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神戸製鋼など、フラットパネルディスプレイ用酸化物半導体材料など開発

2013-03-29

酸エッチング液耐性を備えたフラットパネルディスプレイ酸化物半導体材料
及びスパッタリングターゲット材について


 (株)神戸製鋼所と(株)コベルコ科研(神戸製鋼の100%出資子会社:以下 コベルコ科研)はこのほど、フラットパネルディスプレイ(以下FPD)のソース・ドレイン電極(以下S/D)のリワーク(*注1)工程に対応した酸化物半導体材料とそのスパッタリングターゲット材を開発しました。
 今回開発した酸化物半導体材料は、独自の材料設計によって酸エッチング(*注2)液に対する耐性を高めることに成功しています。この特徴によって、IGZOでは適用が困難であった高い生産性が得られるバックチャネル型薄膜トランジスタ(以下BCE−TFT)に対して適用することができます。また、リワーク工程で用いられる酸エッチング液に耐えることができ、酸化物半導体として先行して国内でFPD量産が開始されたIGZO(In−Ga−Zn−O)と同等の薄膜トランジスタ特性が得られることを特徴とします。
 またこの酸化物半導体薄膜形成に用いられる酸化物スパッタリングターゲット材は、コベルコ科研が製造し、すでに評価用サンプル出荷を積極的に展開しております。

 FPDは高精細化が進み、特に携帯・タブレット端末では高輝度化、低消費電力化、狭額縁化が求められます。FPDで用いられる半導体材料には従来、化学気相成長法(以下CVD:Chemical Vapor Deposition)で形成したアモルファスシリコン(以下a−Si)薄膜が用いられていましたが、半導体としてのポテンシャルを示すキャリア移動度が1cm2/Vs以下と小さく、FPDの高性能化が進むにつれて半導体材料の高移動度要求が高まっています。この要求に対して、低温多結晶シリコン(以下LTPS)を用いた薄膜トランジスタ(以下TFT)が既に量産されていますが、LTPSの工程は複雑で製造コストが高く、生産設備の限界で基板(マザーガラス)の大型化への対応が困難、といった課題がありました。
 酸化物半導体材料は、東京工業大学細野秀雄教授が開発したIGZOに代表される酸化物材料で、スパッタリング法で成膜が可能です。酸化物でありながら、成膜条件を適切に制御することでシリコンのような半導体特性を得ることができ、キャリア移動度は10cm2/Vsと高い値を示します。スパッタリング法で成膜できるため、LTPSと比較して製造コストの問題や大型化の問題がありません。
 IGZOは酸エッチング液耐性が弱く、Mo(モリブデン)やAl(アルミ)系を用いて形成された金属薄膜をS/D電極の形状にエッチングする際に用いるリン硝酢酸(リン酸・硝酸・酢酸の混合酸)に溶解してしまいます。
 今回開発に成功した酸化物半導体材料は、独自の酸化物組成設計によって、リン硝酢酸系の酸エッチング液に対する耐性を高めることに成功し、保護膜の省略が可能となりました。さらに本材料のTFT特性は先行量産されているIGZO−TFTと同等の移動度、信頼性を得ることができます。
 このため当社の酸化物半導体材料は、TFTの生産工程が省略できる最新のBCE−TFTにも対応が可能です。BCE−TFTの製造工程において、S/D電極が酸化物半導体表面と同時にリン硝酢酸系エッチング液にさらされるため、BCE−TFTへ酸化物材料を適用するためには、エッチング液に対する耐性が必須でした。本材料を用いることによって、BCE−TFTの製造が可能となり、生産コストの削減、FPDメーカのコスト競争力に大きく寄与します。
 また一般に電極形成は工程不良のために一定の割合がリワーク(電極をエッチングして取り除き、再び電極を形成すること)されますが、IGZOはエッチング液に溶解するためにリワークが困難という課題がありました。本材料を用いることによってS/D電極の複数回のリワークに対応することが可能となり、TFTの歩留まり向上に寄与することができます。

 今回神戸製鋼所とコベルコ科研が開発した酸化物半導体材料とその製膜に用いる酸化物スパッタリングターゲット材の特長は以下の通りです。


1.Al系S/D電極を使用したBCE−TFTへの対応
 S/D電極のエッチング時に同時に酸化物半導体表面がエッチング液にさらされたとき、本開発材では高いエッチング選択性を備えているため、BCE−TFTの製造が可能です。

2.Al系S/D電極のリワークへの対応
 IGZOではリワーク時に溶解してしまうのに対し、本開発材ではリワーク時に使用するS/D電極のエッチング液に溶解しないため、複数回のリワークが可能です。

3.IGZO−TFTと同等のTFT特性
 本材料によるTFT特性は、量産先行するIGZO−TFTと同等の移動度、信頼性を示します。

4.あらゆる世代のFPD製造工程に対応
 中小型パネルから大型パネルまで、全てのFPD製造工程に対応した形状・サイズのスパッタリングターゲット材が、製造・供給可能です。


 神戸製鋼グループにおけるターゲット事業については、神戸製鋼の技術開発本部がターゲット材料の開発を行い、コベルコ科研がスパッタリングターゲットとしてこれを製造・販売しております。これまでコベルコ科研は金属系ターゲットを中心に製造販売を行ってまいりましたが、これを機に酸化物ターゲット分野に参入いたします。今後も神戸製鋼グループとしてのシナジー効果を発揮して、新規材料開発に取り組み、多様化するユーザーニーズに対応していきます。
 なお、本技術はIDW’12(2012/12/4−7:京都国際会館)にて発表いたしました。


【語句説明】
 (注1)リワーク:一度形成した電極・回路をエッチングして取り除き、再び電極・回路を形成し直し、良品化すること。
 (注2)エッチング:薄膜状の電極や回路を製造する過程で、不要な部分を反応液などを使用して溶かして除去すること。


 ※参考画像は添付の関連資料を参照

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