする、再生可能電力を優先的に使う、家庭内の余剰発電をできる限り削減するといった、各社個別の特色を持った運用ポリシーに基づいた需給制御が可能となります。従って、各家庭は好みに合致したEVNOを選択することができます。
 また、EVNOは、(3)M2M通信技術によるベストミックスエネルギー(瞬時瞬時で最適なエネルギー源を選択する技術)を創造します。具体的には、電力における地産地消を家庭内から地域に拡大させ、M2M通信技術を用いて最適な電力供給源を地域内でローカルマッチングさせ、分散協調スケジューリングアルゴリズム(*2)により需給の平準化を実現します。
 今回、(1)、(2)の研究における成果として、パソコン上にEVNOエミュレーション環境を構築し、1000家庭の需給調整を2秒周期で実行できることを実験検証しましたので、スマートコミュニティJapan2013のスマートグリッド展にて、その一部を公開デモンストレーションします。
 デモンストレーションでは、運用ポリシーの異なるEVNO3社の環境を想定し、パソコン上に構築した1000家庭が各家庭の好みに合致したEVNOを選択、2秒周期でM2M通信技術を用いた分散協調スケジューリングアルゴリズム(*2)により需給制御を受けるというものです。電力のピークを低減する運用ポリシーの場合、需要の延期が可能な電気洗濯機を消費電力と最大延期可能時刻情報をもとに給電のオンとオフを制御します。延期不可能なTV視聴需要に対しては、希望する時間帯にTV電源をオンにし、代わりに変更可能なエアコンに対して需要ピーク低減のために設定温度を下げる制御を行います。図2にEVNOによる電力の需給状況のモニタ画面を示します。ぜひ時々刻々変化するモニタ画面をご覧ください。


3.今後の展望
 実験システムに組み込んであるスマートルームの充実を図り、より家庭に近づけた検証環境での実証実験を進めます。更に、(3)の研究を進め、電力需給のローカルマッチングを行うことにより電力の地産地消を拡大し、EVNOによるベストミックスエネルギー創造の実現に向けた研究開発を進めていきます。


【補足情報】
 *1 EVNO(Energy Virtual Network Operator)は、自らはインフラ設備を持たずに、発電設備、蓄電設備、送配電設備等のインフラ設備を借用して、消費者と発電者/蓄電者間の需給調整を行うことで収入を得て、インフラ設備の借用料を支払い、事業運営する仮想電力会社です。

 *2 分散協調スケジューリングアルゴリズムとは、各家庭のHEMSのアプリケーションプログラムとEVNOの管理サーバのアプリケーションプログラム間で電力の需給制御情報を相互に交換し、EVNO各社の運用ポリシーに基づいて需給制御を行い、自動的に需給のスケジューリングを行うこと。


 ※以下の資料は添付の関連資料を参照
  ・図1.EVNOの電力の需要と供給の制御イメージ
  ・図2 EVNOによる電力需給調整状況

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