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東北大、多能性幹細胞を生殖細胞にスイッチする分子機構を発見

2013-05-01

多能性幹細胞生殖細胞にスイッチする分子機構


 本研究結果は、4月23日付でNature Communications誌電子版に掲載されます。


【研究成果の概要】
 生殖細胞は、胚発生の初期段階の決まった時期に多能性幹細胞から分化し、その後、精子や卵子に成熟していきます。生殖細胞と多能性幹細胞は、分化多能性の維持の鍵となるいくつかの遺伝子が共通して発現しており類似した性質を持つと考えられますが、多能性幹細胞が自発的に生殖細胞に変化することはありません。また多能性幹細胞は様々な細胞に直接に分化を開始できるのに対して、生殖細胞は精子と卵子にのみ分化することができ、両者の分化能力には明らかな違いがあります。これらのことから、生殖細胞と多能性幹細胞を隔てているメカニズムが存在することが予想されます。私たちは、転写制御因子Maxが、マウスの多能性幹細胞株であるES細胞で、生殖細胞でだけ発現する遺伝子群の発現を抑制する働きをもつこと、そして、Maxの発現を人為的に抑制するだけで、ES細胞が短時間で生殖細胞特異的な遺伝子群を発現する細胞に変化することを発見しました。この結果から、Maxの機能低下が多能性幹細胞生殖細胞に変化させるスイッチのひとつとして働いていると考えられます。またこの研究による成果は、多能性幹細胞から直接的に生殖細胞を誘導する新たな技術につながり、将来的には産業動物の育種や絶滅危惧種の保全や増殖といった、様々な応用が期待できます。なおこの研究は、理化学研究所、慶應義塾大学埼玉医科大学との共同研究として行われました。

【発表論文】
 発表雑誌:Nature Communications誌
 発表論文名:Max is a repressor of germ−cell−related gene expression in mouse embryonic stem cells(日本語訳:Maxはマウス胚性幹細胞における生殖細胞関連遺伝子の抑制因子である)
 著者名:Maeda,I.,Okamura,D.,Tokitake,Y.,Ikeda,M,Kawaguchi,H.,Mise,N.,Abe,K.,Noce,T.,Okuda,A,Matsui,Y.

【用語説明】
 多能性幹細胞
  様々な種類の細胞に分化する能力を持つ細胞で、ヒトやマウスなどの哺乳動物の着床前の胚に存在する。細胞株として樹立したものがES(embryonic stem)細胞で、iPS細胞ES細胞と同様な性質を持っている。
 転写制御因子:
  遺伝子はタンパク質の設計図としての役割を持っているが、遺伝子からタンパク質が作られるときには、まず遺伝子から転写によりmRNAが作られ、さらにそれをもとにタンパク質が作られる。この転写のスイッチのオンオフを行うタンパク質が転写制御因子である。

【解説図】
 緑色の細胞は、マウスES細胞から誘導された生殖細胞遺伝子を発現する細胞を示す。また胎仔の生殖細胞ではヒストンタンパク質のメチル化の低下が見られるが、ES細胞から誘導された細胞でも、同様にヒストンのメチル化の低下が起こっている。赤色がヒストンメチル化を示す。また青は細胞の核を示す。

 ※解説図は添付の関連資料を参照


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