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生理学研究所、位相差クライオ電子顕微鏡で酵素タンパク質ダイサーと小分子RNAの結合の観察に成功

2013-05-16

位相差クライオ電子顕微鏡酵素タンパク質ダイサーと小分子RNAの結合をくっきり観察することに成功!



<内容>
 自然科学研究機構 生理学研究所の永山國昭教授を中心に開発された位相差クライオ電子顕微鏡は、通常の電子顕微鏡とは異なり、標本を染色などすることなく、凍らしただけで、タンパク質や微生物の中まで明瞭に観察することができる最先端の電子顕微鏡です。今回、米国エール大学、カルフォルニア大学バークレー校、中国精華大学の研究グループは、生理学研究所と共同で、この位相差クライオ電子顕微鏡を用いて、ヒトのダイサーと呼ばれる酵素タンパク質と小分子RNA(リボ核酸)が、どのように結合し複合体をつくり機能しているのかを明らかにすることに成功しました。これまでの手法では、複数の異なる構造が混在した複合体の構造解析は困難でしたが、位相差クライオ電子顕微鏡の高いコントラスト性能をいかすことで、主要な構造を選別して構造解析を行うことができました。今回の研究成果は、ネイチャー誌の姉妹誌であるNature Structural and Molecular Biologyに掲載されました(4月28日発刊)。


 ダイサーは、細胞の細胞質で働く酵素タンパク質の一つであり、遺伝情報の発現を抑制させる小分子RNAを生み出す働きを持ちます。小分子RNAは、長さ20から25塩基ほどの短いRNAのことをいい、他の遺伝子の発現を調節する機能を持っています。実際に遺伝子の発現を調節する時には、小分子RNAの前駆体にダイサーが結合し、小分子RNAが作り出されます。これまでは、小分子RNAが作られる際に、ダイサーがどのようにRNAと結合して複合体を作っているのかは直接明らかになっていませんでした。

 現在、人工的な小分子RNAを作り、特定の遺伝子情報の発現を抑えるRNA干渉技術が、新たな創薬として注目されています。研究グループの重松 秀樹 エール大学研究員(元生理学研究所)は、「RNA干渉技術など、小分子RNAを用いた創薬が注目を集めています。今回の技術を応用すれば、RNA創薬における効果的な分子設計に対する理解が深まるものと期待されます」と話しています。


<今回の発見>
 1.自然科学研究機構 生理学研究所の永山國昭教授を中心に開発された位相差クライオ電子顕微鏡によって、細胞内の酵素タンパク質ダイサーと、RNAの結合の様子を高いコントラストで観察することに成功しました。

 ※図1〜3は添付の関連資料を参照


<この研究の社会的意義>
 小分子RNAを用いた創薬への貢献に期待
  細胞内で遺伝子の発現を抑制させるRNA干渉技術など、小分子RNAを用いた創薬が注目を集めています。今回の技術によって、小分子RNAを細胞内で作り出すダイサーとRNAの結合様式が分かったことから、RNA創薬における効果的な分子設計に対する理解が深まるものと期待されます。


<論文情報>
 Substrate−specific structural rearrangements of human Dicer David W Taylor*,Enbo Ma*,Hideki Shigematsu*,Michael A Cianfrocco,Cameron L Noland,Kuniaki Nagayama,Eva Nogales,Jennifer A Doudna&Hong−Wei Wang ネーチャー姉妹誌 Nature Structural and Molecular Biology 4月28日刊


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