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農研機構、熟期が早く倒れにくい多収の水稲もち新品種「みやびもち」を開発
熟期が早く、倒れにくい多収の水稲もち新品種「みやびもち」を開発
−うるち米品種との作期分散に期待−
【ポイント】
・「コシヒカリ」より早く収穫でき、収穫作業が競合しない、水稲もち新品種「みやびもち」を開発しました。
・短稈で倒伏に強く、多収です。
・つき餅の食味が良く、また、柔らかいおこわができます。
【概要】
1.農研機構 中央農業総合研究センターは、「コシヒカリ」より早く収穫できる早生の水稲もち新品種「みやびもち」を開発しました。
2.育成地(新潟県上越市)における「みやびもち」の出穂期と成熟期は、「コシヒカリ」よりも10日以上早く、「コシヒカリ」より先に収穫することができます。
3.短稈で倒伏抵抗性が強く、「ヒメノモチ」、「峰の雪もち」に優る多収です。
4.つき餅の食味は「ヒメノモチ」、「峰の雪もち」と同等か優ります。また、おこわの食味は、総合評価は「ヒメノモチ」並で、「ヒメノモチ」よりも柔らかいおこわができます。
5.島根県および新潟県の農業法人において、それぞれ数十haの作付けが計画されており、つき餅、おこわ等への利用が期待されます。
予算:運営費交付金
品種登録:出願番号 第27026号(平成24年8月21日品種登録出願公表)
【詳細情報】
■背景・経緯
農業者自身が生産物に付加価値をつけた製品を消費者に直接販売することで、地域活性化につなげる農業の6次産業化にとって、おこわ、つき餅等のもち米から作られる製品は、重要な商品となっています。これらの原料となるもち品種には、多収かつ玄米の外観品質が良く、製品への加工適性があることが求められます。さらに、もち品種の作付けを増やすには、「コシヒカリ」などの主食用うるち品種と収穫作業等が競合しないよう、熟期分散を図ることが必須となります。そこで、玄米の外観品質が良く、「コシヒカリ」より早く収穫でき、多肥栽培でも倒れにくく多収となるもち品種の開発を目指しました。
■内容・意義
1.「みやびもち」(写真1、2、3)は、早生で玄米外観品質が良く、多収のもち品種の育成を目的として、玄米外観品質が良く多収の「北陸糯175号」と早生の「アネコモチ」を1996年に交配して育成した品種です。
2.「みやびもち」の出穂期と成熟期は「ヒメノモチ」とほぼ同じで、育成地(新潟県上越市)では9月初旬には収穫できるため、9月中旬が刈り取りの適期となる「コシヒカリ」より先に収穫することができます(表1)。
3.稈長は短く、収量性は「ヒメノモチ」、「峰の雪もち」に優る多収です。玄米千粒重 1)は「ヒメノモチ」より大きく、玄米白度 2)は「ヒメノモチ」、「峰の雪もち」よりやや劣ります(表1)。
4.つき餅の食味は「ヒメノモチ」、「峰の雪もち」と同等か優ります(表2)。おこわの食味は、総合評価は「ヒメノモチ」並で、「ヒメノモチ」よりも柔らかいおこわになります(表3)。
5.倒伏抵抗性は「ヒメノモチ」より強く、「峰の雪もち」並です。いもち病 3)抵抗性は、葉いもちには中程度で、穂いもちには弱いです。耐冷性 4)、穂発芽性 5)は、ともに中程度です(表4)。
6.ふ先色(せんしょく) 6)が赤褐色のため、一般のうるち品種(ふ先色が白)と区別することができます。
■今後の予定・期待
「みやびもち」は、つき餅の食味が良く、おこわも柔らかいため、6次産業化や地域特産物化への貢献が期待されます。
■用語の解説
1)玄米千粒重
玄米1,000粒の重さのことです。
2)玄米白度
玄米の白さのことで、白度が高いほど良質とされます。
3)いもち病
稲の重要な病気の一つで、糸状菌(かび)により感染、発病します。葉に出るものを葉いもち、穂に出るものを穂いもちといい、品種によって抵抗性に差異があります。抵抗性が弱いと、枯れて減収しやすくなります。
4)耐冷性
寒さに対する抵抗性で、品種によって差異があります。抵抗性が弱いと、冷害時に減収しやすくなります。
5)穂発芽性
降雨等で穂に籾が着いた状態で、籾が発芽する性質です。発生すると、玄米の外観品質が悪くなります。品種によって差異があります。
6)ふ先色
籾の先端の色で、もち品種には褐色等の色が付いているものが多いです。ほとんどのうるち品種にはふ先色が付いていないため、ふ先色でもち品種とうるち品種を識別できます。
7)精玄米重
米選機でくず米を除いた玄米の重量です。
■現地栽培試験担当者
株式会社ファーム木精 代表取締役 加瀬部 一倫
※表1〜4、写真1〜3は添付の関連資料を参照